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打ち上げ

 俺の叙勲式は全貴族を集めて執り行うということで一ヶ月後に決まった。


 ガルドと別れ、王城を後にした俺たちはパトリシアたちとともに冒険者ギルドの酒場で夕食にはまだ早いものの一杯やることにした。

 レンドルではみんな疲労困憊で宿にもどるなり寝てしまった。

 クエスト達成のお祝いをするんだ!と言って聞かない我らがリーダーの意見に乗る形で冒険者ギルド併設の酒場に移動することになったのだった。


 冒険者ギルドは王国騎士団が守護している王都だからか、そこまで冒険者たちでにぎわっている風ではなかった。

 とはいえ、そこは王都だけあってレンドルのギルドよりは人もいるし、そこかしこから話し声も聞こえた。

 商業都市であり、人と金と活気に満ちたイムネマと比較するのがいけないのだろう。


「そこのキレイなお姉さん! ここと隣のテーブルに人数分のエールとジュースをお願いね! あと料理を適当におまかせで!」


 かしこまりましたー、とウェイトレスの女性は厨房に向かい、すぐに冷えたエールとジュースを持ってきてくれた。

 ケイウッドはこの瞬間がよほど嬉しいのか、満面の笑顔で、


「それじゃあ、クエスト成功とみんなの無事を祝ってッ!」


 乾杯!と全員で杯を打ちつけあった。

 あー、冒険のあとの最初の一杯は格別だなー。

 続いて運ばれてきた料理も鳥の唐揚げやら羊肉のステーキ、魚介系のスープ、ガーリックトーストなど食欲を誘うものばかりだった。


「このステーキうんめえ!」


「くぅ、ここのエールも中々じゃの!」


「このスープ、いけますねぇ」


 みんな思い思いに食事を楽しんでいる。

 隣に座っているネムリもジュースをちびちび飲み、ガーリックトーストをちぎっては小さい口に放り込んでいる。

 隣のテーブルでも、


「れくふと、しょれはわたひのしゅてーきよ!」


「残念だったな。早い者勝ちだ」


「パットはほんま弱いくせにお酒好きやな〜」


「もんらいじばっかりれ、しゅとれしゅ、たまってりゅんだもん!」


「あらん、このパーティに問題児なんていたかしらん?」


「不思議やなぁ。優秀なメンバーしかおらんはずやのになぁ」


「しょーゆーところにゃのぅ!」


 うん、楽しくやっているみたいだ。そういうことにしておこう。

 俺も鳥の唐揚げをつまんで口に放り込む。

 噛むと脂と肉汁がじわりと滲み出してめちゃくちゃおいしい。


「ほら、ネムリも唐揚げ食うか?」


「うん、食べるー!」


 料理を取ってあげて、飲みものが足りないやつがいないか確認してウェイトレスに追加の注文をする。

 ギャーギャー騒ぎながら食事しているみんなを見ていると心がなごんでいく。


 今回の魔侯爵は強敵だった。

 危うく命を落としかけたのだ。

 あのとき、もし人狼化のパネルが出てこなかったとして、ちゃんと「リミッター」解除を行えていただろうか。

 今回のことを教訓に、何らかの対策を講じておく必要があるな。


 俺が考え込んでいるとネムリが心配したみたいで、


「シュー、ごはん、おいしい?」


「ああ、おいしいとも。ちゃんと食べてるから大丈夫だぞ。ありがとうな」


 頭を撫でてやると嬉しそうに目をつぶった。

 顔を上げると、ベルナンディアを膝の上に乗せ、至福の表情でその後頭部に顔をうずめているメルティエ。

 そんなことはお構いなしに次から次へとエールを飲み干していくベルナンディア。

 酔っ払ったラブに抱きつかれて迫りくる唇を青い顔をして本気で押し退けているケイウッド。

 言葉もたどたどしいパトリシアに首に腕をまわされ、珍味らしき黒々としたゲテモノを食わされそうになっているレクスト。

 そして、


「あかん、シュウジくん、うち酔っぱらってしもうたみたいや。腕を借りてもええかな?」


 借りてもいいか?とたずねる前からすでに腕を組んで擦りついてきているナルミ。

 まったくギャーギャー騒がしい。

 でも、これはこれで、かなり楽しいな。

 俺はナルミの口に唐揚げを詰め込みまくりながら、そう思った。

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