レイニア姫の私室
広間の宴も終わるころ、俺のもとに姫殿下お付きのメイドがやってきた。
俺とアレクセイを姫様の部屋に招待するという。
まさか取って食われることはないだろう。
誘いに乗って俺たちは王城のお姫様の私室へ出向くことになった。
部屋には果たしてお姫様とパトリシアが丸いテーブルの席について話し合っていた。
「ようこそ、シュージ様、アレクセイ様」
「王女殿下、お招きいただき、光栄です」
俺とアレクセイが軽く礼をすると、
「かしこまらなくて結構です。わたくしのことはどうぞ気軽にレイニアとお呼びください」
名前で呼ぶというのはそれなりに深い関係にある者同士がすることだ。
ということはこの王女様はこれから俺たちと気の置けない関係になろうとしているわけで、それはすなわち王女様の秘めたる思惑に俺たちが巻き込まれることを意味している。
王派閥の貴族になったからには王族の言うことを聞かないわけにはいかないだろう。
ある程度の覚悟はしていたつもりだが、貴族になるとはこういった制約もついてまわるものなのだな。
「わかりました、レイニア姫」
「こちらの席にどうぞ」
丸型テーブルに俺とアレクセイが腰を下ろし、内向きに四人が顔を見合わせる形になった。
王女と貴族三人、思うと自分だけ場違いな気分にもなってくる。
「では話し合いを始めましょう。わたくしたちのこれからについて」
鈴を転がすような声に緊張の糸が通っているように聞こえた。




