王国の報酬
俺たちは一度、城塞都市レンドルにもどり、一泊してからすぐに王都に向かうことになった。
やはり王国の懸案事項であった魔侯爵を討伐したことで王に謁見し、直接報告するのが良いだろうとのことだった。
王都まではレンドルから北上して馬車で三日ほどかかった。
城塞都市レンドルにも負けない厳重な城壁に囲まれた王国有数の大都市。
その門をくぐり、俺たちとパトリシアたちはガルドの先導のもと、王城まで赴いた。
玉座の間に招かれ、室内に入ると予想外に少ない人数で迎えられた。
ガルドを先頭に俺たちは王の前に膝をつき、頭を下げた。
「陛下、ただいま戻りました」
「大儀であった、騎士団長よ」
白髪に白い髭を伸ばした王は玉座に座しながら俺たちに顔を上げるよう命じた。
「騎士団長、この度の戦の報告、聞かせてもらおう」
「はっ!」
ガルドは事実のとおりに俺たちやパトリシアたちが魔侯爵の軍勢を殲滅したこと、そして魔侯爵の居城に乗り込み、その正体を確かめ、最後は俺が魔侯爵を一騎討ちで討ち取ったことを包み隠さず話した。
魔侯爵はあくまでガルドが倒したことにする約束だったのに、これでいいのだろうか、と思っていたら、
「こちらのシュージ殿の提案で、魔侯爵は私が打ち倒したことにすべきではないか、との助言も頂いております」
「ふむ、あい分かった」
王は意外にも冷静に話を受け入れ、俺に向かって許可を求めた。
「冒険者シュージよ、騎士団長から話は聞いておるだろう。貴族間の派閥争いの問題で表向きだけでも騎士団長の顔を立てたいのだ。貴殿、それで納得してもらえるか?」
驚いた。
王が一介の冒険者に頼みごとをするだなんて、謙虚であると同時にそれだけ権力争いに頭を悩ませているということか。
「はい。それで構いません」
「うむ、助かる。そなたら冒険者には特別の謝礼も用意してある。受け取ってくれ」
俺はある計画に向けての第一歩として、王様に懇願した。
「陛下、交換条件というわけではありませんが、一つお願いを聞いていただけないでしょうか?」
「ふむ、言うだけ言うてみるがよい」
「はっ。かの魔侯爵は王国の四大貴族が一人、エンネイ侯でした。彼を倒したことで王国にとっての危険は去ったと言えるでしょう」
王はまどろっこしい話を遮った。
「要点だけ言うがよい」
「単刀直入に申します。統治者のいなくなった領地と領民を捨て置けません。お許しいただけるなら私をエンネイ侯の後釜に据えていただきたく存じます」
俺の無茶な願いにさすがの王も隣に立っていたちょび髭の似合う貴族も面食らった様子だった。
ただ、ガルドだけは何も言わず、王の判断を待っているようだった。
彼は俺の成し遂げた内容を知っている証人だ。
ガルドでも手も足も出なかった悪魔を倒したことを知っている。
王は唸りながら口を開いた。
「騎士団長に問う。彼と共にいた貴公から見て、彼の功績はこの要求に見合うだけのものであったか?」
ガルドはゆっくりと口を開き、
「恐れながら、かの魔侯爵は私でも手に負えない魔物でした。王国の危機を救ったという意味で、褒美に見合うだけの功績を残したと考えて何も問題ないでしょう」
いいぞ、騎士団長!
「そうか……。わかった、貴殿の望みを叶えよう」
よっしゃあ!
これで俺は王国の貴族になれる。
しかも四大貴族の仲間入りだ。
俺の望みは決まっている。
当然、最後の王国四大至宝を手に入れることだ。
これで王国の政治に参加し、他の貴族と接触する足がかりができた。
待ってろよ、四大至宝。
かならず俺が手に入れてみせる!




