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ココロビト。  作者: 梶ノ宮いろ葉
4/4

いつもの時間。

「で、学校はいつからだい?」

ほかに客のいない午前中。マスターがコーヒー豆を挽きながらカウンターに座った私に話しかけてきた。

「明日が入学式です。エスカレーター式なんでほとんど何も変わらないですけど。」≪だるい≫

マスターは私の吹き出し、つまり心の声を読み取って何も言わずに笑っていた。


そう、マスターも私と同じココロビトである。

「もう高校生かい。それにしても春が来るたび思い出すよ。青ちゃんが初めてここへ来た日のことを。」

≪そうだろう?≫

「あー。あの日ですか…。」≪もう遠い昔のような…≫





~カコノコト~

中学校入学と同時に私達佐野家は父の転勤によりこの町へ引っ越してきた‥‥‥…というのは表面上の理由。

本当は私のせいだ。ぜんぶ。全部。



ココロビトである私は生まれたその瞬間から人の心が読める。しかし、それが他人を傷つける凶器になりうる事を理解していないのが「幼さ」なのだ。


「ゆきちゃん、おままごときらいなんだね。じゃあなんでみんなといっしょにおままごとしてるの?」


「ようこせんせいはえんちょうせんせいのことだいっきらいなんだね」

  

「ちひろくんはりなちゃんのことすきなんだ!ももぐみのみんなにおしえとくね」


頭上に浮かび上がる白色の心の吹き出しを、声に出して言ってしまう。それが幼稚園生だったころの私だった。この世に生まれた人々は全員ふきだしが見えると思っていたから。言っても大丈夫だと信じ切っていたから。

「あおばちゃん、なんでしってるの。みんなにいわないようにしてたのに。」


「青ちゃん、先生たちはみんな仲良しなのよ。嘘はだめだよ。」


「あおばちゃんはうそつきだ。」いつもこう言われていた。


いつしか私は『裏切り者』という最悪なレッテルを貼られている子になってしまった。

もちろん「友達」と呼べる人は私の周りからいなくなった。先生も相手にしてくれなくなった。

誰も信じられなくなったまま、小学校入学。そして中学生。相変わらず友達はできず、最初のころは楽観視していた両親が一人っ子の私を気にかけて、遠い遠いこの街へ引っ越してきた。

引っ越しにより余計ふさぎ込んでしまった私を気分転換させる為に「美味しいパフェがある」と言って母が半ば無理矢理私をこもれびに連れて行った。

後になってなぜ連れていかれたのがこもれびだったのかと聞いたら「あなたが甘党だし、私もコーヒーが飲みたかった」という理由だった。残念すぎる。けど、ありがとう。恥ずかしくて言えないけど。

そういえば、母も父も私がココロビトだという事を知らない。そう考えると私がこもれびに来ることは「運命」ではなく「奇跡」だったのかもしれない。

今回は今までに比べると長めです。過去の話はあと少し続くと思います。これからもどうぞよろしくお願いします。                梶ノ宮

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