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異世界チートスライム  作者: あい えうお
プロローグあるいはエピローグ
4/7

004 姫騎士ちゃん 4

注意!

2018/05/03、二話を続けて公開しています!

「003 姫騎士ちゃん 3」をまだお読みでない方は、お手数ですが「前の話」からご覧ください。

「ん……、う、うぅん……ふ、ぁあふ」


 何時間か経ったところで、姫騎士ちゃんはようやく目を覚ましたようだ。

 欠伸(あくび)を一つした後、むにゅむにゅ言いながらもぞもぞと動く様子が可愛らしい。

 しばらくそうした後、上掛け――つまり俺だ――の端をつかんで顔の方へ引っ張り上げようとして、そこで何かに気付いたようにパチリと目を開いた。

 ガバッと跳ねるように上体を起こして、長いまつげに縁取られた目をパチパチと瞬かせる。


「そうか。私は……」


 やがて状況を把握したらしく、ポツリとつぶやいて黙り込んだ。

 何を思い出しているのか視線を宙に彷徨(さまよ)わせて恥ずかしそうに頬を赤らめながら、同時に悔しそうに唇を噛んでいる。

 姫騎士ちゃん、随分器用な顔をするな。


「くっ、殺……、い、いや違うッ! いい! もういい! 今はいいッ!」


 つかんだ上掛け――俺だ――を握り締めて例のセリフを口にしかけたので、姫騎士ちゃんを載せた身体をプルッと震わせると、姫騎士ちゃんはあわてて手を振って前言を撤回した。

 満足度が不十分でもう一セットお望みなのかと思ったのだが、違うらしい。


「……ふぅ」


 俺が動きを止めたことで安堵の息を吐いた姫騎士ちゃんは、そこで初めて自分が何も身に着けていないことに気が付いたようだ。

 あっと声を上げて上掛け――だから俺だ――をむき出しの胸にギュッと抱くように掻き寄せたものの、すぐにその透明な上掛けの正体に考えが及んだようで、ものすごく複雑な表情を浮かべた。


「はぁああああ」


 しばらく何事か葛藤している様子だった姫騎士ちゃんは、深い深いため息を一つ吐いて顔を上げた。


「あっ」


 少し顔を巡らせたところで、すぐ脇にある石の台が目に入ったようだ。

 その上には俺がはずした部分鎧(ハーフプレート)なんかが並べてある。

 姫騎士ちゃんはバッと上掛けをめくり上げてそちら側に足を出し、俺の上から降りた。

 眠っている間も俺が放っておくはずはなく、寝汗一滴残っていない(なめ)らかな背中に寝癖一つ付いていない金髪がサラリと流れる。

 うむ、完璧だ。


「う、くっ」


 ところが床の上に降り立ったところで、姫騎士ちゃんは一瞬カクンと腰砕けになった。

 少しよろけたものの辛うじて踏み止まる。

 腰に(こぶし)を当ててトントンと叩きながら、今はベッド型になっている俺を振り返ってキッと睨んだ。


 結構激しく動かしていたから疲れが残ってしまったようだ。

 回復魔法で治してあげようと触手を伸ばし始めると、姫騎士ちゃんの眉がさらに釣り上がって怖い顔になった。

 余計なお世話だったらしい。

 俺はすごすごと触手を引っ込める。


 それを見届けた姫騎士ちゃんは、またふうと息を吐いて台の方に向き直った。

 台の上を端から順に見渡し、細剣(レイピア)や部分鎧(ハーフプレート)など全てが揃っているのが分かったのだろう、いかっていた肩の力が抜けて今度はほっと息を吐いた。

 ところが、姫騎士ちゃんの視線が台の手前の角まで来たところで、再びピクリと眉が跳ね上がる。

 そこは俺がいろいろと並べた時に余白となって残っていたところだ。


 今その余白を埋めているのは、きちんと畳まれた上下揃いの下着。

 大きなフルカップのブラと小さな紐パンである。

 極上の素材を使って仕立てられたそれらは艶のある光沢を放っている。


 その色は少し大人っぽい深い紫。

 姫騎士ちゃんが身に着けていた物ではなく、俺が新たに用意したものである。

 下がまた紐パンなのはもちろん俺の趣味だ。


 君のレベルならもうこういう装備(アダルティパープル)を身に着けてもいい頃だろう。

 そう思って準備したのだがお気に召して頂けただろうか。


 姫騎士ちゃんはくいっと振り返って、ベッドと化した俺をじいっと見つめた。

 ピクリとも動かずにその視線を受け止める。

 これでもし人間の身体だったら、目をそらして適当な口笛でも吹いて見せるところだ。


「う、ううー」


 俺が動きそうにないことを悟った姫騎士ちゃんは恨めしそうな恥ずかしそうな表情を浮かべて、唸りながらそれに手を伸ばした。

 他に選択肢が無い以上、俺が用意した物を受け入れるしかないのだ。

 そうしないと裸エプロンならぬ裸アーマーになってしまう。

 俺としては、それはそれで見てみたい気もするが。

 畳まれていた紐パンが広げられ、リボンがハラリと垂れ下がった。


 女の子が服を脱いで徐々に肌を露にしていくのを眺める、というのは平均的な男なら誰もが一度は、いや何度だって経験してみたいと思うだろう。

 それには全く以って激しく同意する。

 だが逆に、裸の女の子がその身を下着で包んでいくという情景には、それとは全く違った趣き、別次元と言っても過言ではない素晴らしさがあるのだ。


 それが今正に、俺の目の前で展開されている。


 見られているのが分かっていても、裸のままというわけにはいかない。

 ヒシヒシと感じているであろう俺の視線に肌を朱に染めながらも、姫騎士ちゃんはパンツの紐を結びブラを腕に通していく。

 あ、腋の辺りのお肉を集めてブラの中に引き込んだ。

 紫のブラに包まれたおっぱいがさらに完璧な形になる。

 うん、いいね!


 鎧下(よろいした)が失われている以上、後の物はそのまま身に着けるしかない。

 着けられるということはもちろん確かめてある。

 下着姿になった姫騎士ちゃんは次にブーツを手に取った。

 そのままキョロキョロと辺りを見回した後、むうと口を尖らせる。

 うん、ここに椅子はないね。


「フンッ!」


 何かを吹っ切るように可愛く鼻を鳴らした姫騎士ちゃんはベッドに、つまり俺の背中にボスンと勢い良く腰を下ろした。

 もちろんそんなものではダメージのダの字にもならない。

 ただのご褒美です。

 俺に座り込んだ姫騎士ちゃんは、八つ当たり気味にズボッとブーツに足を突っ込んだ。


 ◇


 板金鎧(プレートアーマー)を着け終えた姫騎士ちゃんは、腕を組んで俺を見下ろす。

 華麗な(ヘルム)も被り、腰には細剣(レイピア)も戻っている。

 ただし鎧下抜きなので、裸アーマーならぬ下着の上に直接アーマーだ。

 健康的な白い肌とミスリルの輝きの狭間(はざま)で、ちらりちらりと見え隠れする濃い紫。

 その姿はちょっとえっちなラノベに出てくる姫騎士様そのものである。

 うん、いいね!


 今みたいに腕組みをしていると、その上に胸当てに守られた(アーマード)おっぱいが乗っかって壮観だ。

 大鑑巨砲主義という言葉が何故か脳裏に(ひらめ)く。

 四十六センチ砲二連装、合わせて九十二センチのFカップ主砲があらゆる敵を一撃で圧殺するのだ。

 不沈艦(みずにうくおっぱい)大海原(おれのうえ)を堂々と進んでいく幻影が一瞬の間に駆け巡る。

 そんな俺をしばらく見つめていた姫騎士ちゃんは、キリッと真剣な表情になって組んでいた腕を解くとビシリと俺を指差した。


「そ、それも返せッ!」


 そのまま指を広げ、手の平を上にして俺に突き出す。

 姫騎士ちゃんが指差していた先、つまり俺の身体の底の方でふよふよと漂っている物。

 ああ、俺としたことがすっかり忘れていた。

 それは、俺が採取したレース多めの青い下着の上下だった。


 俺に下着の収集癖など無い。

 女の子の服とは本来溶かすものであって、これは例外なのだ。

 元々返してあげるつもりだったので、それを身体の上に移動させてニュルンと押し出した。

 もちろん、押し出す時に粘液や水分は全て吸い取り、汚れや姫騎士ちゃんの身体から出て染み込んでいた物はとっくに吸収済だ。

 洗濯するよりきれいになってきちんと乾いている。


 それを拾い上げて丁寧に畳んだ姫騎士ちゃんは、そこで少し困った顔になった。

 その格好だとポケットも無いからな。

 姫騎士ちゃんは自分の身体を見下ろして小さく頷くと、無造作に胸当ての上の(ふち)に指を掛けた。


 何をするつもりだ。

 そう思って見ていると、掛けた指をクイッと引いて持っていた物を胸当ての中、おっぱいの谷底へと躊躇(ちゅうちょ)無く仕舞い込んだ。


「これでよし」


 そう言って籠手の(はま)った手で元の位置に戻った胸当てをコンと叩く。

 なんということだ。

 もしや、俺が喜ぶ事を知り尽くしているんじゃないだろうか。

 しかしそんなはずはない。

 狙ってやっているのではないところが姫騎士ちゃんの本当に恐ろしいところだ。


「何を見ている」


 思いもかけぬ成り行きに見入ってオブジェと化していた俺――いやまあ今はベッド型(オブジェ)なんだが――に視線を戻した姫騎士ちゃんの眉がまた跳ね上がった。


「……まあいい」


 背筋を伸ばしてもう一度ビシリと俺を指差す。

 もちろん反対の手は腰だ。


「これで勝ったなどと思うなよ! 次こそ貴様を倒してやるからな! 覚悟しておくがいい!」


 そう一方的に宣言した後、ひらりと身を翻して出て行った。

 腰つきが微妙にカクついていなければさぞ颯爽としていたことだろうに、そこだけはちょっと残念。

 まあ、原因は俺なんだから仕方ないか。


 ふむ。

 さっきのセリフは「勝ち負けに関係なくまた来ますから、その時も可愛がってくださいね」ということだろう。

 姫騎士ちゃんはツンデレさんだなあ。


 フッと笑う代わりにプルリと身体を震わせると、俺は一つ心に決めた。

 今度姫騎士ちゃんがやってきたら、何としても小さくなって、あのおっぱいの谷底に仕舞ってもらうことにしよう。

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。


序章となる「プロローグあるいはエピローグ」はとりあえずこれで終わりです。


書きたかったことはもう大分書いてしまったような気がしますので、もうこれで完結でもいいんじゃないでしょうか(笑)。

……と言いたいところですが、勇み足とは言えさすがに始めたばかりでそういうわけにもいきません。


お気付きかとは思いますが、この「プロローグあるいはエピローグ」は物語開始時からは大分先のお話です。

いろいろと妙なところがあったかとは思いますが、次回からそれらが明らかになる……かも知れない多分地味目な本編が始まる予定です(汗)。


本作については、できればエピソードごとに書き上げてからまとめて更新、という形を取るつもりです。

不定期にはなりますが、なるべく早く続きをお届けできれば、とは思っております。

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