謁見-仲間
「玲奈...さん?」
またこれだ。「俺達」とすでに言ったはずだ。
俺は一ヶ月ぶりに再開した勇者こと優斗を我が家へと案内した。
「この家俺達のなんだ」と言って驚く顔を楽しむ。
最近性格が変わってきていると自分で思う。
呆然としている優斗を引っ張り、無理やり家へと押し込んだ。
俺の匂いに気づいていたのだろうライトが、元気に俺達を迎えてくれた。
ライトをみて更に意識が飛んでいった優斗が2Fから下りてきた玲奈を見て固まる。
それが今の現状だ。
「おかえ...え、優斗君?」
見つめ合う美男美女。その間にいる俺とライトはおいてけぼりだ。
「ライト...お前は俺を忘れないでくれ」と言ってライトを抱き寄せる。
「やっぱ玲奈さんだよね...二人で来てたんだ」
「言ったじゃん。『俺達』って」
「いや、他のことを考えてて気づかなかったよ。あの状況でよく連音は落ち着けるね」
「ん、ちょうど真実にたどり着いてたから。一応驚いたぞ?」
それから俺は感動の再会した話を玲奈に聞かせ、座るためにキッチンへと向かう。
それから数十分俺の話は続き、気づいたことを全部話していった。
何度か二人が質問しようとしたが、俺は面倒くさいのでわざと無視して話を終えた。
感動の再会なんて柄じゃありませんし。
「話は分かった」
「そっか。それは何よりだ」
「連音と玲奈さんはどうやって過ごしてきたんだ?」
ようやく意識が戻ってきたか。
だが面倒くさいので説明は玲奈に任せよう...
「もう『さん』ずけはしなくていいよ。そうだね-、私達はすぐ王都に出されたからね...」
「んじゃ俺も『君』はつけなくてもいいよ。どんなことがあったか教えてくれない?」
なんてことだ!異世界ってこんなに進展が速いのか。数ヶ月話しかけるのすら頑張ってた優斗はどこに行ったんだい!?
俺の新たな疑問に気づくわけもなく、玲奈は俺達の一ヶ月の話した。少し美化されているように思えるはどうしてだろう。
「私たちはそうしてここに住んでるの。まだ一週間も経ってないけどね」
笑いながら話を締めくくる玲奈。
今度はそっちの話をしてと言い始めた。だいたい予想できるだろ、面倒くさいとは思わないのか...
「そうだね...俺は」
そう言って語り出した優斗の話をまとめると...
知らない部屋で起きてすぐ、王様や王妃の紹介を受け勇者に任命されたそうだ。
一週間ほど国の歴史などを学ばされ、少し前からダンジョンに入っているらしい。
どんなに聞いても勇者の役割や、疑問に答えてもらえず壊れる寸前だった。その時に偶然俺と出会い、今に至るという。
まとめると1分もないのに、語ると10分以上かかっている。
「そっちも大変だったね...」
「いや、俺は衣食住は一応心配しなかったわけだし。二人のほうがすごいよ、一ヶ月もこの世界で生きるなんて」
「ううん。私たちは一応ある程度の生活はできたよ。もし私が一人でそんな環境にいたらすぐ自殺とかしてたと思う。こいつもね」
俺を指さす玲奈。ま、たしかにそうかななんて思ったり。
「話もだいたい出尽くしたし、これからどうするのか話さないか?」
「...連音は変わらないな」
え、変わってないのかな。ショックのようなそうでないような...
てかいつの間に俺を連音と呼ぶようになった!
「そうだね。これから3人で生活できるか王様に聞かないと」
それ以外ないか...バレたから始末なんて落ちは嫌だな。
だからといって優斗を追い出すのもできないし、したら俺が追い出されそうだ。
いや、二人のためにはそれでいいのではないか?
そんな俺の苦悩を知ってか知らずか、優斗はあっさりと。
「じゃあ今から王様に会おうか」
さすが勇者様です。そんな学校の先生に会うような気安さで王に謁見するなんて...
「そうだね。早速行こう!」
「一応装備して行こうぜ。さすがに用心しとかないといけない」
こいつら俺の話理解してないな。なぜ王様が俺たちを捨てたかぐらい覚えとけよ。
質問を受け付けるべきだったと反省する。
装備をつけ、念のためライトも引き連れて俺達三人と一匹は未来のための一歩を踏み出した。
「それで、お前たちは何が望みだ?」
重みのある声でそう尋ねるのはこの国の王様。バセノ・ラグノス・レノワール本人である。
その隣にはユメリア・ラグノス・レノワール姫が座っている。
その逆どなりには王妃様も座っている。
他にも色んな人がいるのだが、名前を知ってるのは今の二人とジェムスさんだけである。
「...勝手に召喚したくせに偉そうな奴」
思わずつぶやてしまった言葉は聞こえなかったようだ。
そうだ。たまには俺も活躍させてもらおう。
美しいユメリア姫へいいところをみせようなどという下心は断じてない!
「望みは勇者...優斗との生活をできるようにすることです」
「ふむ。それだけでいいのか?」
「それだけって...わざわざ隠してまで俺達の存在を消した人とは思えない発言ですね」
「隠したとは人聞きの悪い。隠す理由もないのになぜそんなのことしなくてはならない?」
「馬鹿にしてます?とっくに俺達をすぐ捨てた理由なんて知ってますよ。それで、優斗は連れてっていいんですか?」
「一ヶ月で情報を集めたのか。ん、別に連れてってもいいぞ」
「まじか!?」
しまった。せっかく良い感じだったのに。
しかも最初となんか王様のイメージが違うぞ。
「お主が言ったんだろう?こちらはダンジョン攻略さえしてもらえれば十分だ」
「王都ダンジョンの攻略か。500年もあれば結構いけるだろうな」
「うむ。もちろん勇者として公開もしない。だが...」
ッゴク!この展開からして難題をふっかけられそうだ。
「...時々レイラに3人で会ってくれんか?なかなか友達ができないようでの、心配での」
...親ばかかよ!レイラって!?あ、ユメリア姫の妹さんか。
さっき紹介された中にいた記憶があるが、すぐ引っ込んだから忘れていた。
てかちょくちょく素に戻るこの王様は大丈夫なのだろうか?
「それぐらいなら...」
「それと...」
ッゴク!以下省略。
「ユメリアも連れて行ってくれ。冒険をしたいそうだ」
...それは親としていいのか!?てか王としてさ!
「危険ではないか...大事な娘に何かあってもこちらは責任取れませんよ?」
「この国は特殊での、娘が生まれた場合一人だけは王家から捨てないといけないのだ。まったく...昔のご先祖様はいらない契約をなさったものだ」
その後も愚痴り続け、ようやく意味がわかった。
どうやら精霊との契約で女が生まれたら生贄みたいな感じで冒険に出さないといけないらしい。
普通なら家から追い出した後は貴族などの家に身を寄せるそうだが(王城で住めない魔法らしい)、ユメリア姫は「そんなのはいやです!私は立派な冒険者になります!」と言って聞かないそうだ。
「もうなんでもいいですよ...ユメリア姫と勇者を連れていきますね!」
あまりにも長くなりそうなので撤退だ。名誉ある撤退とは言わないが、意味のある撤退だ。
まだグチグチといっていた王様を無視して、ユメリア姫が目を輝かせてこちらに向かってきた。
「ユメリア・ラグノス・レノワールあらため、ユメリアです。これからよろしく、レオン」
姫というイメージが持てないやつだ。
「こちらこそ、姫。ここだと厄介そうなので家で話をしましょう」
「普通に話していいわよ。もう姫でもなんでもないんだから」
そしてユメリアが同意し、二人を連れて家へと帰った。
今回の俺かっこ良くね!?
いかいいかん。性格がまた変わってる...
たぶん俺も優斗との再会にテンションが上ってるのだろう。
「あれ?シリアス路線じゃないの!?」
そう思ってくれたかたいたらごめんなさい!
予定ではシリアス路線はまだ先です。




