議会の堅物
「ふざけるな! 誰がオーガなどと手を組めるか!」
広い室内に罵声が響き渡った。
王とガルドへ謁見を求めた俺たちは事の重要性からそのまま議会の間に通された。
すぐに呼び出された騎士団副長のダンターク、四大貴族の貴族派閥であるダングスト侯爵、コルケス男爵も同席することになった。
議会の間には国王、騎士団長ガルド、騎士団副長ダンターク、四大貴族の俺、アレクセイ、ダングスト侯爵、コルケス男爵、貴族のパトリシア、そしてコルシェ、オルカの十人がそろった。
俺とアレクセイ、パトリシアで事の経緯を説明し、コルシェ、オルカがオークの軍勢の危険性について実際に目にした光景を根拠に言及した。
ここまではよかった。
誰もが事実を認め、オークの危険性を共有できた。
だが、その後の対策についての提案をしていくなかで飛び出したのが先の怒号だった。
発言主は貴族派閥のダングスト侯爵。
パーティ「ケイウッド」、パーティ「深緑の森」、王国騎士団、そしてハイオーガの一族で共闘すべきではないかという案に対しての反応がこれだ。
「エルフやドワーフなら了解する。交易も行い、友好的な関係を結んでいるからな。だが、オーガなどという野蛮な輩と戦線を共にするなど誉れ高き王国騎士団の名折れ! どうせ裏切られて背中を斬りつけられるのが落ちだ!」
そんなこと言ったらオルカ大激怒しちゃうよ、やめてくれ。
だが、予想に反してオルカは冷静に言葉を返した。
「見たことか。鬼人族の矜恃も知らねえで、手前勝手な想像で感情的に処断する。これだから人間風情は度しがてえ」
こうした反発が起こることをオルカは半ば予想していたようだ。
たしかにオーガの印象は人間一般にとってけっして良いものではない。
通常のオーガは知性に欠ける凶暴なモンスターであり、人や家畜を襲う人間の敵だからだ。
しかしハイオーガ、鬼人族はちがう。
オルカたちの立ち居振る舞いを見ていれば通常のオーガとの差は歴然だ。
オルカたちが何のために戦うかという理由も説明済みである。
冷静で言葉も通じるというのに、その知性に疑いを持つなんて愚かな行為だ。
だが、ダングスト侯は頑として意見を曲げようとしなかった。
事前に調べたとおり、頭の固い戦好きの堅物だった。
これは正面から攻めてもダメだな。
からめ手で攻めるしかない。
俺は閉ざしていた口を開いた。




