子猫0004
アルスラーナとタルノが漫才的な遣り取りを行っていたのだが、そんな2人を見ていた子猫なマスターは疲れたように大欠伸を。
まぁ、シャウトなタルノに驚かされ怯え警戒して毛を逆立てていたら室内に発光体が現れ弾けたりすれば当然であろう。
状態を理解できずにズッと警戒していた子猫マスターは子猫ゆえに体力はない。
なので2柱が穏やかに話し始めると警戒を持続することができなくなったようである。
まぁ、子猫だからねぇ。
「それではアルスラーナ様、もしかして引き取ったのは良いけれど受け入れる先がないからってダンジョンに?」
そうタルノが尋ねると頷いて応えている。
「そうなのよねぇ~なにせ天界って下界の生き物を連れ込めないじゃない。
少しは融通してくれても良いのに」って、ブツブツと文句を言っている。
「いやいや駄目ですからねっ!そうやって何時も規則を破ろうとするんですから…
だから何時もお目付け役のロッテンマイヤー女史に叱られてるんでしょ。
って、この度の事って女史は知ってられるんですか?」
「馬鹿ね、知ってる筈がないじゃない。
それに、あの規則に五月蝿い人が此処へ下天して来ることもないからねぇ。
久々に羽を伸ばせるわぁ~」って翼をバサリっと…をぃ、本当に伸ばしてぞ、この駄女神。
「あのですね、アルスラーナ様。
だからと言って子猫をダンジョンマスターにするのは駄目だと思うんですよ、僕ぁ」
そう困ったように告げる。
そんな彼へアルスラーナがキョトンとして「なんで?」っと問う。
「いやいや、ダンジョンって危険じゃないですか。
そんな危険な場所のマスターに子猫を据えるのは間違いだと思うんですよね」
「えっ、此処って危険なの?」って、をいっ!
「はぁぁぁっ!?危険でしょうっ!何を言っているんですかぁっ!」
いやいや、気持ちは分るがなぁタルノよ、シャウトは止めよう、シャウトは。
ほら、ウツラウツラってしていた子猫マスターが飛び上がって警戒モードへと。
【シャァァァァッ】って毛を逆立て尻尾を膨らませて警戒バリバリモードじゃないですかっ!
子猫なマスター様は体力がないのだから、無闇に体力を浪費するような真似は感心できまへんなぁ~
「しっ!」っとアルスラーナが唇の前へと人差し指を立ててタルノを諌める。
タルノも子猫マスターの状態に気付いて驚いたように固まったな、うん。
2柱は暫し黙って子猫マスターのを様子を伺うが、2柱が大人しくなったので子猫マスターは警戒を解く。
いや警戒を持続させたいのだが体力が尽きたようで、うつらうつらっと首が揺れ始め…コテンっと首が落ちて…パタンっと寝落ち。
まぁ、子猫ですから。
って、をいっ!
その鼻下伸ばした脂下がったような顔は止めいっ!
とてもじゃないが、高位女神と、その従僕たる天使の姿には見えないし認めたくもないぞっ!
暫くは子猫に魅入られていた2人が復帰し…
「で、何の話だっけ?」「さぁ?」はぁ?大丈夫か、この2柱?
「ああ、そうそう、ダンジョンが危険って話だったかしらねぇ」っと手の前で手の平を合わせつつ嬉しそうに告げる。
「あっ!そうでしたねぇ、マスターが余りに愛くるしいから、つい忘れてしまいましたよ」
そう告げて笑っている…って、をぉぉぉいっ!
「あのですね、アルスラーナ様」
「なぁ~にぃ?」
「ダンジョンで生活するにはダンジョンポイントが必要なんですよ、分ってます?」
そうそう、マトモなことも言えるじゃないかね、タルノ君。
「そうねぇ、それがどうしたの?」アルスラーナが不思議そうにタルノへと尋ねている。
意味が通じてないらしいな。
「はぁぁぁっ…だからですね、ダンジョンポイントを得るためにはダンションへと侵入して来る生き物を斃したり追い払う必要があるんです。
そうしないとダンジョンポイントが得られないんですよ」
そう諭すようにアルスラーナへと告げるが、彼女は小首を傾げて「なんで?」っと。
「いや、なんでって…それがダンジョンの仕組みだからでしょ!」
困ったように告げるタルノへとアルスラーナが告げる。
「あらでも…此処のダンジョンには召喚クリチャー維持コストのマイナス補正が付いているわよ」
当たり前のように告げる。
「ああ、確かに…でも、維持コストの高い召喚クリチャーが召喚できないと意味がないですよね?」
当たり前のことを告げて教えるのだが…
「えっ?私は召喚クリチャー扱いですよ?だから維持コストのマイナス補正が適応されてダンジョンポイントが増えてるんだけど?」
そう不思議そうに告げて小首を傾げるアルスラーナ様。
って、マジかぁぁぁっ!
「え、えええっ?」っとタルノは混乱中…混乱中…混乱中…「はっ!ってことはぁっ!」
慌ててダンジョンコア機能で残ポイントを確認すると…表示枠を超えて表示されておりませんでしたorz
それはそうだろう、最高神たるナルサリューンの孫娘たる最上位女神であるアルスラーナがダンジョンクリチャーとして召喚されているのである。
そのたるや、古から脈々と生き残った最古参最強ダンジョンでも一瞬で滅びるレベルである。
その維持コストがマイナス補正で逆転すれば莫大なポイントが流入するっと言って良い程に得られるだろう。
「はは、ポイント、気にしなくても良くなっちゃってるよ、これ…」乾いた笑い声を上げるタルノであった。
だがタルノはめげない、いや、天界でアルスラーナに振り回される日々が彼を鍛えたとも言える…不憫な。
「ですがアルスラーナ様、ダンジョン経営ですから生き物を斃したり追い払う必要がある訳です。
天界ダンジョンですから殺しても出口へ蘇生されますけれど、侵入者との戦いは避けられませんよ。
そしてコアルームまで辿り着かれたらマスターの命はないですけど…
まぁ、これだけのダンジョンポイントがあれば、既に天界人として転生かのうですけどねぇ。
って天界人?天界猫なの?これって?」
いやいや、そんな所で首を傾げなくてよろしい!