相次ぐ闖入者
オルカの要求はおそらく俺たちが断れないことをわかった上での提案だ。
オークはあらゆる種族にとって敵性である。
ハイオーガの次は人間の村里を襲いにくる可能性も否定できない。
そして、ここが王国領土内でアレクセイの領地である以上、王国貴族である俺たちは王国領民を庇護する義務を負っている。
ハイオーガとの共闘、か……。
悪い提案ではないが、やはり多勢に無勢なのは否めない。
彼らと俺たちだけでオークの軍勢を撃退するのはさすがに骨が折れる。
ここは王国騎士団の力も借りて戦力を増強するのが得策か。
副次的にレンドルでアンデッドの軍勢を前に身動きが取れなかった騎士団の汚名を返上するいい機会でもある。
オーク討伐で活躍できれば騎士たちの自尊心を回復させることができるだろう。
俺はアレクセイにも小声で相談し、了承を得た。
「わかった、手を貸そう。ただし、数には数をぶつける必要がある。王国の騎士団も参戦させるが異論はないな?」
「オレたちは構わねえよ。だが、人間が亜人と仲良くやれんのかねえ?」
それは挑発にも似た疑念だった。
しかし、おなじ人間である冒険者すら疎む彼らがましてや異種族と共同戦線を張れるか、たしかに懸念材料に値することは事実だった。
「部隊を分ければできないこともないと考えている。冒険者としてゴールドクラスで名の通っている俺たちのパーティにはドワーフもエルフもいるしな」
「ほお、ゴールドクラスねえ。オレと対等にやりあえるわけだぜ」
オルカは愉快そうにベルナンディアに視線を向けた。
そのとき、ケイウッドが短く叫んだ。
「シュージ、見えないけど何かがいる……!」
言われて神経を集中させると、周囲にかすかに気配を感じる。
少人数、おそらく数人。
「何者だ! 姿を見せろ!」
俺もオルカもベルナンディアも得物に手をかけて警戒する。
得体の知れない何者かは予想外に素直に正体を明かした。
「慌てるな。私たちは敵ではない」
俺とオルカから数メートル離れたところでマントのフードを脱ぐのと同時に、透明化していた姿が露わになる。
金髪に美しい容貌、そして特徴的な長い耳。
エルフ族の四人組だった。




