精霊-妖精
昨日も書いたのに投稿した瞬間ブラウザが落ちて書き直し…。
同じ物を書くのは面倒くさいものですね。
「ファインでご登録ですか?」
知り合い以外にも知られたくない勇者と元王女のネームセンスが発覚した翌日、早速俺とレナが代表でギルド登録に来ていた。
他の二人は現在食料品を買いに行っており元王女が市場を歩きまわるという非日常に市場の人々も驚くだろう。最も商人たちは何度も見てるから驚くのは彼女を知っていて、かつ市場に来ることの少ない者たちだけだろうが。
「はい。メンバーは書かれてる通り4名でお願いします」
「分かりました。少々お待ちください」
またもお世話になっているメルさんが奥に引っ込んだ。その間に俺達は良いクエストがないかを探す。
最も多いのは討伐系。村の畑を荒らすモンスターの討伐から何処ぞに巣食ったボス級モンスターの討伐と幅は広い。ちなみにボス級は一般にモンスターを指揮する者をさし、強さはピンからキリまでだ。
その次に多いのは配達系か採取系だろうか。これは配達場所や採取場所の距離が遠かったり、近くても報酬が低かったりとファインには向かない。
最も少ないのが調合系などの希少職が必要なものだ。特別な能力が必要なため依頼を出してもあまり意味が無いのだ。それでも出さなければいけないような人たちが出している。調合系は少し前に俺が片っ端からクリアしたので数が減るかとも思うのだが、噂を聞きつけた者たちが自分のもやってもらおうと依頼を出すため無くなることは無さそうだ。
最近ではみんなで話し合って、店を作って稼ぐことも考えている。素材自体は殆ど揃ってるし売れば売るだけ儲かるはずだ。
クエストを見つつ良いのが無さそうだとレナと話し合ってる間にメルさんが戻ってきた。
「ご登録が終りました。あの…少しよろしいですか?」
メルさんがこんなことを言うのは大抵依頼をお願いする時だ。今までで数回同じ台詞のあと面倒なクエストをやらされている。
「いえ…時間がありませんので失礼します」
「はい。大丈夫ですよ」
前者は俺。後者はレナだ。意見の食い違う俺達にメルさんが申し訳なさそうにしている。
「ではレナさんを信じて…」
…俺を信じてほしいな。
「実は最近鉱石の産地であるグレストラトスから何も届かなくなっておりまして、何名かの冒険者にも確かめに行ってもらったのですが帰ってくるものがおりません。そのため鉱石のほとんどが品薄で…どうかファイン様で確認を取ってきてくれませんか?報酬は25000ユールで、鉱石も持ってきてくだされた量に応じて加算して払います」
グレストラトスまでなら走って一日もかからないし、ライトを使えばもっと短縮できる。普通なら2日ほどはかかるが…。
往復に余裕を持たせて3日とアクシデント合わせてもせいぜい一週間ぐらいだろう。短期間で稼げるのは嬉しいが別にお金が無いわけでもなく、どっちかというと現状必要性は低い…のだが。
「受けさせてもらいます。レオン、みんなをつれて門までお願いしていい?」
財務大臣として金を蓄えるためか、はたまた情報をもらっている恩返しか…。
「分かったよ。すぐ行くから手続きはお願いするよ」
嫌々ながらも言われたとおり二人と一匹を呼びに行く。一匹は家にいるためすぐに捕まえることができ、時間がかかりそうだった二人も市場へ行く途中のアクセサリー店で見つけることができ、予想していたよりも大幅に早く門へついた。門へ行くまでの間二人をずっと叱ってストレスを発散させたのは言うまでもない。
門で先についていたレナと合流し大きくなってもらったライトに4人で無理やり乗り込みグレストラトスへ出発する。
「鉱石も買えそうだし装備作りなおそうか?」
周りの景色にも飽きたので暇つぶしがてら提案する。何時か作ろうと思っていたため、この機会に作ろうと思ったのだ。
「んー、私は今と同じ形でいいんだけど…少し大きくしてもらえると助かるかな」
「私はローブをお願いします。後衛職なので防御範囲が増えたほうが安心です」
前者がレナで後者はユメリアである。レナは最近女性としての成長をしたため鎧が小さくなっているのであろう。ちなみに本人から聞いたわけではなくユメリアからの情報だ。
「俺は色違い作ってくれないか?サイズは今のままでいいけど白ってのはさすがにな…」
城の倉庫にあった相当腕にある職人が作ったとわかる鎧をきているユウトが言う。そうはいっても俺の実力なら同じ素材でもより良い鎧が作れるはずだ。
そこから更にデザインや素材について話はあい大まかな完成予想図を想像する。
そんなことをしていると、予想していたよりも早く街の門が見えてきた。その後ろには山々が見えるのでグレストラトスで間違いないはずだ。
さすがにライトに乗ったままでは行けないので、全員降りてライトも小さくなってもらい歩いて行く。既に色々と目立ってきてはいるがそれを自分たちから増やさなくてもいいだろうということだ。
「今日は流石に時間もないし宿で休んで明日動こうか」
レナの言葉に頷く俺たち。さすがに早く着いたといってもあと少しで夕飯の時間だ。往復で時間を短縮できているのだし一日ぐらい遅れても問題ない。
少し早めの夕食を食べ、話すこともないので皆部屋へと入る。昔は俺とレナが同じ部屋に泊まっていたが、さすがに今は2部屋とって男と女で分かれている。
皆が夢の世界へと旅立ち、もう誰も起きていない日本で言うなら丑三つ時と言われる時間に、膨大な魔力を発する存在を感知したため俺は目覚めてしまった。普通ならこんな時皆を起こして用心するのだろうが、俺以外魔力を探知できる人間はいないし眠りを妨げるのも抵抗があるため一人で下へと降りていく。
さすがに今まで感じたことのない魔力だったため、用心して扉を開ける。そして恥ずかしながら外の光景を見て動けなくなってしまった。さすがにこれを見て驚かないものがいたら、そいつは感情が抜け落ちているかあるいは大馬鹿者のはずだ。
外に見えたのはいわゆる人魂。ぼんやり…とはいえないほどはっきりと光る物体が数十個もうかんでいるのだ。しかもその光一つ一つが魔力の塊なのだから驚きだ。魔力をそれ単体で形にするのは難しくレナでも一秒と持たずに魔力切れを起こす。普通なら火や水などに変えて発動するものなのだ。
あまりの光景に未だ動けない俺の前に全部の人魂がゆっくりと近づいてくる。もしこれが弾丸のような感じで迫ってきてくれたのなら逃げることができたのかもしれないが、ゆっくりと近づいてくる人魂に俺は動くことができなかった。そしてそんな俺の前に集まった人魂は目の前で合体を始め、最終的に直径30センチメートルほどの球体となった。
(恩寵を貰いし者よ、我らの頼みを聞いてはくれないか?)
(ん、ん?)
(もう一度聞く。我らの頼みを聞いてはくれないか?)
(我らの頼み?てか誰が話しかけてきてるんだ?)
(眼の前に居るじゃないか。我らとは精霊のことだ)
(あ、目の前の精霊ね。うん、人魂じゃないの?)
(人魂は存在しない。それに魔力でできる人魂なんて物騒だ)
(かるーく人の心を読まないでくれないか。それより自分が物騒だとはわかってるのか)
(もちろん。あと我々は特別な物の心しか読めんよ)
(もうファンタジーなんて慣れてるからね。あんたら人魂が精霊だということは百歩譲って認めよう。それでなんで俺に頼むんだ?精霊って魔法を使う存在そのものじゃないか)
(精霊は魔法を使うが自分の意志では発動できない。お主のような魔法師から魔力をもらって初めて発動できるのだ。お主に頼む理由は最も適任であることとお主以外に、現在世界のどこにも我々とはなせるものが存在しないことが理由だ)
(いや…魔力で実体化してるじゃん。まあ他にも色々言いたいこともあるけど眠たいしさっさと用件を言ってくれないか?)
(魔力は我々の体そのものだから魔法とは少し違う。我らの願いはモンスター討伐だ)
(…それって最近鉱石が届かないのと関係があるか?)
(あるだろうな。モンスターのせいで鉱山の奥に行ったものは出てこれない状態だ。そろそろ死人も出そうだな)
(それなら手伝わせてもらうよ。それで、どこにモンスターは居るんだ?)
(場所までは我々が届けよう。報酬も出すし頑張ってくれ)
(届けるね…もしかして瞬間移動とかだったりする?)
(よく知っているな。では始めるぞ)
その言葉と同時に俺の足元に魔法陣が展開され、展開が終了した時点で真っ黒な底なし沼へと変わる。為す術もなくその中へ飲み込まれた俺は、気づいた時には既に知らぬ場所ヘと移動していた。
(便利だな。ここは…鉱山の中か)
(お主も空間魔法を使えるのだから使えるはずだが。ここは山の地下深く、昔お主のような者があるドラゴンを封印した場所だ)
(だろうな…あれがそのドラゴンだろ?)
俺のいる場所はダンジョンのボス部屋よりも大きい巨大な空間だ。俺はその端っこにいるのだが中心には俺の数百倍はある真っ黒なドラゴンが眠っている。こんな簡単にラスボス風な奴と出会うとは全く予想外である。
(…あれは何なんだ?というよりなんであいつのせいで戻ってこれないんだ?)
(フェアリードラゴンの発する魔力は魔力のないものには抗いきれない力を持つ。今はまだ眠ってるから範囲も小さいがもし起きたら街の住人は残らずあいつの元まで歩いて行こうとするぞ)
(花みたいなものか。それならとっとと終わらせたほうがいいな)
「ホーリーアロー!」
光で創りだした100本に近い矢を一斉にドラゴンへと発射する。黒いのだからブラックドラゴン、それなら光に弱そうという単純な理由で光属性にした。
(黒くても光には弱くないぞ?)
(早く言ってくれよ…)
発射された矢は一本一本がドラゴンの体を貫通していく。だがドラゴンには再生能力でもついているのか貫通した場所も徐々に治っていっている。
「おいおい…再生魔法なんてもってるモンスターは初めてだぞ」
この世界にもトロールのように再生するものもいるとは聞いていたが未だあったことはなかった。最初がボス級というのは色々とダメなのではないだろうか?これがリアルというやつか!?
(ドラゴンは大抵の属性に抵抗もってるぞ。お主ならもっと効果的な方法があるだろう?)
属性抵抗もってる相手にどう攻撃すればいいのか?魔力を纏わせて殴ればいいのか、はたまた別の方法なのか。俺は隣で浮かんでいる光を見ながら色々と考えた。そして…
「なるほどね。確かに俺向けだな」
魔力を体に纏わせることができたのだ、それを浮かせることぐらい少し負担が増えるだけだ。普通ならその『少し』が桁違いな魔力量なのだが、そんな常識は俺には意味が無い。純粋に魔力のみで創りだした先ほどと同じ量の矢をドラゴンに向けて発射する。すでに目覚め、俺に攻撃をしようとしていたドラゴンもこの攻撃に耐える自信がないのか凄まじいスピードで後ろへ逃げていく。しかしここは大きいといっても密封空間であり、逃げれる距離にも限界がある。魔力でできた矢は容赦なくドラゴンへと殺到し先ほどの比ではないダメージをドラゴンに与える。
「やりすぎたか…」
最後の矢があたった時点でドラゴンはその原型を留めていなかった。明らかにオーバーキルである。
(まあ少なくてもまることはあってもその逆はないから安心だな)
(…ありがとう。それで報酬はなにをくれるんだ?)
(お主が決めるが良い。さきほどの移動魔法を教えようか?)
(おお!それは嬉しいな)
(なに、お主ならいつか自分で使えるようになっていた。遅いか早いかの違いだ)
その後臨時の魔法講座が開かて約10分間移動魔法の極意を教えてもらった。しかしその極意というのがただ単に『行く場所を思い浮かべること』というのが締まらない。今まで試したこともあったのだができなかったのでボツとなった方法だ。だが教えてもらってやった後は簡単に発動できるようになったのが不思議だ。思い込みとかそういうやつだろうか?
(ふう…意外すぎて驚きも少ないな。あ、後2つだけいいか?)
(そういう場合普通後1つだと思うのだが…まあいいだろう)
(んじゃミスリルの埋まってる場所教えてくれないかな。鎧を作るのに使いたい。あと精霊がなんでドラゴンなんて気にするんだ?)
(ミスリルならここの中心を掘れば相当量あるぞ。ドラゴンが貯めこんでたのが残っておる。我々がこの問題に関与したのは昔の友人の願いだからだ)
(…精霊は死なないのか?そう言えばあのドラゴンを封印したのは誰だ)
(お主と同じ異世界のものだ。最も実力はお前さんの足元にも及ばないがな)
異世界人は色々してるな…。たまにはこの世界のものが英雄になっても罰は当たらないだろうに。
(さて…そろそろ戻るとしよう。お主に「精霊」魔法を与えておいたから暇な時使ってくれ。精霊と話せるようになる)
(…暇な時な)
俺の言葉を聞いた後なにもなかったかのように消えた精霊たち。意外に話しやすい奴らだ。
その後ドラゴンから取れるだけのアイテムをとり、言われたとおり穴を掘って金銀財宝を見つけたりして地上へと移動した。直径15メートルはある魔法陣の上にあるものはすべて移動できるようなので便利だ。
俺が戻った時刻もまだ夜更けと言えそうな時間だったが、さすがに眠気も吹き飛んでいたため鎧作りを作成する。
起きだした仲間が完成した装備と山のような財宝を見て腰を抜かしたのは言うまでもない。




