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人身売買クラブ

 情報屋に怪しまれない程度の金で仕入れた情報で人身売買が行われているであろう店の場所、娼館の一部の場所を知ることができた。


 俺とエルスラは落ち着いた暗い色合いの「金の羊館」と看板のかかった店の前に来ていた。

 人身売買が行われている店は表向き会員制の高級クラブという体になっている。

 店の前にはガタイのいい黒服の男たちが門番よろしく突っ立っている。

 俺たちはボロ布を目深にかぶり、無言で銀貨3枚を手渡して店の入口を開けてもらった。


 こういった店は通常、コネがなければ会員になれないものだが、そこは貧民街ゆえか、多少の金を入場料代わりに支払えば誰でも出入りできるようになっていた。

 このような場所で銀貨3枚は高額だ。

 それだけの金を入場料としてポンと支払えることが金持ちである証拠であり、中で行われている奴隷売買のための金を持ち合わせている証明にもなった。


 店の中は薄暗い照明でいかにも怪しい雰囲気がただよっている。

 場所が場所なので来客者の顔がはっきりとわからないようにするねらいもあるのだろう。

 大広間のあちらこちらに仮面をつけた客が男女問わず、酒の入ったグラスを片手に談笑していた。

 どの客も瀟洒な衣服に身を包んでおり、裕福なことをうかがわせる。

 俺は手近にいた店員にこの後のスケジュールをたずねた。


「この後、地下闘技場で見世物を行います。そちらが終了したらメインとなります競売を奥の間で行います」


 地下闘技場?

 それは誰かと誰かが闘うということだよな。


「はい。荒くれ者どもによるトーナメント戦です。命を賭けた闘いはお客様のご気分を高揚させることをお約束いたします」


「なるほど……」


 メインイベントである人身売買の前に血の出るアトラクションで興奮させ、より多くの金を引き出そうという魂胆か。

 俺は少し考えてすぐに言葉をつないだ。


「実は俺も剣の腕に少し覚えがあってね。飛び入りで参加させてもらっても構わないかな?」


「お客様が、ですか……。支配人に確認して参りますので少々お待ちください」


 店員は少しだけ意外そうな表情を見せたものの、特別、俺の身を案じることもなく広間を出ていった。


「ご主人様、危険では?」


「ありがとう。でも大丈夫だ」


 エルスラが俺の心配をしてくれる。

 だが、人身売買の競売とやらとは別に、闘技場で勝ち抜いて実力を見せつけられれば別ルートでも支配人と接触を持つことができるかもしれない。

 手がかりを増やすいい機会だ。


 そうこうしているうちに店員が広間に帰ってきた。


「お客様、支配人にうかがいましたところ、出場する権利を認められました。闘技場へご案内いたしますので、こちらへ」


「わかった」


 俺とエルスラは店員の後に続き、地下へ降りて行った。

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