出発
家のドアが開いた。
「行ってきます!」
シュンの声が響く。
今日は地区大会当日。
シュンには、一年前のリベンジを果たすための、スタートラインとも言うべき大会である。
その声からは、この大会にかける決意がうかがえた。
今日は快晴。
日差しがじりじりと照りつける。
しかし、暑すぎるわけではなく、陸上に最適のコンディションである。
シュンの調子は良かった。
練習でも、ケイスケと競り合いながら、確実に力を付けていた。
シュンが部室に着くと、下級生が準備をしていた。
「あっ!おはようございます。」
後輩達が挨拶をしてきた。
シュンは「おはよー。」と軽く返し、辺りを見回した。
シュンが、キョロキョロしていると「ケイスケ先輩なら、もうバスっすよ。」とユーマの声が。
「お~、サンキュー。」と軽く手を挙げ、バスに向かった。
バスに乗ると、ケイスケが気づき「シュン、こっちこっち」と手招きしてきた。
「お前早いな。調子はどうだ?」
「見てわかるだろ。絶好調だ。お前にも負ける気がしないぜ。」と笑顔を見せるケイスケ。
「いや、今日は俺が貰うよ。」とシュンも反論した。
何だかんだ話してるうちに準備も終わり、バスは目的地に向かい走り出した。
シュンは目をつむり、イメージトレーニングを繰り返し、ケイスケはイヤホンを耳につけ、音楽を聴いていた。
二人は、それぞれの思いを胸に、気持ちを高めていた。
バスの中で監督が一言だけ選手に告げた。
「自分に、相手に、仲間に勝ってこい!」
シュンは、その言葉に胸が熱くなった。
(俺は自分に勝つ、ライバルに勝つ、そしてケイスケに勝つ!)そう強く心に刻み込んだ。
そして、バスは競技場に到着した…。