代表争い
ケイスケとシュンは、部室を後にし、グラウンドへと向かった。
もちろんケイスケは、陸上モードに切り替わっている。
グラウンドに到着すると、部員逹はすでにアップを始めていた。
今日はポイント練習の日である。
内容は3000mのタイムトライアル。
要するに、維持とプライドを懸けた真剣勝負だ!
流風中学校では、陸上部だからという理由で、陸上大会には出させて貰えない。
全校生徒から速い者が選ばれ出場する仕組みだ。
ただ、大体が陸上部から選ばれる。
陸上は、毎日の練習がものをいうからだ。
出場人数は各学年二人まで。
3年代表は、去年出場した実績がある、ケイスケとシュンでほぼ決まっていた。
しかし、油断は出来ない。
万が一にも負けるようなことがあれば、どうなるかわからないからだ。
シュンが横を向くと、陸上部員とは違う人影が見えた。
シュンは「こんちは!」と、挨拶をした。
その影の正体は、代表を争う各学年の選手達だった。
今日は、陸上の代表を決める練習でもあり、スポーツ自慢達を集めての勝負でもあった。
「今年は俺が代表貰うぜ!」と、去年惜しくもシュンとケイスケに破れた「ケンヤ」が宣戦布告をしてきた。
そして、ケンヤはそのままアップを開始した。
シュンとケイスケは顔を見合わせ頷いた。
行こうという合図だ。
二人のエースもアップを開始した。
今日は快晴である。
ケイスケは、アップの段階から、ペースを上げた。
(今日は調子がいい…、負ける気がしない!)
ケイスケは燃えていた。
ケンヤを意識してではない。
ただ一人を倒すことだけを考えていた…。
シュンはアップを開始した。
走り始めてすぐ、調子が悪いことを悟った。
(ヤバイな、朝と同じだ…足が重い…)
シュンは正直、明日にしてほしいと思った。
それでも、勝負は待ってはくれない。
やるしかないのだ。
シュンは大きく深呼吸し、足を止めると、入念にストレッチを開始した。
ケンヤは笑っていた。
ついに、シュンとケイスケにリベンジ出来るときが来たのだ。
去年も自身はあった。一年のとき、代表に選ばれたのはシュンとケンヤだったからだ。
しかし、その夢はケイスケによって打ち砕かれた。
サッカー部に在籍していたケンヤは、さらに練習量を増やし、走り続ける日々を送った。
だからこそ、自信がある。
一度負けを知ったからこその気迫が、彼には感じられた。
一人一人にそれぞれの思いやプライドがある。
その思いを背負い、各ランナーは決戦の地に立とうとしていた…。