帰宅
シュンは家についていた。
すごい息切れだ。
あの後、シュンとケイスケは、なぜか抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げたのだ。
シュンは、呼吸を調えてから、玄関のドアを開け「ただいま…。」と一言発し、二階の自分の部屋に入っていった。
部屋には、机やベッドといった、基本的な家具しかなく、これといって珍しいものは見当たらない。
それもそのはず、シュンは親に「陸上やるなら、いい靴を履きなさい!」と、高い靴を買って貰っていた。
さらに、ソールは数ヶ月で擦りきれるため、そのたびに買い換えなければならない。
親にはこれ以上の負担をかけたくなかった。
だからこそ、欲しい物があっても一言も口にはしない。
部屋に入ったシュンは、そのままベッドに倒れこんだ。
帰り道の勝負を振り返り「あんなことするんじゃなかった…」と、溜め息をついた。
そして、どうしようもない眠気に襲われた。
ケイスケは家についた。
こちらも、酷い息切れだ。
「あいつがマジに逃げるから、本気になっちまったじゃね~か…」と、膝に手を置き、休んでいた。
気持ちが落ち着くと、ドアを開け「腹へった~。」と台所へ直行した。
母に「荷物置いて来なさい!」と言われたので、渋々部屋へ…。
部屋を開けた瞬間、目を見張る光景が広がっていた。
服が散らかり、本が散乱している。足の踏み場もない。
「…さすがに、片付けないと…」と、顔が引き吊っていた。
とりあえず、荷物を端に置き、台所に戻って行った。
台所には、一人分の御飯が準備されていた。
ケイスケは、席に座り「いっただっきま~す!」と言ってから、御飯を掻き込んだ。
御飯を食べ終わると、急に眠気に襲われた。
(ヤバイ…。)と思ったときには、もう眠る寸前だった。
ちょうど台所に入って来た母に、部屋で寝なさいと言われ、重い目を擦って部屋に戻った。
部屋に入ると、散らかっているものには目もくれず、布団に潜り込み、目を閉じた。