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豚人の王
オルカの後を追うため、俺たちは残ったオーク軍を急いで駆逐した。
幸い、「深緑の森」もパトリシアたちも疲労の色こそ見せてはいたものの大きなケガを負うことなく、オークを蹴散らすことができたようだ。
前線を押し上げながら合流し、オーク軍の分岐点まで駆ける。
ザカの森とアザンテ山脈にはさまれた街道、その入口に差しかかったとき、何かが吹き飛ばされてきた。
「……クソがッ!」
巧妙にバランスを取り、手と足で大地を踏みしめ、かろうじて転倒を免れたのはオルカだった。
「ふざけろ! 意地汚ねえ豚ごときがッ!」
「落ち着け、オルカ!」
歯を剥き出しにして激昂するオルカをなだめ、街道の先に目を向ける。
足もとには先ほど視認できた小柄の指揮官らしきオークの死骸が転がっている。オルカが倒したものだろう。
視線を上げていくと、そこには通常のオークの三倍はあろうかという巨体、上半身は赤黒く火照った筋肉に包まれ、浮き上がった血管が大きく脈打つ、怪物がいた。
明らかに風格が違う。
あれはオークどもの上に君臨する者。
豚人の王、ハイオークに違いなかった。




