ドワーフ対ハイオーガ
「わしは冒険者として騎士をしておるベルナンディアじゃ。ヌシの名も聞かせてもらおうかの?」
「オルカだ。こいつらの頭をしている。これで十分だろう?」
ベルナンディアは鈍い赤色の《巨人殺し》を両手で構え、オルカと名乗ったハイオーガは桜色と黒色の鞘のうち、桜色の鞘から刀を抜いた。
刀身がうっすらと桜色がかっており、ところどころに桜の花弁の意匠が凝らされている。
あんな武具、見たことがない。
刀自体はヒノ国の武具として知られているが、あのような美しい雅な刀を俺は知らない。
もしかしたらハイオーガの種族にだけ伝わる宝具かもしれない。
そう思うと俄然、収集欲がわいてくる。
「《大地の城塞》」
ベルナンディアが小さくつぶやくと、彼女の体が土色の光に覆われた。
これは、ベルナンディアの固有スキルか……?
「《傲慢なる鬼神》!」
対抗するかのようにオルカが叫ぶと、彼の体を赤い光が炎のように包み込んだ。
これはオーガの種族魔法だ。
身体能力を大幅に向上させる強化魔法。
ベルナンディアの固有スキルの詳細はわからないが、自分の体が光に覆われたということは何がしかの身体能力の向上を図ったと見ていいだろう。
そうするとこの闘い、純粋な火力と火力のぶつかり合いになる。
「ケイウッド、離れるぞ!」
「お、おう!」
俺たちはパトリシアたちのいる後方まで下がって距離を置いた。
オーガの集団も気配から察したのだろう、俺たち同様に二人から距離を取った。
二人の闘いに巻き込まれないように。
そして、二人が存分に力を発揮できるように。
土色の光に護られるベルナンディアと、赤色の闘気を身にまとうオルカ。
睨み合う二人。
張りつめる空気。
先に動いたのはオルカだった。




