007⇒違『和』感
おじさんはわたしの表情を察して震えながら頷いていた。
「…見たんだな?君も…はあ…そうか…と、とにかくワシは逃げる…!
お嬢ちゃんも何とかした方がいい…!」
「あ!ちょっと!」
…たったったっ…
おじさんは振り返る事無くそのまま消えていった。
「行っちゃった…」
「よっぽど怖いんだな。ちなみに一体なにが起きたの…?」
「え?あ…あの女の人が自殺した現場にいただけよ…」
「それだけで君を怨まないでしょう?」
「だからぁ、あの女の人がカン違いしてるのよ…!」
「はあ?」
わたしは自分でも何を言ってるのかわからなかった。
とにかくナオキくんと離れたかった。
「ここまでいい!ありがと。助かったわ…」
「え?あ、ちょっと!」
…やだ!あんまり深入りして欲しくない事聞くなー。
この場は逃げなきゃ…!
こうしてわたしはナオキくんから逃げ、無事に家に着いた。
「ただいま。」
「あ、おかえり。早かったね…」
「うん。…なんか乗らなくて早く帰ってきたよ。」
「…そう。母さん出掛けるけど…昼ご飯は自分で食べてね。」
「うん。行ってらっしゃい…」
バタン
「…ふぅ。」
なんだかアタマがごちゃごちゃしてきた…。
わたしは部屋に入りベッドに倒れると
すぐに深い眠りに入った…。
はっ……!
目が覚めるといつの間に朝になっていた。
−やだ。昨日の昼からずっと寝てたの!?
確かにここんとこ、変な事起きてるからあまり寝てなかったけど…。
「いくら何でも寝過ぎよね?」
わたしは独り言を言いながら下へ降りた。
「母さん…おはよう」
「………。」
わたしは寝ぼけたながら台所にいる母に挨拶をした。
しかし、母はわたしの声に反応しない。
わたしはすぐに、また声を掛けた。
「母さん…おはよー!」
「…あっ!ナツキ…」
母はびっくりしたようにわたしを見た。
「どうしたの?ボッーとして…なんか…わたし眠り過ぎたみたいね。
自分でもびっくりしたよ。とにかく腹減った!おいしいの作ってぇー!」
「…ナツキ、あなた…まさか…」
「…ん?なに…?」
わたしが母を見ると心配そうにわたしを見た。
「…………。」
「なに?どうしたの?」
「…なんでもない。今から何か作ろうね!テレビでもみてて。」
「……うん。」
明らかに母さんの様子はおかしかった…。
「ごちそうさま!」
「今日も学校?」
「うん。最近、絵もあまりススんでないから描かなきゃ。」
「そう…。」
「ねぇ、母さんの口の横が赤いよ…腫れてない?」
「…あ、実は寝てる時にぶつけたのよ。かなり痛かったわ。」
「ははは…母さんもわたしと一緒でおっちょこちょいから…」
「ナツキほどじゃないよ。ほら早く、支度なさい!」
「うん。」
こうしてわたしは家を出て、いつもの駅に行った。
そして何故か、あのおじさんもあの女の人も姿を現さず
いつもの駅から無事に学校に着く事が出来た。
「おっはー!」
「あれ?今日は元気じゃん。ナツキ…」
「たくさん寝てスッキリしたの。今日から元気なナツキをよろしくぅ〜」
わたしは変なポーズをしたので少しの間を置き、あかりは返事をした。
「良かった。ナツキは絵が少し遅れてるからがんばらないと…」
「突っ込まないんだ?」
変なポーズをしたのが恥ずかしくなった。
「あたしひょっとしたら、ナツキは男にでもフラれたんじゃないかと思ってたよ。」
「…その前にわたし、好きな人も付き合ってる人もいないよ!」
「はぁー!これだからカワイソ!いい!?
あたし達は今、青春の真っ只中にいるワケよ!そういう時こそ、イイ男を見つけてさぁ…」
「フフ…あかりってさ昨日からこの調子なのよ。ホラ、昨日校内をウロついてた男の子に一目ボレして…」
琴美が変なテンションのあかりに笑いを堪えながら言った。
「琴美!余計な事言うんじゃないよ!それに一目ボレなんて大ゲサな…」
「そう言いながら、あかり赤くなってなぁい?意外とウブねー」
「あは、ホントだぁー」
「なってないわよ!」
わたしはふと、あかりの言ってた子は『ナオキくん』の事かな?と思ったが口にしなかった。
お昼。飲物を買いに行ったあかりが走りながら教室に戻って来た。
「ねえ!ねえ!いたの!いたのよ!」
「誰が…?」
「昨日の男の子よ!一階の廊下歩いてた!」
「うそっ!?見てこよう!ナツキ…!」
「…う…うん。」
わたしはあまり気は進まなかったが、とりあえず付いて行く事にした。
「ね、ね、ね、あたしは髪形おかしくない?」
あかりはかなりハイになっていた。
「ホラァ!早く!」
タッタッタッ
「どこかな?」
「あっちじゃない?」
「違う!ここよ!」
「あっ…!」
「いた!あ〜ん!やっぱあたしのタイプ」
「私にはハデすぎるかも…ナツキ、どう思う?」
「う…うん。」
わたしの予想通り、その男の子は直樹くんでした。
ナオキってヒマ人だよね?(笑)