朝のグラウンド
「あなたは何故走っているのですか?」
「あなたは何故続けているのですか?」
「あなたは何故歩みを止めないのですか?」
誰かの声が聞こえる。
彼は、その言葉に耳を傾けながら走り続けていた。
「またお前か~。」と、少し困った表情で空を見上げた。今日は、雲一つない青空が広がっていた。
まだ薄暗いグラウンドに、一人の少年がいた。
その少年の名は「シュン」。
中学3年の元気で活発な子だ。
シュンは、陸上部に在籍し、日々厳しい練習に汗を流していた。
今日もいつも通り、朝早くから学校のグラウンドを、一人黙々と走っていた。
「シュン!」
後ろから、誰かに呼ばれた気がして、振り返った。
そこには、同じ陸上部3年の「ケイスケ」がいた。
ケイスケとシュンは、小学校からの大の仲良しである。
しかし、勝負事になるといいライバル関係でもあった。
「お前凄いな~。こんな早くから練習かよ。」
「ケイスケこそ、学校来るには早くね~?」
「ああ、まぁ~たまにはお前の朝練に、付き合ってやろうと思っただけだよ。」
「マジ?!お前いいやつだな。」
「良く言われる。」
二人に笑みが溢れた。
二人は陸上部でもライバル関係であった。
互いに実力は亀甲し、五分五分といったところだ。
ただ、陸上に取り組む姿勢を評価され、シュンが部長として選ばれた。ケイスケは副部長である。
ケイスケは、負けた気がして、少しがっかりしていた。
しかし、次の日には、「結果で示すさ!」と意気込んでいた。
ケイスケは影の努力家である。
みんなには、「面倒だから、朝練なんかするわけないじゃん。」と言いつつ、良く走っているのを見かける。
僕は本当に凄いと思った。
それと同時に、本当はケイスケが部長をやるべきなのかもしれないとも思った。
その後、ケイスケと30分くらい走り、練習を終えた。
制服に着替えながらケイスケが一言。
「お前余裕そうだな。俺はバテバテ…。」
「良く言うよ!ケイスケだって、全然余裕そうじゃん。」
「あれ?バレた…。」と苦笑い。
シュンは「バレバレ。」と言いながら、ドアを開け、先に部室を後にした。