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本日2話目です
「...え?」
素が出てますよシュヴァイン様。
「な、何故だっ!何故断る!」
「金属製の武器が嫌なので。」
鍛冶屋って言ってたしね。
いかにも重そうな金属製はお断りです。
「く、くそぅ。私は自慢じゃないがかなり凄いぞ、テクが。」
「あーはいはいそうですか、じゃあ売り込みはあちらで。」
なんだか重装備の人たちが斜め後ろで大量に固まってたから豚様を引きづっていく。
「すいませーん、この人私の恩人の鍛冶屋さんなのですけど、買い手を探してるそうなんです。みなさん金属装備みたいなのでひとまず話だけども聞いてあげてもらえませんか?」
「おうっ、いいぜ。じゃあ、兄ちゃん。ちょっと向こうの路地裏でオハナシしようか...?な?」
「ひぃぃ!?」
6、7人と一緒にお話ししに行く豚もとい悠人様。
うーん、良いことしちゃったなぁ...。
これで悠人様も顧客を1人ぐらい手に入れるでしょ。
「ちょっ、ユタル、へーるぷっ!」
なんか聞こえた気がするけど気のせいでしょ。
ルンルン気分で露店を再び回り始める私でした。
「うーん...。」
微妙だ。
金属槍なら良さげなのもあるけど、木製とかモンスター素材由来の軽いのだと良いのががない。
「ちょっとそこの君!」
「...なに?」
二回目?
とりあえず振り向いたらそこには...
まともな男がいた。
あれ、なんでだろう。まともなのが普通なのに何故か不思議に感じる。
「きみ、ひょっとして武器を探してないかい?それも、とびっきり良い非金属製の槍を。」
「...まぁ、うん。」
なんでわかったんだっ!とは言ってあげない。
思いはしたけどもなんだか負けた気がするし。
「なんでわかったんだっと言いたいけど言いたくない顔をしているね。ふふ、僕は優しいから教えてあげよう!何故なら僕が」
「いや、いいです。それで何の用?」
「酷いね君は!」
いや、だって2人目にもなればねぇ。
恩人でもない馬鹿のいうことを聞く時間はないんだよ。
こんなことしてる暇があったらレベリングしたいのに。
「まぁいいよ、許してあげよう。何故なら僕は寛容だからね!」
長いなぁ...、次本題に入らなかったら無言で回れ右で。
「モンスター素材の槍がある。気にならないかい?」
「...話を聞かせて欲しい。」
「ふふ、いいよっ、僕の工房に来るといい!」
謎のポーズを決めてどこかに向かう男についていく。
前言撤回。こいつもやっぱりまともじゃなかった。
「さぁ、ここだ。入るといい。」
狭い路地裏を抜けてさびれた建物に入る。
そこには様々な武器が所狭しと乱雑に積まれたり樽や箱に入れられていて、なんか雰囲気がでてる。
「改めて自己紹介といこうか。僕はミアリウス。この店の店長であり職人だ。」
「私の名前はユタル。神の祝福を受けた旅人...って言えばわかるかな?」
公式ページはそんな設定で書いてあった気がする。
「そうなのか。ふむ、最近神の悪戯で祝福を受けた者が大量にこの地に降り立ったというが、その一員か。」
「うーん、きっとそうですね。」
「まぁ、そんなことはどうでもいい。大事なのは君がいい使い手かどうか、そして僕の武器が君に相応しいものかどうか、違うかい?」
「いや、まったく。もっともだと思うよ。」
そんな裏設定の話より大事なのは商売の話でしょ。
「それで、どんな槍を見せてくれるのかな?」
「そうだね...君の実力ならこれかな?」
そういっておもむろにミアリウスさんが取り出したのは一本の木の柄の槍。
『糸蜘蛛の牙槍』 NPCM《鑑定固定》
プレーンスパイダーの牙を穂に、トレントの枝を柄に使用した槍
攻撃力+16
耐久力100/100
「ん...。」
受け取って軽く振ってみる。
軽い。それに攻撃力も高い。
『初心者の槍』が10だったことを考えるとかなり強いね。
ちょっと長いのが難点かな。
「ちょっと長そうだね。買うなら後で調整するよ。」
そりゃありがたい。
「うん、買うからお願いしたいな。いくら?」
「そうだな、600ルドでいい。」
600ルド、ほぼ全財産だけどいいでしょ!
「はい、調整お願いしていいかな?」
「ん。少し待っていて欲しい」
お金を渡すと槍を持って奥の工房らしきところに引っ込んでいくミアリウスさん。
「よし、完成だよ。」
数分としないで帰ってきた。早いなぁ。
差し出された槍を受け取ってお礼を言う。
「ありがとうございます。」
「いや、僕の作った物が相応しい相手を見つけて良かったよ。今度また来るといい。」
「その時は是非。」
また来る約束をして、店を後にする。
うーん、性能はいいんだけど、店主の喋り方がなかなかにうざい...。
いまいち悩むけどどうせまた来ることになるんだろうなー。