子猫0003
余りの事に思わず絶叫するタルノの声に驚き子猫が飛び上がるように目覚める。
それと同時に警戒して【フシァァァァッ】っと毛を逆立てて威嚇を…
いや、可愛いだけですけどね。
そんな混乱極まったタルノと驚き怯え慄く子猫なマスターの眼前が突如輝き弾ける。
【シァァァァッ!?】っと威嚇と警戒の声を上げる子猫マスター!
「な、何事ぉぉぉっ!?」っと驚きの声を上げたタルノ。
まぁ、致し方ない反応っと言えるが、そんな彼らの前へと弾けた光の中より何かが現れたっ!
「女神アルスラーナっ!呼ばれて飛び出てジジャジャジァ~ン!」って、をいw
弾けた光の場所に現れたのは美しい女性であった。
ウエーブが掛かった金髪のロングヘアを腿辺りまで伸ばしているが、その艶やかな髪は薄暗い部屋にも関わらず僅かな光にて光沢のある髪が輝いて見える程だ。
サファイアンブルーの瞳がキラキラと光り、整った顔が整い過ぎて現実離れと言える程の美しさである。
グラマラスな肢体は女性達の垂涎を集める程であるが、その背には1対の純白の翼が存在し、美しい金髪の上には天輪が輝きつつ浮いていた。
どう考えても普通の人間とは思えない身姿であり、布を巻き付けたような衣服を纏う姿は西洋の宗教画に描かれた神々を彷彿させる神々(こうごう)しさである。
その身姿から考察するに本人からの申告通りに女神だと言っても過言はない筈なのだが…
「さぁ~すがはタルノねっ☆早速、私を呼び出してくれるなんて期待を裏切らないわぁ~、グッジョブ!」っと、良い笑顔で親指立てている姿を見ていると女神とは何ぞやと言いたくなるのは仕方ないのではないだろうか?
「いやいやいやいやぁっ!呼び出してないっ!呼び出してないですからねっ!
っかぁっ!なに勝手に降臨なさってるんですかぁぁぁっ!
無闇に神が降臨するのはタブーでしょうにぃぃぃっ!」
うん、分る、分るがタルノよ、一々シャウトしないで頂きたいものである。
子猫マスターの威嚇も天元越え近い程なのだが…気付いてないのか?
「いやぁ~ねぇ、私の名を大声で告げて呼んだじゃないの。
だ・か・らぁ、来ちゃった♪」
いや、来ちゃったって、あーた…
「いや、それって絶対に仕組んでましたよねっ!
っか、子猫をダンジョンマスターにしたのはアルスラーナ様でしょ?
本来のマスターは人間の筈です!なんで子猫になっているんですかぁっ!」
そうタルノが詰問すると「チッ、誤魔化されなかったか…」などと呟いていたりする駄女神。
「あにか言いましたか…」っとジト目で駄女神を咎めるように見るタルノは、ある筋の者達にとっては御褒美であろう。
うん、美幼児と言うか美赤ん坊なタルノのジト目…怪しい方々に見られればお持ち帰り必須である。
ある意味では密閉空間である此処で良かったと言えるであろうか。
そんなタルノへ落ち込んだようなアルスラーナが「それはねぇ、止むに止むを得ない事情があったのよぉ~」っと傷心気味に告げる。
それを見て何やら止むに止むを得ない余程のことが有ったのだろうと察したタルノは詰問したことを悔いるのだが…
「だってぇ~召喚予定だった絵里菜ちゃんが精一杯の勇気を振り絞って告白して両思いになったのよぉ~
なのに仲を引き裂くように此方へ召喚なんてぇ~」
そんなことを続けて曰う駄女神なアルスラーナ。
それを聞き、キツく言い過ぎたと落ち込んで項垂れていたタルノが、ギギギギィ~っと油が切れたブリキ人形が如き動きでアルスラーナへと顔を向けつつ…
「ま、さまか…それが理由?」っと尋ねる。
すると、そんな問い掛けを受けたアルスラーナが憤ってタルノを責める!
「なんですってぇっ!乙女が一大決心して望んだ告白が成功したのよぉぉぉっ!
それをぉっ、そんなことってぇ!タルノの鬼畜っ!」
「何で、そこまで言われな、あかんのやぁぁぁっ!」
うん、ごもっとも、だが…子猫マスターのタルノへの警戒心は天元突破を果し敵愾心にまで昇華しているのだが、良いのであろうか?
「も、良いです…で、なんで代わりが子猫なんです?
他の厨二病な中二の者で良かったじゃないですか」
合点はいってないが諦めて尋ねたタルノがアルスラーナへと尋ねる。
そんなタルノの質問に、仕方ないっと言った感じでアルスラーナがヤレヤレっと言った感じで応じる。
「だからね、代わりを探す前に絵里菜ちゃんが浮かれて帰る姿が心配で事故とか遭わないように見送ってたのよ。
そしたら…」
「そしたら?」ゴクリっと喉を鳴らし先を促すタルノ。
「帰り途中で絵里菜ちゃんがダンボールに捨てられた子猫を見付けちゃってねぇ。
『拾って下さい』って書かれてはいるんだけど目立たない場所でしょ。
移動させるにしても愛くるしい子猫に思わず手が伸びちゃってたんだけど、あの子の家はペット禁止のアパートでしょ」
「知らんがなぁ~」うむ、もっともである。
「良いから聞いてってば」っと言われて渋々と黙るタルノ。
それを見て頷き続けるアルスラーナ。
「だからね、困っている絵里菜ちゃんに黙っていられなくってね」っと告げるアルスラーナへタルノが愕然としつつ尋ねる。
「まさか…だから子猫を受け取りにとか、言わないですよね?」っと。
それを聞いたアルスラーナは嬉しそうに胸の前でパンっと手を合わせ、その振動にて胸を震わせつつ告げる。
「まぁタルノっ!良く分かったわねぇ!もしかしてぇ…エスパー?」
「ちゃうわっ!っかぁ!何してんですか、アルスラーナ様ぁっ!
無闇に降臨しちゃ駄目って言われてるでしょうがぁっ!
しかも異世界って、彼方の神との協定違反で訴えられたらどうするんですかっ!
ってかぁっ!違反降臨、何度目っすか!大概罰せられますよっ本当にぃっ!」
いやいや、初犯じゃないのか、この駄女神!?
「だぁ~いじょぶよぉ~、なぁ~んとかなぁるわぁ~、なぁ~んとかぁならなかったらぁ~お父様がぁ~なんとぉかぁするわよぉ~、それで駄目だったらぁ~お爺様がぁ~なぁ~んとかぁするわよぉ~、だ・か・らぁ~、だぁ~いじょぶ、よぉ~☆」
って、大概やな、アンタぁっ!
「それに彼方の主神の奥様に許可頂いてるしねぇ~」
「えっ?主神様ではなくてですか?」
「駄目ねぇタルノ、真の支配者にお伺い立てておけば、万事OKってものよ。
世の中の常識を弁えないとね☆」
「はぁ、そんなものですか…」
いや、騙されてる、騙されてるよ、タルノぉぉぉっ、大丈夫か、コヤツら?