王都の掃き溜め
貧民窟はひと言でいえば掃き溜めだった。
王侯貴族、金持ち、平民、そのどれにも属せないあぶれ者たちの行き着く先が貧民窟だった。
王都中央の王城、その周囲に商店街、住宅街が輪を広げている。
そんな都市で王都城壁の西部に位置するスラム街がならず者たちの住みかであり、隠れ家だった。
俺はすべての装備をはずし、平民服にナイフ一本だけを腰からさげ、さらにぼろ布をマント代わりにして顔と体を覆った。
ついて行くといって聞かないエルスラも平民の衣服にボロ布で全身を覆った格好に擬態させた。
貧民の街はこんな格好でもマシに思えるような薄汚い服装の者や不衛生な見た目の者がごろごろいた。
変に金を持っていそうな格好をしていては悪目立ちする。
郷に入っては郷に従えという言葉もある。
その場所に合わせた格好をするのも無用な厄介ごとから身を守る手段だった。
しかし、思った以上にひどいな。
酒か麻薬にやられて道端に転がっている者。年端もいかない子どもたちが徒党を組んで店からパンや果実を盗んでいる光景。そんな子どもたちの一部を取り押さえて殴る蹴るの暴行を容赦なく加える大人。そんな様子を何とも思わずに素通りする通行人たち。
異常だ。治安が悪すぎる。
仕事が見つからなかったり、すねに傷を持つ輩が住み着くのはわかるが、それにしてもモラルのモの字もここには存在しない。
弱肉強食がまかり通り、誰が死のうが生きようが関係ない、そういう場所だった。
俺の愛した「コレクターズ」の世界にふさわしくない界隈だ。
俺は改めて貧民窟、ひいてはその元凶の一因をつくっているであろう闇商売を潰すことを決意した。




