死の黒霧
迫り来るオーク軍を前に、ネムリとエルスラが手をつないで立ちふさがる。
「ベルナンディア、フォロー頼むぞ!」
「任されたぞい」
ネムリとエルスラの間で黒い魔力の流れが行き交い、混ざり合う。
二人の邪悪魔法の魔力が溶け合い、黒い魔法陣を幾重にも展開する。
手をかざし、オーク軍に向かって叫んだ。
「《死の黒霧・重》!」
魔法陣から黒い濃霧が前方に噴出され、霧が無秩序に拡散しようとする前に、
「《吹き抜ける疾風》!」
ベルナンディアの風の流れをあやつる魔法が発動した。
自然魔法の疾風に指向性を与えられた黒霧は狂気の軍隊の中央深くを貫き、霧に包み込まれたオークどもに問答無用の死を突きつけた。
オーク軍の奔流、その中央を進撃していたオークどもが膝から崩れ落ち、バタバタと倒れていく。
範囲魔法である《死の黒霧》に指向性を持たせ、敵を効率的に攻撃しつつ周囲の仲間に被害を与えないための連携技だった。
俺がなるべく魔法を使わないよう自分に制約をかけているため、魔法適正を考えると強力な連携魔法はネムリとエルスラの邪悪魔法に頼らざるを得なかった。
「二人とも上出来だ。後方で休んでいてくれ」
ネムリとエルスラを下がらせ、頭数を大幅に減らしたオーク軍を今度は白兵戦で迎え撃つ。
オルカたち鬼人族の剣士には《梅花壮健術・壱の法》が、ベルナンディアと俺、ケイウッドには《防御力向上》による身体能力の支援が施された。




