支流と本流
目前に迫ったオーク軍との乱戦だけは避けたかった。
数だけ見れば圧倒的に不利。
乱戦にならないようにするには、やはり敵軍を誘導する必要がある。
「深緑の森」は全員で《枝葉の緑壁》を唱え、右翼側に植物による生垣の長壁を築いた。
その一部分にだけ通り道を空け、ちょうど川の支流のようにオーク軍の数を限定して誘いこみ、迎え撃つ作戦のようだ。
同じくパトリシアたちもネクロマンサーのラブが《髑髏の骨壁》を唱え、一部分に通り道を設けて迎え撃つ構えだ。
問題は正面を任された俺たちだ。
他のパーティより人数は多いといっても向かってくるオーク軍の数は膨大だ。
前衛はベルナンディアとオルカ、鬼人族の剣士たちで問題ないが、さすがに敵の数が多すぎる。
やられることはないと思うが、受けきれないオークが後衛のもとまでなだれ込むのは避けたい。
まずは範囲攻撃で数を減らすのが順当か。
俺はネムリとエルスラ、ベルナンディアに耳打ちした。
「オルカ、たしか鬼人族の女性は支援系の魔法を得意としていたよな?」
「それがどうした?」
「うちのネムリとエルスラに魔力強化の魔法を掛けてくれないか? 二人の範囲魔法でいっきに数を減らしたい」
俺の思惑を即座に理解したオルカはハイオーガの女性たちに強化魔法の詠唱を命じた。
オルカの妹イルカを先頭に巫女服のハイオーガたちが前に出てきて錫杖をかざす。
「《梅花壮健術・弐の法》!」
花びらのような赤い光が舞い上がり、ネムリとエルスラを包みこんだ。
よし、これで準備は万端だ。
突然ですが今後、毎日更新から随時更新にしたいと思います。
毎日、読んでくださっている皆さんには申し訳ないですがご理解いただけると幸いです。
くわしい理由については活動報告のほうに記載していますので、そちらを読んでいただけると嬉しいです。




