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鬼人族のいきさつ

「世話になったな、人間」


 俺の薬草水で傷が完治したオルカが不敵な笑みを浮かべながら言った。


「そちらの事情を聞きたいんだが、構わないか?」


「ああ、ドワーフの太刀筋でおまえらのことは大方わかった」


 あれで俺たちのことを信用に足る人物だと判断したということか。

 こいつといい、ベルナンディアといい、戦闘狂どもの判断基準は理解に苦しむな、まったく。


「先に言っておくと、俺たちは他言無用の用事があってそこの廃村に来ていた。目的は言えないが、少なくともお前たちが現れたのは俺たちにとっても想定外だ。待ち伏せとか、そういう類いでないことは信じてくれ」


「言われなくてもわからあな。おまえらの事情は聞かねえよ」


 オルカは腰にさした二本の刀を撫でて、憎々しげに話し始めた。


「あの森をはるか北に抜けたところにオレたちの集落がある。そこにオークの豚どもが攻めてきやがった」


 オークといえばゴブリンやオーガと並んで有名なモンスターだ。

 あまり知性が高くなく、人や家畜を襲うことがあるため、冒険者たちに討伐のクエストが発注されることもしばしばある。

 だが、オークそのものはさほど強力なモンスターではないはずだが……。


「奴らは軍団で攻めてきやがった。ただの群れじゃねえ。あの統率の取れた動き、あれは指揮官がいやがるな」


 統制されたオークによる襲撃はあまり耳にしない。

 だが、彼らハイオーガの存在を鑑みればオークのなかにも王の素質を持つ者が生まれても不思議ではないだろう。


「多勢に無勢。戦闘に長けたヌシらも避難してきたというわけじゃな?」


「だが、逃げっぱなしで終わるつもりはねえ。村の女どもが何人もさらわれた。態勢を立て直したら豚どもを片っ端から斬り伏せてやるぜ」


 オルカは剣呑な目つきで鼻を鳴らした。


 だいたいの話はわかった。

 村が襲われたから逃げてきた。

 そして囚われた仲間を救出するつもりだ、と。


 ここで問題なのは王国貴族であり、人間でもある俺たちと彼らの立場だ。

 俺たちに彼らハイオーガを助ける義理はない。

 だが、聞いたところのオークどもが今後どのような動きを見せるかは王国領地を統べる俺やアレクセイにとって重要な問題である。


「そのオークの軍勢がお前たちの集落を襲った理由に心当たりはあるのか?」


「ねえな。そも豚どもの侵略に真っ当な理由なんざねえだろうさ」


 オークはゴブリンやオーガと比べても貪欲なことで知られる。

 自分たちの欲求を満たすためにどんなことでもするのがオークだ。

 とりわけ種族の繁栄のために人間や亜人種の女性を繁殖のためにさらう点で忌み嫌われるモンスターである。


「お前たちはこのあと具体的にどうやってオークに反撃を仕掛けるつもりだ?」


 俺はなかば予想された答えを引き出すための質問をした。

 オルカも俺の意図に気付いているようで、ニヤリと笑った。


「人間、オレたちに力を貸せ」


 想定どおりの答えに俺は大きなため息をついた。

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