王都の様相
王都のざっくりとした情報を収集、整理していく中でやはり留意すべきは裏の商売についてだった。
魔侯爵が話していたように、この国の立派な外づらに反して淀んだ水底には金と性と暴力が渦巻いているようだった。
貧民窟で行われる違法な商売には魔族の者も関与しているという。
「コレクターズ」を愛し、この世界を貴ぶ俺はあまりこういった暗部が放置されることをこころよく思わなかった。
何もすべてがキレイでなければいけないわけではない。
生きた世界、生きた人間たちの社会であれば多少の穢れも溜まるというもの。
だがそれも行きすぎてはよろしくない。
人が傷付いたり、悲しんだりするのは見たくない。
俺の好きだった世界は勇気と正義が成り立つ清浄な世界だった。
独善かもしれないが、表向きだけでなく、中身も相応に清く正しい世界であってほしい。
また、これから俺も王国を支える貴族の一員となるわけだから、けっして他人事ではない。
主に貧民窟で横行する裏の商売の取り締まりを念頭に置きつつ、俺にとって極めて重要なもう一つの案件にも思案をめぐらせた。
それはもちろん王国に伝わる四大至宝の最後の一つについてである。
アイテムマスターとして見過ごすわけにはいかない。
どうにかして手に入れなければ俺の欲がうずいてたまらない。
そちらは四大貴族が所有しているはずだから叙勲式以降にねらっていけば良いだろうか。
さしあたり手をつけるなら魔族がかかわっている貧民窟の商売についてだ。
この先、まがりなりにもこの国の貴族になるのなら、王都の闇についても知っておくに越したことはないだろう。




