祝宴という名のいつもの
「酒じゃ! もっと酒を持ってくるのじゃー!」
「おらバンドウ、オレの酒が飲めねえのかてめえ!」
「頭、私が下戸なの知ってるでしょう!」
「そこのハイオーガのお姉さん、キレイな角してるねぇ。オレと一緒に飲まない?」
「あらん、ハイオーガのお兄さんたち、あたしと一緒に飲みましょうよん。うっふん」
「これれ、わらひたひも、りっぱなぼうけんしゃらろ〜。わかっれるの、えくふと?」
「わかったわかった。わかったから絡むんじゃない、この酔っ払いめ」
「ネムちゃんはわたしのお膝の上でジュースを飲みましょうね」
「う、うん……」
「あかん、シュウジくん、うち酔っ払ってもうたみたいや。優しく介抱してえな?」
「シュウジ様も一杯どうぞ。皆様のおかげで大切な仲間を救うことができました。兄上に代わって御礼申し上げます」
「なっ、シュウジくんに近寄らんといてくれる! 色気皆無のぺったんこ鬼娘にシュウジくんはまだ早いわ」
「な、なんて破廉恥な……ッ! それにわたくしはまだ成長途中なだけです! ……お言葉ですが、すでに成長を終えたように見受けられるあなた様となら今でも十分にいい勝負ができると思います!」
「なんやて!」
「ご主人様、エールをお持ちしました」
「そこ、抜けがけすんなやー!」
ワーワーギャーギャーと屋敷の大広間に直座りして酒と料理をむさぼる人、人、人。
ああ、酒盛りだなぁ。
日常が返ってきた証と思えばこれもまた、いとおかし…………なんて言ってられるか!
うるせえぞ、酔っ払いども!
たしかに飲み明かすとは言ったけど、もう少し静かに飲めんのか!
屋敷のメイドさんたちがせかせかとエールやワイン、料理を次から次へと運んできてくれる。
まったく、一応はパトリシアたちのランクアップおめでとうの祝宴だというのにそんなお題目はどこへやら。
どいつもこいつもバカ騒ぎしやがって……。
まあ、今日ばかりは大目に見てやるか。
みんなが無事に帰ってこられたお祝いだ。
俺はイルカとエルスラから酒杯を受け取り、勝利の美酒を味わった。




