お金-ピンチ
すでに異世界に来てから8日が過ぎた。
ダンジョンの攻略は10Fで止まっており、今日は11Fに行くことになっている。
あまり普通のモンスターが強くなった気配はないが、ボスぐらいなら手応えがあるだろうと期待している。
入り口から一気に10Fまで移動し(一度行った場所へは入り口からいける)、見つけてあった扉へと向かう。
10分ほどで目的の場所に到着し、もう慣れてしまった豪華なドアをためらいもなく開ける。
今回のフロアモンスターはネイドリという鳥だった。
最初は剣が届かないので魔法で一掃したのだが、これから先にも飛行モンスターはいるだろし、玲奈も慣れておくようにと何十匹か倒させたのだが、これもまた一撃で死んでしまうので練習になったかどうかは分からない。
部屋に入るとお馴染みの魔法陣が発動し、アクアネイドリが出現した。
「ん、リーダーじゃない、アクアになってる」
「それどころか色が青になってるよ。余計に気持ち悪いな...」
ネイドリは遠くから見ればカラスに見えるのだが、近づけばカラス以上に顔が気持ち悪い。
言うなれば人の顔。人面鳥だ。
「ガー!」
お世辞にもきれいとは言えない鳴き声で威嚇するアクア。
ネイドリは威嚇なんてしてこなかったので何らかのスキルなのだろう。
「俺が倒すよ」
面倒くさいので速攻で倒そうと思い、1Fでも使ったファイヤーボール完全燃焼版をプレゼントする。
さすがに素早く一発目ははずれたが、何も他も対策がないわけではない。
今度はファイヤーボール発動時に新しく風の魔法を使いファイヤーボールを切断する。
大きさが小ぶりになるものの、それでも直径1メートル。それが4つもあり、全部の玉にある魔法を追加している。
一発目、二発目と順にアクアに発射し、時間差をつけて攻撃する。
しかしこれもまたアクアには3発目まで避けられてしまい、最後の一発がようやく直撃した。
四分の一の威力となっら攻撃ではさすがに殺すことができず、アクアはお返しにと俺に攻撃するため攻撃準備に入る。その一瞬の停止がアクアの命の灯火を吹き消すとは知らずに。
避けられたファイヤーボールはそのまま壁にぶつかったわけではない。
新しく追加した魔法によりホーミング機能が搭載されているのだ。
ゆっくりと迂回したファイヤーボールは攻撃態勢をとったアクアに直撃する。
今度は残った全弾があたり、アクアは体勢を整えることができず墜落する。
「おお、初めて俺の魔法で死なないモンスターに会ったな。さすが噂の10Fボス」
俺が呑気なことを言ってる間に、墜落してきたアクアを玲奈が容赦なく追撃する。
さすがにそれに耐えることはできず、アクアは一瞬の光となって消えた。
「まだまだ上に行けそうだね。ようやく手応えがでてきたって感じ」
それでもまだ二発なんだよな。
「一体ここは何階まで確認されているんだ?」
「メルさんが言うには430Fだって。もう1年ぐらい新しい場所にはいけてないみたい」
メルさん?ああ、ギルドの受付嬢か。
「そっか。まだまだ先があるみたいだし、もっとモンスターも強くなるだろ」
もっと探索する時間はあるが、行きたい所があるとのことなので今日はここで引き上げることになった。
ダンジョンを出て向かったのは立派な家だった。
「どこ行くんだ?」と聞いても何も教えてくれないし、ここで何がしたいのだろうか。
「リーブスさんいませんか?」
家の玄関から大きな声で言うと、返事が帰ってきた。
「どちら様でしょうか?ご主人様は現在お食事中です」
出てきたのはメイド服を来ている小柄な女性だった。結構可愛い。
「リーブスさんに土地を紹介してほしいのですが、会うことはできませんか?」
土地って、まさか家でも買うのだろうか?
それの他に使い道が思い浮かばない。
「中で少々お待ちください。もう少しでお食事が終わるはずです」
そう言って案内されたのは、いかにも高そうな物がたくさん置いてある部屋だった。商談用の部屋なのだろう。
待つこと数十分。結構長かったがようやくリーブスさんという方にお会いできた。
身長が180ほど、全体的に細いが弱そうなイメージはわかない。放っているオーラが格段に違う。
「はじめまして。私は土地商人のリーブスと申します。お客様は誰の紹介でしょうか?」
放っている空気から思ったが、たぶん結構なやり手だろう。
「私はレナ、こっちがレオンです。ロレシアさんの紹介で来ました」
いつの間にそんな話をしたのだおうか?
「ロレシアさんの紹介でしたか。それなら安心です。今日は何をお求めでしょうか?」
「家を建てるための土地が買いたいのです。良い場所はありませんか?」
「現在私が管理している空き地は5ヶ所あります。一番大きい所で価格が17500ユールです」
現在手持ちは25000ユールほどだ。土地を買う分には足りるな。
「そちらの土地に案内していただくことはできますか?」
もちろんです。そう言ってリーブスさんはさっきのメイドさんを呼び出し案内を命じた。
メイドさんはメステルと言うらしく、リーブスさんの家に仕える奴隷だそうだ。
この世界には奴隷制度があり、法でも禁止されていない。
奴隷になるのは大抵身寄りのない子供で、なりたくもないのに奴隷になるものは大抵罪を犯したものだそうだ。
罪と言っても殺人のような大きなものでなく、商品を盗んだなど小さいことだ。
奴隷になっても別段苦しい仕事をさせられるわけではなく、ある程度の衣食住を給料代わりに主人に一生仕えるそうだ。
奴隷にも種類があり、一般奴隷、戦闘奴隷、性奴隷、複合奴隷にわかれている。
一般奴隷は、戦闘や性行為を命令されてもしなくて良く、最も安い奴隷である。
次にあるのが戦闘奴隷。これは旅などをする時に冒険者(傭兵)を雇うのがもったいない人、商人などの移動の多いものが買っていくそうだ。
そして性奴隷。これは一般奴隷の仕事に加え、性行為も許すという奴隷である。ほとんどが女性でもっとも数の多い奴隷だそうだ。値段はピンからキリまで様々だ。
最後に複合奴隷。これは戦闘も性行為もできるという奴隷だ。最も少なく、とても価値が高い。
メステルさんは一般奴隷で、まだリーブスさんの家に5年ほどしか仕えてないそうだ。
そんな説明を聞きながら歩いていると、ようやくそれらしい場所にたどりついた。
「広いですね」
たしかに広い。というか街の外側で周りは畑ばっかだ。
ギルドまで歩くと20分はかかりそうだ。
「周りが空き地や畑のため今のうちに家を建てれば問題ありません。リーブス商会イチ押しの土地です」
少し大きさを確認し、周りの様子などを探る。
「いい場所だと思うけど、レオンはどう思う?」
「突然過ぎてよく分からんな。家を建てるきなのか?」
「うん。やっぱあれだけ生きるって言われたんだし早く建てといたほうが安上がりだよ」
500年か。魔力を持つものは寿命が長いと言ってたし俺はどんくらい生きるだろうか。
「玲奈が気に入ったらな買うといい。丸投げしてるのは俺なんだし気にしないさ」
玲奈は俺の顔を見て表情を探っている。
別になんとも思ってないのでポーカーフェイスをする必要もない。したところでこいつには筒抜けだと思うし。
「ここを買いたいと思います。よろしいでしょうか?」
ご主人様のところで話をしましょう。そう言って家への帰路につく。
商談は何の争いもなく、速やかに行われた。
明日からあの土地は俺達の土地になるようだ。
「連音、ちょっと宿に戻ってやってほしいことがあるんだけど」
「別に俺にできることならいいけど。今のと関係あるのか?」
歩きながら計画を説明する玲奈。今回かぎりの金策をするようだ。
宿に戻って俺がしたこと、それは買っておいた装飾品の指輪に付加魔法をかけることだ。
さすがに自分たちの装備のように完全仕様にはせず、火と水の魔法だけを固定した。
卸先は親父さんことジラードさんのお店だ。装備品だし高く買い取ってくれるだろう。
魔法を付加するのがばれてはいけないので、家に伝わる指輪だということにしておいた。
それを信じてくれた心優しきジラードさんは、元金50ユールの指輪を30000ユールで買ってくれた。最初に貰った金貨より多い。
翌日すぐに建築屋の方へ出向き、玲奈がすでに書き終わっていた家の設計図を渡しすぐに建ててくれるようお願いをする。
ちなみに俺はそれを見ることができなかった。できてからのお楽しみだそうだ。