店の支配人
闘技大会で優勝した俺は大会開催の最高責任者である店の支配人に面会できることになった。
小太りかつニヤニヤといやらしい笑みを浮かべており、いかにも金と権力に固執するタイプの人間に見えた。
「いやはやメゾッカ様、見事な試合でしたな」
「最後の相手はかなり際どかったがな」
俺は会話を交わしながら《状態目視》の魔法を発動させた。
魔法を通して確認できたのは、目の前の支配人の男はただの人間だということだった。
魔侯爵の言葉によれば裏の商売には魔族が関与しているはずだ。
そうするとこの支配人はあくまで雇われの人間ということだろうか。
あるいは支配人より上位の地位に座する者が存在する可能性も考えられる。
俺は一つカマをかけてみることにした。
「ところでお前の主人に会いたい。俺の戦いぶりについて話してみたいのだが」
「な、ワイルド様にお目通りしたいですと。そんな不敬……いや、しかしワイルド様は寛大なお方。いいでしょう、掛け合ってみましょう」
よっしゃあ!
そのワイルド様とやらが魔族かどうかはわからんが、この闘技大会、ひいては人身売買に関わる魔族との接点がつくれるかもしれない。
苦労して大会で優勝した甲斐があるというものだ。
「ワイルド様にお話してきますので、ご報告までお時間をいただきたい。その間、是非とも今夜の目玉である奴隷オークションを楽しんでお待ちください」
小太りな支配人はぐふふといやらしい笑い声を漏らして去っていった。
俺は闘いに使った道具類を《無限の宝庫》にしまい、闘技場を後にした。




