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「深緑の森」

 突如、現れた四人組のエルフ、その中心のむっつりした女エルフは俺の顔をジッと品定めするように見つめた。


「いまゴールドクラスの冒険者だと言ったな? すると君がケイウッドか?」


 どこの誰だか知らないが、俺たちが王国所属のパーティ「ケイウッド」だということは知っているらしい。

 俺たちもずいぶん有名になったもんだ。


「ケイウッドならこっちだ」


「えーっと、オレがケイウッドだよ。よろしくね、麗しいお嬢さん」


 軟派なセリフを欠かさないケイウッド。

 お前のそういうところはつくづく尊敬するよ。


「なるほど。やはり君たちが王国三番目のゴールドクラス「ケイウッド」で間違いないのだな。まず、君たちの会話を盗み聞きしていたことは謝ろう」


 軽く頭を下げて謝罪した。

 しゃべり方は堅苦しいが礼儀正しい人物のようだ。

 だが、透明化まで使って俺たちの会話を傍聴していた理由は是非とも説明してもらいたい。


「自己紹介をしよう。私はコルシェ。王国に籍を置く「深緑の森」のパーティリーダーをしている」


 コルシェと名乗った女エルフは堂々とした居住まいで自らの正体を明かした。


「え、「深緑の森」って、あのゴールドクラスのパーティの……?」


 ケイウッドの驚きももっともだ。

 たしか王国所属のゴールドクラスパーティには「鉄槌」と「深緑の森」の2パーティがあった。


 そのうちの「鉄槌」のソードマスター、カリウスという剣術の達人とは奴隷オークションの地下闘技場でやりあったことがある。

 あのときも驚いたが、まさか今度は「深緑の森」のメンバーと対面することになるとは、偶然というものは恐ろしい。


「まさかエルフの四人組だったとはね……」


 ケイウッドは改めてしみじみとつぶやいた。

 たしか「深緑の森」は王国の内外を問わず活動しているとのことだったから、メンバーに関してもあまり詳しいウワサは出回っていないのかもしれない。


 それはさておき、本題に入りたい。


「私たちが主に亜人種のいさかいに関するクエストを受けているのは知っているか?」


 それは聞いた気がする。

「鉄槌」は気まぐれなパーティで、「深緑の森」は亜人種がらみのクエストをこなすんだったか。


「私たちは以前からオークどもの動きを追っていた。人間や亜人に対して害をなさないよう監視するためだ」


「おい待て、長耳。豚どもを監視してたっつうならオレたちの集落を攻めてきた時も高みの見物をしてたってことかよ?」


 途端にオルカの口調に剣呑な響きが混ざる。

 言わんとすることはわかる。

 見ていたのならなぜ助けなかったのか。

 助けに入っていればハイオーガの女性たちが囚われることもなかったのではないか、と。


「受け取り方は君次第だ。ただ、私たちの活動は長期的に亜人種のいさかいに介入することを目的としている。君たち鬼人族の助けに入ることはできた。だが、それは短絡的な解決に過ぎない。オークの動向の把握とあの軍勢の根本的な討伐、それをなすためには私たちのパーティメンバーをむやみに危険に晒すわけにはいかなかった」


 声は淡々としているが、その視線は地面に落としていた。

 助けられる立場にあったのなら助けたかった、というのが本音なのだろう。

 オルカもその様子を察し、鼻を鳴らして剣呑な雰囲気を収めた。


「そしてせめて、鬼人族が安全に避難できるよう後をつけていたら君たちに出くわした、という経緯だ」


 一応、話の筋は通っているな。

 だが、オークの軍勢から目を離したということはつまり……。


「ああ、今回の襲撃をもって、もはやオークどもを看過できないと判断した。王国に帰還し、先ほど君が言っていたように王国騎士団に出動を要請しようと考えている」


 よくわかった。

 意見が一致したから姿を現した、ということか。


「そうするとあんたたち「深緑の森」もオーク討伐に加勢すると考えていいわけだな?」


「そう思ってくれて構わない」


 俺たち、ハイオーガの一族、「深緑の森」、そして王国騎士団。

 普通のオーク討伐クエストでは考えられないほどの大規模な戦いになることは想像に難くなかった。

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