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お嬢様の付き添い

 オークションが終了し、一般の参加者は口々に仮面の女の話をしながら店を出ていった。

 そして俺とエルスラは闘技大会優勝者として、仮面の女はオークションの落札者として店の裏方に案内された。

 そこは客人用の応接室なのだろう。壺などの陶芸品や絵画が飾られ、もてなしの体裁を整えた瀟洒な部屋だった。


 部屋に案内される途中から気付いていたが、仮面の女には二人の護衛がついていた。

 やはり仮面をつけているが、そのうちの一人の風体には見覚えがあった。


「あんた、そのお嬢様の護衛だったのか」


「これはどうも、先ほどぶりですね」


 白髪まじりのやや長身の男、俺と闘技場で決勝戦を闘った剣術の達人だった。

 なるほど、この男ほどの腕前なら護衛にうってつけだ。

 驚きつつも納得していると、もう一人の護衛が前に出てきて、さらに俺を驚かす言葉を放った。


「違っていたらごめんなさい。でもその声……あなた、シュージではないかしら?」


 まさか正体を言い当てられるとは思っていなかった俺はうろたえつつ、その護衛を観察した。

 金髪のおそらく女性、そしてこの声、どこかで聞き覚えがある。

 それもつい最近、聞いたばかりの声。


「……ひょっとしてお前、パトリシアか?」


「やっぱりね。カリウス様との戦いぶりになんとなく覚えがある気がしたのよ」


 いっしょに魔侯爵の城を攻略したもう一つの冒険者パーティのまとめ役、ウォークレリックのパトリシアだった。

 なんでこんなところに彼女がいるんだ。

 いったいどういうことだ。


「簡単に言うとわたしは貴族でね、こちらのお嬢様と幼いころから親交があったの。それにわたしの武術の指南役だったカリウス様に護衛を依頼したというわけ」


 わかったようなわからないような。

 とりあえずパトリシアも貴族のお嬢様で、オークションのお嬢様の付き添いで来たということか。

 ちなみにそっちのカリウスという人物はいったい何者なんだ?

 只者ではなかったが。


「顔も隠しているし、わからないのも無理はないわね。カリウス様はあなたと同じゴールドクラスのパーティ「鉄槌」に所属するソードマスターよ。その実力は実際に闘ったあなたならわかるでしょう? この王国随一の剣の達人よ」


 なるほど、合点がいった。

 たしか以前、王国騎士団長ガルドの強さはどれくらいのものか、という話になったときに王国騎士団副長とゴールドクラスのパーティ「鉄槌」の一人が卓越した剣術の実力者だということを聞いた覚えがある。

 その「鉄槌」の達人がいま目の前にいるカリウスという男だったわけか。

 どうりで強いわけだよ。


 俺が一人で納得しているとパトリシアがお嬢様とカリウスに俺の功績と信頼に足る人物であることを説明してくれた。

 お嬢様は驚いた様子でパトリシアと俺の顔を見比べ、カリウスは興味深そうに相槌を打ちながら話に耳を傾けていた。


「それよりあなたこそなんでこんなところにいるのよ。もちろん目的あってのことでしょうけど、事と次第によってはわたしたちと利害が衝突するかもしれないわ」


 パトリシアに続いて、仮面のお嬢様も口を開いた。

 それは疑問というより嘆願に近いものだった。


「シュージ様、先ほどは入札を見送っていただき、ありがとうございます。貴方様の目的はわかりかねますが、わたくしがこの場に来た目的はすべて善意と救済を理由としています。虫のいい話かも知れませんが、もし差し障りがなければわたくしの意向に賛同いただけますと幸いです」


 ずいぶんとかしこまった喋り方だ。

 かなり高位の貴族の娘、あるいは……。


 そのとき、部屋の扉が開いて小太りな支配人が現れた。


「メゾッカ様、落札者様、お待たせしました。いまワイルド様がお見えになります」


 支配人の言葉で部屋の雰囲気が一変した。

 俺だけでなく、パトリシアたちにも緊張が走った。

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