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三魔族との会合

 二週間が経ち、俺たちはアレクセイとパトリシアをつれて王都の北東、ノトス平原の廃村に来ていた。

 廃村の家々は朽ち果て、人が住まなくなってかなりの時間が経過していることを想像させた。

 廃村の東にはザカの入り組んだ森林が広がっている。


 三魔族との会合は正午。

 太陽が南の空に昇り、平原と俺たちを明るく照らしていた。


「来るかしらね」


「来る保証はないが、来ない理由もない。儲け話となれば警戒もするし、だがうまい思いもしたいはずだ」


 パトリシアは来るかどうか半信半疑のようだが、俺はなかば来ると確信している。

 というのも、ワイルドの様子から連中はおそらくそれなりのレベルに到達している強力なモンスターだろう。

 こちらの手勢を知らないのもあるが、いざとなったら三体で力を合わせて抹殺すればいいと考えるはずだ。

 少なくとも俺ならそう考える。

 まさか地下の闘技大会優勝者がゴールドクラス冒険者の一員で、その仲間たちも来ているとまでは想定できないだろう。


 念のためケイウッドが盗賊のスキルで《敵影感知》を発動させている。

 エルスラは俺のすぐ背後で待機、ベルナンディアやネムリ、メルティエは俺がさきほどプレゼントした指輪に興味津々のようだ。


 市販されていた指輪を加工し、勇気の女神アエラをかたどった青と白の指輪。

 名前をあえて付けるなら《結束の指輪ケイウッドパーティ・リング》か。

 パーティ「ケイウッド」の一員の証として、俺たち全員が無事に過ごせるよう願いをこめて作った指輪だ。

 いざとなったら俺たちを守ってくれることだろう。


 それにしてもヒマだ。

 思わずあくびが出そうになった、そのとき、


「みんな、来たよ!」


 ケイウッドの警告に誰もが身構える。

 廃村の入口でたむろしている俺たちから少し離れた場所に《転移門ゲート》が開き、マントに身を包んだ者が三体現れた。


 《転移門ゲート》が閉じ、こちらに対峙する三体のうち、巨体のマントがワイルドで間違いないだろう。

 他には背の高い男らしき者、杖をつき腰の曲がった老人らしき者がいた。


「……またせたクマ。……思ったより多勢なのはクマたちをおそれているからクマ?」


「ああ、怖くて怖くて震えが止まらんね」


 うそぶきながら俺が代表として前へ出る。

 向こうもワイルドがゆっくり巨体を揺らしながら近づいてきた。


「……きみがメゾッカどの、ということでいいクマ?」


「そうだ。ひさしぶりだな、ワイルド様よ」


 俺とワイルドが近距離で話し、互いの付き添いがその後ろで俺たちの話の動向を見守っていた。

 儲け話という真っ赤なウソに釣られてやってきた連中は騙されたと知ったらどう動くだろうか。


「なあワイルド、俺たちは誠意を示すつもりで顔も隠さずにあんたたちとの会談に臨んでいる。そちらも正体を明かすのが誠意というものじゃないかな?」


 我ながらいけしゃあしゃあと「誠意」などというウソっぱちで敵の素性に切り込んでいく。

 《状態目視アナライズ》で確認してもいいが、現段階で下手に動いて警戒させたくない。


「……いいだろうクマ。……腰を抜かさないよう気をつけるクマ」


 マントを脱ぎ捨てた巨体は想定どおりワイルドベアのワイルドだった。

 後ろに控えていた二人も近づいてきながらマントを脱ぎ捨てた。


「ふむ……なるほどね」


 背の高い男は黒い礼装に髪の毛をオールバックで固めた人間の執事のような姿をしていた。

 一点だけ、道化師の仮面を被っている点だけが異様な雰囲気を醸し出している。


 杖をついている老人はマントの下にローブを羽織っていた。

 こちらも異質な点はその外形。顔も手も肉や皮がない、骨だけのモンスター。リッチだった。


 仮面の男だけは正体がわからないが、少なくともリッチは高レベルモンスターであるが今の俺たちで対処できないほどではない。


 この会談、押し通せる。

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