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痛恨
真の姿を見せたエンネイ侯は剣を交えていたガルドの胸部をすさまじい勢いで蹴り飛ばした。
ガルドは吹き飛ばされ、壁にしたたかに背中を打ち、血を大量に吐き出した。
「貴様は後回しだ」
俺から視線を逸らさず、エンネイ侯は手をかざした。
邪悪な力の波動をビリビリ感じる。
俺はとっさに《魔法防御壁・重》を唱えた。
青い魔法紋が二重に展開される。
「よくも俺のアサシンをやってくれたな」
かざされた手の指先に赤い光が凝縮されていく。
すかさず火の魔法だと察知した俺はすぐに《火属性耐性》のポーションを前方にふり撒いた。
だが、エンネイ侯はそんな俺の対策など気にも止めず、
「死ね」
指先の赤い光に闇より暗い黒が混じった瞬間、その邪悪魔法《黒の炎槍》がほとばしった。
二重の魔法防御壁はガラス細工のように砕け散り、俺の腹に大きな風穴が空いた。




