0日目 前語り
『さぁ、やって参りました!人気番組Secret School Life!通称SSL!』
『そのまんまですねー!
初めての方も、毎回お世話になっている方も、チャンネルはそのまま!』
毎回恒例の番組の説明が始まる。
『ルールは簡単!全国の高校2年生の中から選ばれた、16名の男女がとある廃校にて60日間の共同生活を行います!
その生活の中で、愛と友情を育むだけです!
え?それだけじゃ面白くない?
じゃあそこに賞金を投げ込んだらどうなるのでしょうか?
金額は1000万!
でも高校生にそんな簡単に渡したらつまらないですよね?
それならゲームも入れてみましょう!
今までそのゲームをクリアできた参加者は0ですが…今年の高校生たちはどんな愛と青春の悲劇を繰り広げてくれるのでしょうか?
賞金のために互いを貶め合うのか、それとも賞金を忘れ青春を楽しむのか?
乞うご期待!』
私はその番組を見ていた。
高校生なんて、同レベルの奴らを蹴落とせば、1000万手に入る。
希望に満ち溢れた物語。
SSL開始前日。
私こと、岸刹那はとある廃校に連れてこられていた。廃校と言っても、一部外壁の老朽化はあるが綺麗に整えられている。
さすがにテレビ番組の舞台となる場所であったし当たり前か。
「明日はガイダンスです。
この施設内には至る所に監視カメラがありますが、基本的に参加者16名以外に人は出入りしません。
基本的に外部との連絡手段もありません。
あと携帯や、私物は回収させていただきます。
こちらのスマートホンとブレスレットをおつけください。」
「つけないとどうなるんですか?」
「基本的に自室から出たり他人と交流できません。
言っておきますが、基本的にはみなさんの個人情報は晒さないようにしています。
テレビ番組ですし。なので、それに関わる情報を話そうとすると電流が流れます。ご注意ください。」
そのまま続きでスマートホンの使い方説明もされる。
パスワードを設定し、起動すると画面には『岸刹那』と表示された。
「それが今回のあなたの偽名です。お忘れないように。
出発前に申請があった備品に関しては自室に運んでありますのでご確認ください。必要備品ありましたら倉庫を確認の上、不足あればアプリを通して連絡してください。」
「分かりました。」
「明日は初日…つまりガイダンスです。
朝8時から食堂で始まります。遅刻のないようお気をつけください。
質問はありますか?」
「ありません。」
スタッフは分かりました、と言うと私の部屋から出て行く。
部屋には急に、静寂が訪れた。
私は荷物をある程度広げ、片し、早々に風呂へと入った。こんなにお湯を贅沢に使える風呂は何年ぶりだろうか。
「ベッドもふかふか…。」
髪を適当に乾かし、ベッドに沈む。
目を閉じて思い返せば、身体を壊しながらも一生懸命に働く母、中学生ながらも謙虚に頑張る弟、甘えた盛りにも関わらず笑顔を絶やさない幼い妹の顔が浮かんでくる。
お人好しな父親が借金を重ね、苦しい家庭の中過ごしてきた私はこのチャンスに賭けていた。
この一攫千金により、人並みの生活を、人並みの勉強を、人並みの部活を、手に入れたいと。
そのためなら誰でも蹴落としてやる。
そう心に誓って、この番組に応募した。
「お姉ちゃん…頑張るからね…。」
私は、電気を落とし、意識も闇に沈めていく。
明日から始まるサバイバルゲームに備えて。
『Are you ready?』
主催者どもの汚い陰謀が渦巻く泥臭いゲームへと身を投じたのだ。