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非愛転生〜カタオモイ〜  作者: オサム
第4章 転生そして転移
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49話 勇者の行進

 


 壮大な大地を駆ける馬車がいる。

 そんなフレーズが合うようなBGMが頭の中で流れていた。いわるゆゲームの作曲を手掛けた椙山さんは神である。


 そこは驚きの連続だった。

 帝国の都市を出て、暫くしてからやっと馬車のカーテンを開けることを許された。なのでずっと気になっていた外の景色を眺める事にした。青々と茂る草木が風に(なび)き、まるで山奥の草原に来たかのような自然を力強く感じた。

 背後にはまだ都市の面影が薄らと見えるのだが、ここまで自然を感じるとは驚きだ。


 星というものがここまでの生命力を存在させているのが当たり前だとしたら、私が暮らしていた地球は酷いものであろう。木々が開拓され、温暖化が進み、生き物が生き辛くなって行く地球。少しは見習って欲しいものだ。まぁ、私には既に関係ない話だが。


 今回の遠征の場所は、一般公開されていない洞窟らしい。歴代勇者達が修行として使う場所とされ、王族が管理する土地なのだ。

 よってその具体的な場所は帝国都市の東門から出発するとしか私も聞かされていない。


 次世代の勇者が誕生するまで放置されるため、魔物が入り組んでいるとレイラから聞いた。

 難易度というのだろうか、とにかく危険らしい。



「夕方には目的地へ着きます。洞窟前で拠点を置き、そこから攻略して行く事になります」


 攻略という言い方が気になった。


「レイラ、この遠征の目的って何?そういえば聞いてない」


 王様には勇者を育成するための特別なダンジョンがあり、そこへ挑戦しろという試練を課せられた。

 明確な目的は聞いてなかった。

 あ、これ詐欺だ。よくある手口だ。



「第1にリル様の力をつけることです。陛下は何かをきっかけに魔法を使えるようになれたら良いと言っていました」


 魔法か……自分の意思で魔力を使うのは、正直怖い。それはこの4ヶ月でわかっていることだ。

 まぁ、それを踏まえてこのような試練で何かきっかけがあればという事だろう。



「そして最下層を目指します。強い魔物がうじゃうじゃといますが、それを乗り越えて勇者としての力をつけることが今回の目的です」


 どこかで聞いた事があるような内容だった。まるでRPGのダンジョン攻略のような……私の力がどこまで通用するのか試したくなった。



「他の目的として、魔物を減らさなければ洞窟から溢れかえってしまうので、なるべく魔物を駆逐するようにとの事です」


 前回の勇者の時は、最下層まで行かなかったので魔物は多く存在すると言われた。数十年と勇者不在だったとなれば、相当溜まっているだろう。なるほど、色々と話の筋が通ってる。



「緊張されてますか?」


「うーん。緊張というより、楽しみかな?」


「ふふ、そうですか」


 何回か休憩を挟み、草が剥げた道を進む。

 昼食を摂り暫く経った頃、行く手を阻むように深い森が現れた。


「この森の奥ですね、予定通り騎士達が木々を切り分けるのでそれに合わせて進みましょう」


 そんなレイラの言葉を合図にしたかのように、いっせいに先頭の騎士達6人が馬車から飛び降り、大きな剣で道を作って行く。

 そんな統一された動きに驚いた。


「すごっ、てかあの剣はなんだろ」


「あれは木々を切り開くために使われる木斬剣と言われる巨剣です」


「へ〜、そんなのあるんだ。でもあんな重そうな剣を揃って振り回して、騎士達ってすごいね!」


「あれくらいできなければ帝国騎士の名が泣きますよ。リル様も簡単にできるはずです」


「うーん、確かに今ならできそうな気がしたよ」


 ありえない光景を目の前に、よく考えたらできる気がした。

 あれ?私っていつの間にか力持ち?


 思ったよりも早く騎士達は木々を切り倒し、ゆっくりと馬車は進んで行く。


 また暫くして、馬車の大きさでは通ることができないほどの密度の森に当たった。まるでジャングルジムだ。

 この場所からは徒歩になるので馬車をバラして運ぶことになった。

 もちろん運ぶのは騎士達だ。手伝おうとしたが大丈夫だと言われ、すっごい遠慮された。最初は拒絶かと思った程だ。レイラは騎士達の仕事だから気にしなくていいと言った。そういうものか。


 ジャングルジムのような木々を切り倒して進んで行く。(たま)にレイラがよく分からない言葉を騎士達に飛ばすのだが、それがすごく気になって仕方ない。


「南西230、中、4」


「「はっ、」」


 これこれ。レイラの言葉に応えた荷物を手にしてない騎士の2人が瞬時にどこかへと駆けてゆく。


「レイラ?」


 何これっていう疑問を乗せてレイラの名を呼ぶと、それを汲み取ってくれたのか淡々と説明をしてくれた。


「はい、魔物の気配を捉えたので行かせたのです」


「魔物がいたの!?」


「はい、ですが強敵ではありません。進行の妨げになりかねない障害を取り除いただけです」


「へ〜、統一されてるって感じがすごいね!」


 これが騎士の仕事ですと、レイラは笑って言った。

 実際の戦闘はまだ見てないけど、騎士って凄いんだな〜。

 いつの間にか先程の2名の騎士が持ち場に戻っていた。仕事ができるってやつだろう。


 こうして予定通り、何の弊害もなく遠征は始まったのだ。




 時間は流れ、あたりは夕暮れ。静けさが漂う夜闇が近づきし頃、一同は目的地である洞窟の正面まで到達する事に成功した。


 拠点となる場所を決めてから騎士達の行動は早く、馬車の荷物やバラした部品を一斉に組み立て、シェルターのようなものを15分程で作り上げた。

 それには圧巻のひと言だ。脱帽だ。


 洞窟の中は地下にあるため昼夜といった事にさほど関係ないが、睡眠をとる必要があるので早朝に攻略開始することになった。また、短期決戦で常に潜り込む必要は無く、洞窟内は魔物などで危険なので、夜は地上にある拠点まで戻り睡眠をとるサイクルになると説明された。


 遠征の予定される期間は2ヶ月とされており、攻略次第に帰れるらしい。力をつけろという事だろう。


「ねえねえ、何作ってるの?」


「はい!これはイノシシのシチューです。道中で遭遇したので捕獲していました」


「イノシシなのか〜、てかいつの間に捕まえたの?気がつかなかったよ」


 私の疑問に1人の騎士がハキハキと答えた。レイラ率いる騎士団はひとつひとつの行動がきっちりと統一されており、仕事がとても迅速だ。

 食材はなるべく現地調達しているらしく、料理は匂いからしてとても美味しそうだ。夜ご飯が楽しみである。

 特にこれといってやる事は無いので騎士達の仕事の邪魔をしないように少し周囲を探索することにした。


 拠点は小高い崖下の脇にあり、目的の洞窟はその崖下の大きな溝のような入り口から成る。周囲は深い木々で覆われており、天井に枝がなく剥げているのはこの辺りの場所だけだ。


 今いる崖下では見晴らしが良くないので崖の上に登ることにした。


「う〜ん、よしっ」


 固まった身体をほぐし、勢いよく跳躍する。その身に流れる魔力が反応し、崖上まで軽々と飛躍した。


「おぉ、やっぱいけるもんだな……」


 転移してからまるで作り替えられたかのように強力な身体になった。4ヶ月と厳しい訓練を日課とし、今ではすっかりこの身体に慣れてきている。何でもできる気がするのだ。


「はぅ……いい眺めだなぁ」


 崖の上からの光景は人生で初めて見る景色だった。屋根上の木々が、その葉や枝が凹凸と拡がりどこまでも、その果てまで続いているようで……そして星光がほんのりと緑を照らし、そこから小さな光が浮き上がっている。まるで飛び交うかのように……

 これは幻想的の一言に尽きる。


 崖際に腰をかけ、背中から仰向けに倒れてみた。柔らかい緑がクッションとなってくれた。


 この世界にはこんな綺麗な場所がある。

 知らない場所。未知の光景。

 ……とても興奮する。心が踊る!


 決めた。勇者の役目が終わったら、旅に出よう。

 もちろんレイラも連れて、この世界を探検しよう。



「リル様〜!夜ご飯ができましたよ」


 ん…危ない、気持ちよくて寝るところだった。

 体を起こして声のした崖下を覗くとレイラが手を振っている。


「今行くよ〜!」


 私は勢いよく、崖下へ飛び降りた。良いシチューの匂いが漂ってきた。




 ───


 湿った場所。薄暗い空間に仄かな火の光が揺らめく。

 槍を手にした集団が身を強ばらせ敵襲に警戒していた。


 すると、その集団の前に怪しげな雰囲気を醸し出すフードの男が現れた。


「……お前か、こんな不気味な場所へ来るよう王に命じたのは」


「王が不在ですか……まあいいでしょう」


 集団はフードの男に向け、一斉に槍を向ける。


「そんなに慌てないでくださいよ。お猿さん共」


「なっ!てめぇ!?」


「おっと、口が滑ってしまいました」


 集団のリーダーである男は悔しそうに槍を突き立てる。


「王を呼ぶにはそれなりの理由があります。というより王でなければ話になりません」


「……ならお前は何者だ」


「そうですね、いいでしょう。私は帝国王の遣いです」


 集団に衝撃が走る。


「なんだと!?……証拠をみせろ」


「意外と目敏(めざと)いですね。ほら」


 渡された紙にはその証拠が記載されていた。


「……宰相か。わかった、王に伝えよう」


「はい、ではまたひと月後にこの場所でお会いしましょう」


 それだけを言い残すと、フードの男はまるでいなかったかのように消えていった。





 ───


 自然と目が覚める。

 身体をほぐしながらテントをくぐると眩しい朝日が眼に差し込んだ。


「おはようございます。リル様」


「お疲れ様、おはよ」


 テントの近くに護衛で夜間起きていた騎士が私に気がついて挨拶してきた。

 いや、本当にお疲れ様だよ。


 この遠征での騎士の人数は21名と3つのチームから成り、私の専属護衛であるレイラが指揮官を務める。

 その内の1チームが夜間護衛につき、残りの2チームと私とレイラで洞窟へ向かうことになってる。


「ゆっくり休んでね」


「ありがとうございます。では失礼します」


 騎士は礼を言うと、その表情から睡魔を漏らすことなく騎士のテントへと戻って行った。


 やっぱ騎士ってすごいなぁ。


 身体をほぐし、愛剣を軽く握る。その目先には大きな空洞が覗いていた。


 さてと、迷宮攻略編といきますか!




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