ケイウッドの本当の目的
急にまじめな顔つきになったケイウッドに俺たちは顔を見合わせた。
「……たしかシュージには話したことあったと思うけど、オレ、有名になりたいって言ったよな?」
たしかに出会ったばかりのころにそんな感じのことを言っていた気がする。
「こんな辛気くさい話、あまりしたくないんだけどさ。実はオレ、生き別れた妹がいて、そいつを見つけてやりたいんだよね」
想像した以上にまじめな話で俺たちは息を呑んだ。
「よくある話だよ。オレの家は没落貴族で家族は離散、親父とおふくろは見つかったんだけど流行り病であっさり逝っちまってさ。今も行方知れずの妹にとって、オレは最後の家族なんだ」
ケイウッドは何かを思い出しているように訥々と言葉を紡いだ。
「この王国のどこかにいるかもしれないし、いないかもしれない。じゃあどうやって見つけるかって考えたときに、冒険者として有名になって、妹にオレを見つけてもらう、それくらいしか思い付かなかったんだ」
オレあんま頭よくないしさ、と自嘲するケイウッドを誰も笑うことはできなかった。
ましてや俺なんて世界中のアイテムを収集する程度の目的しかない。
ケイウッドを笑う資格すらなかった。
「お前な……そんな大事な事情を抱えてるならもっと早くに話してくれよ。水くさいじゃないか」
「まったくじゃの」
「悪かったよ。でもこういうのって、あんましオレのキャラじゃないだろ?」
まったく、このバカリーダーときたら……。
「……みんな、パーティ名は「ケイウッド」がいいと思う。異論はあるか?」
「お、おいシュージ!」
ケイウッドは辛気くさいなんて言っていたが、こんな大事な目的があるなら手助けするのが仲間ってもんだろう。
「異論なし、じゃ」
「それでいいと思います」
「ボクもいいと思う!」
「みんな……」
思わず涙ぐみそうになるケイウッドの背中を軽く叩いてやる。
「ほらリーダー、パーティ名、申請して来いよ」
「ありがとな、みんな……」
こうして俺たちはリーダーの名前を取って、パーティ「ケイウッド」として新たな一歩を踏み出すことになった。




