一瞬の爆発
ケイスケは階段を上がっていた。
下を向き、考え事をしているように見える。
いつもの穏やかな顔ではなく、部活のときの真剣な顔で。
「あいつ…。」という言葉が漏れた。
ケイスケとシュンは、小学校から何をするのも一緒だった。
そのため、シュンのことなら何でも知っている。
血液型や誕生日、身長や体重、性格にいたるまで、ありとあらゆることを熟知している。
だからこそ、シュンがいつもと違うことを察したのだ。
シュンは、決して人に弱みを見せない。
ケイスケには尚更だった。
教室に入ると「シュン。また俺を置いてったな~。」と普通に振る舞った。
「あれ?今日は早いね。」と笑うシュン。
いつもと同じ笑顔がそこにはあった。
「当たり前だろ、毎回階段走りたくないわ~。」と、冷や汗を掻いていたが、シュンの様子を見て、内心ホッとしているケイスケだった。
チャイムがなる。
「じゃあまた。」と言って、ケイスケは自分の席に向かった。
シュンは授業中も夢のことを考えていた。
(何でケイスケを追うのをやめた…!何故足を止めた…!)
シュンは答えを探していた。
夢だと理解していながら、夢では終わらない何かを感じていた。
(ダメだ…わからない…。)
シュンは軽く目を閉じ、俯いている。
「シュン。」
(誰だよ、うるさいな~、考え事してるんだ!)
「シュン?」
(お願いだから、静かにしてくれ!)
「シュン!」
次の瞬間、シュンは机を叩き、大声で「黙れ!」と、叫んでいた。
先生は唖然となり、教室は一瞬沈黙へと変わった。
「あっ…」と、事の重大さに気付いたシュン。
その後は言うまでもなく、職員室に呼び出され、説教を受けるはめとなった。
ケイスケは「シュン…」と漏らし、やはり何かに悩んでいることを悟った。