新居-憂鬱?
まずは1Fから家具を揃えよう。
そう決めたのがつい数時間前だ。
たくさん買ってきた板や金具を魔法で加工して倉庫に棚をつけていく。
薬草や装備を置くためデッドスペースを作るわけにはいかない。
素材の中には冷やさないと持たないものもあるので、大きな箱も設置して魔法をかける。
最近考えだした冷却魔法だ。それを固定させて簡易冷蔵庫の完成だ。
スペースを無駄なく使い、結構良い出来に満足する。
見ているライトも満足そうだ。たぶん...
まあ作ったのはほとんど棚だしとても簡単だった。これじゃ自慢まではできないだろう。
キッチンと2Fの一部屋(玲奈の部屋)は玲奈が担当なので残りはトイレ、風呂、2Fの三部屋だ。
一部屋は俺の部屋でもう人部屋にライトの部屋を作るらしい。ベットは買ってくれるそうなので棚などを作るだけである。
自分の部屋にまずは箪笥などを設置し、自作机も置いて満足する。
机にしっかりと魔法のライトを付けることも忘れない。
ライトの部屋をどうするかと聞くと、ライトは外にある枯れ草を持ってきた。どうやら寝床を作って欲しいようだ。
大きさを教えてもらい寝床用のスペースを30センチメートルほどの木で区切る。
そこにもらってきた干し草を敷き詰めて完成させる。
飲まないかもしれないが俺の実験がてら、部屋の水飲み場を作った。武器に水魔法だけを付加した時に水が出てくることがあるので、それを応用した簡易水道だ。これだけでも今の世界にはない技術だ。
ライトが満足そうなので残っているトイレの作成に向かい、玲奈のご要望通り洋式の便座を作る。風魔法で切っていくだけなので一瞬だ。
それに通常どうりタンクと水を設置し、完全に見た目は洋式トイレとなった。
あとはレバーを引くと自動で掃除してくれるように魔法を掛けて(全4系統の魔法を使用)、完璧なトイレを完成させた。
最後の難関となる3Fのお風呂を作る前に、2つある脱衣所(なぜかは不明。ちなみにトイレも二つ...)を完成させて、お風呂作成にとりかかる。
「バスタブだけはお願い!」と言わてたので、早速大きめのバスタブの作成を開始する。
だいたい人が8人ほど入れそうだ。6人ぐらいなら余裕で入れるな。
残ったスペースの一角に、さっき実験で成功させた簡易水道をさらに改良しシャワーに変える。威力も3段階に調整できるので喜んでくれるはずだ(強にするとかなり痛い)。
そこである問題が発生する。
シャワーまでは付加魔法で出せても、バスタブを満たすほどの水量は出ないのだ。
アクアボールを使えばいいのだが、それはそれでここまでの努力を水に流してしまいそうなので必死に案を考える。
そこでようやく思い出したのは、魔水晶。これを使えば付加魔法以上の水量が出せる。
思い立ったが吉日、善は急げということでさっそく冒険者ギルドへと向かう。
ちょうどメルさんがいたので用途を説明して売ってくれないか聞く。
「水晶で水を...?それならお二人とも魔法師なのですから魔法石の方がよろしいかと思いますが」
「水晶と魔石で何が違うんですか?」
「水晶はモンスターからしか魔力を得られませんが、魔石は魔法師の手によってあらたに魔力を込めることができます。もちろん相当な魔力を消費しますが、水を出す程度なら大丈夫だと思いますよ。値段も2500ユールとそこまで高くありません」
金貨1枚って結構高いぞ!まあ手持ちにある俺が言っても説得力はないが。
その後メルさんが「お話があるので近いうちに玲奈さんとまた来てください」と言われた。
魔法石を1個買ってほくほく顔で家へと戻る。
ちなみにメルさんは魔力を込めるのはきついと言っていたが、連音はそのことに気づいていない。
今買った魔石も実一流魔法師が一ヶ月分ほど、毎日全魔力を込めてようやく最大限保存できるのである。
家に帰ると待っていましたとばかりにライトが出迎えてくれた。
早速魔力を限界まで込め、水道魔法石仕様を完成させる。
蛇口を真似て作ったので使い方もわかりやすい。
出てくるのは冷たい水だから温める方法もないといけない。
方法がわからないので蛇口を二つに増やし、片方からはお湯が出てくるようにした。
結構熱いので気をつけなくてはいけないな。
玲奈が帰ってくる前に鍛冶師スキルと魔法をフル活用して作った家具に模様を付け足した。
合計8時間以上の作業だったが、面白かったのでそこまで疲れてもいない。
家具の注文を終えた玲奈が帰宅し、早速自慢の家具たちを紹介していく。
倉庫に置いた冷蔵庫を見てはキッチンにも作れといい。
お風呂とライトの部屋の簡易水道を見ては自分の部屋にも設置させられる。
結局また1時間ほどの作業をして俺の仕事は終わった。
あとは玲奈の注文した家具を待つばかりである。
外においてあったアイテムをしっかりと収納していき、その作業が終わったころには19時になっていた。
まだ料理をする道具がないので夕食を雛の宿亭で食べ、明日も色々なものを買うからと早めに就寝した。
異世界に来て一ヶ月ほどがたった今でも、街を歩くのは楽しい。
この世界にはエルフや獣人などの長寿族などが多数存在し、異世界ものにありがちな差別などもないので、結構人間とも交わる者が多いらしい。
そのおかげで街を歩くほとんどが、地球で言うなら美人の部類に入る。猫耳やエルフ特有の長耳、尻尾などのついた者もめずらしくない。
これに関しては俺にしても玲奈にしても良いことだ。俺は目の保養ができるし、玲奈もここでは少し飛び出た美人に分類されるので、周りの目も地球よりはるかに少ない。
「食器に調理器具、それに調味料と食材も買わないとね」
すでに雑貨屋で結構な量を買ってるのに、そのまま次の店へ突撃するようだ。
荷物持ちが俺ではなく、俺自慢のライト専用荷車を引くライトで良かった...
ライトがすでに有名になっているらしく、俺達よりもライトのほうが注目されている。
「そういえば、どっちが料理するんだ?」
「え、二人でするつもりだけど」
「俺地球ならともかく、ここで作っていく自信ないぞ」
伊達に親なしの一人っ子を長年やってない。
地球にいた頃は毎日自炊をしていた。
「私もここの料理なんて知らないよ。でも見た感じそこまで変わったものもないしできると思うけど...やっぱ難しいかな?」
「もし作るんだったらコックとか調理師みたいな職を得られそうだな。何度か作って練習していくか、奴隷をやとうかじゃないか?」
思い出したのはメステルさん。身の回りの世話をしてくれて、可愛いメイドさんなんて男なら
誰でも一度は欲しいと考えるはずだ。
「まだ買う資金が足りないわ。でも絶対必要よね、家の掃除とかもあるし」
俺達がダンジョンに行ってる間に家を掃除してくれるのか。楽そうだしダンジョンに行く時間も増えて一石二鳥だ。
「次の目標は奴隷を雇うこと!いや、メイドさんを雇うことだ!」
玲奈が眼光で俺を攻撃してくる。ライトの威圧よりも怖いってどうゆうことだ。
「まだ女性って決まったわけじゃないけど...でもやっぱ男性はきつそうね」
同じ屋根の下で男性と住むのはさすがの玲奈でも嫌なのだろう。
ん、俺はもしかして男として見られていないってことか!?
昔何度も考えた意味のない思考が久しぶりに戻ってきた。
久しぶりに地球の話になったから、懐かしく思っているのかもしれない。




