表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/25

暗闇と声

シュンが通うこの学校は、流風中学校である。


特別頭がいい学校という訳でもなく、スポーツが盛んという訳でもない。

至って普通の学校である。


シュンが所属する陸上部も、県大会止まりであり、やはり強いとは言えない。


しかし、今年は別である。

部長のシュンと副部長のケイスケは、さらに上の大会を狙える位置にいた。


季節は春、これからの頑張りが、結果に大きく左右する季節に入った。



シュンは、三階にある自分の教室に向かっていた。


途中、陸上部2年の「ユーマ」とすれ違った。

ユーマはシュンに気付き挨拶をした。


「先輩、おはよーです。」


「うん?あぁ、ユーマか、おはよーさん。」


「今日も朝練っすか!凄いっすね。」


「まぁ今年で最後だからな~、悔いを残さないために……って、お前も朝練しろよ!」


「いや~、俺もやりたいんすけど、朝は弱くて。それに、朝練は強制ではないはずっすよ。」


シュンは(確かに…)と心の中で思ったが、先輩として引くわけには行かず、

「だからお前は強くなれないんだ。」と捨て台詞を残し、自分の教室に逃げるように歩みを進めた。


ユーマは、シュンがいうほど、弱いわけではない。

部活は一生懸命やっているし、手を抜いている様子もない。

それに、去年は県大会の1500mで、決勝の舞台に立っている。


(もう少し本気になれば、入賞も見えてくるのだが…等の本人は、どう考えているのだろう?)と、

シュンはユーマの陸上への熱意が読めないでいた。


教室に入ると、陸上仲間から「お疲れ~。」と声をかけられた。

軽く手を挙げ、自分の席に着いた。


少し遅れて、ケイスケも教室に入ってきた。

何を隠そう俺とケイスケは、三年間同じクラスだった。


クラスが二つしかないにしても、何か因縁を感じざるを得ない。


ケイスケは教室に入ると、一直線にシュンの元に向かった。


「シュン!俺を置いて行くなんて酷くないか~。」と、いい終わると同時にチャイムがなった。


「えっ…、もうこんな時間かよ!」と焦るケイスケに、「これで先に来た理由がわかったろ。」と少し満足げに笑うシュン。


先生が入ってくると、ケイスケは急いで自分の席に着いた。


いつも通り授業が始まり、いつも通り終わる。毎日がその繰り返しだった。


いつも真面目に受けていたシュンだったが、今日は何か違った。

急に眠気に誘われたのだ。


(ケイスケと久しぶりに朝走ったから、張り切り過ぎたんだろう)と、眠気の理由を考えていた。


そんなことを考えていても、眠気には勝てず、そのまま意識は闇に覆われた。



シュンは、暗闇に立っていた。

「なんだここは?!どこなんだ…?」と、状況が飲み込めずにいた。


誰の声も、何の音もしない。


何か言葉を発しようとした瞬間、微かに声が聞こえた。


その声に耳を傾ける。

しかし、小さすぎて聞き取ることができない。

何度聞こうとしても、答えは同じだった。


そして、声は完全に聞こえなくなった。


(誰の声だったんだろう。)と、思った瞬間、地震が襲ってきた。


「地震だっ!!」と、叫んだときにはもう、意識は闇に覆われていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ