005⇒わたしを見つめる『目』
…ぅぅぅ…ひっく…
女は肩を震わせながらゆっくりと歩いて来た。
顔は髪に隠れよく見えない…。
わたしは後ろに逃げようとしたが、身体は動けない。
…ズッ…
ズッ…
「…ひっ…」
…うぅぅぅ…あぅぅ…
「…来ないで…」
ぅぅぅぁあああ…!
女は突然奇声をあげたー!
「…ひぇ…!」
そして、私の肩にぶら下がるようにしがみついた。
「……あ…あ…」
私は必死に助けを求めたが声もままならない。
女はただ泣いていた…。
その声だけが部屋中響いてる…
…ぅぅぅぅ〜っ……
「あ、あなたは何がしたいの…?」
わたしは彼女に問いかけた。
…ぅぅぅ…きま……でしょ…。
「な…なに…?」
…ぅぅぅ…いたい…いたいよぉぉ…
ぐぐぐ…
女はどんどん重くなっていた…。
「お願い…離して…」
ぐぐぐ…
「…おねがい…」
…ゆるさない…
…ぐぐぐ…
…うばってやるぅ……たいせつなものを…
「…お…もい…」
そして彼女の青白い顔が見えた瞬間、
わたしはいつの間にか気を失ってしまった…。
「…キ!」
「…ツキ!」
…ん…
「ナツキ!」
……んんん……
「大丈夫!?ねぇ!」
「…うーん…あれ?」
目を開けると、あかりと琴美が心配そうに覗き込んでいた。
「良かったぁ!戻ってきたら倒れてるからびっくりしたよ…」
「私…倒れてたんだ……ふぅ…」
ゆっくりと体を起こす。
周りを見渡すと確かにさっきまで立っていた位置だ。
いつの間に気絶したんだろう?
わたしがボッ〜としてると琴美が心配そうに口を開いた。
「ナツキ、今日はもう帰った方がいいよ。ね?そうしよ?」
気絶したものの体調は特にきつくなかったのだが、
二人があまりにも血相を変えてわたしを見るもんだから
帰ったほうがいいと考え、
「…うん…そうしよっかな?…」
「何か悩んでるの?あたしに出来る事なら…何でも言いなよ!」
あかりが微笑みながら言う。
「…ありがとう。あかり、琴美…。でも大丈夫。とりあえず今日は帰るね… 」
私は教室を出た…。
少し歩くと後ろを見た。
廊下がずっと続いてる。
奥になればなるほど暗闇に染まる。
その暗闇が嫌な感じがして吐き気に襲われる感覚した。
私が見たモノはホントにあの女の人の幽霊なのだろうか…。
それとも私の罪悪感が作り出した幻覚なのだろうか。
…よくわからない。
学校を出ようとした時、わたしは視線を感じ後ろを振り向いた。
少し離れたトコに男子生徒が立っていて、私をジッと見つめ突っ立っていた。
…?
…何でこっちを見てるのかしら?
わたしは目を凝らしよく見ようとしたが
真昼の日光のせいで顔がはっきり見えない。
…まっ、いっか。
わたしは特に気にする事無く学校を出た。
電車で帰るとあの駅に行かないといけないのでバスで帰る事にした。
あ、そういえば…
あかりが言っていた男の子ってさっきの人の事言ってたのかなー?
少し歩くとバス停が見えてきた。
真っ昼間なせいか誰もバスを待っていない…私は暑さでウンザリしながら近づく。
すると運良く、すぐにバスがやって来た。
ん?バスが来た!急げっ!
ガシッ!
走ろうとした瞬間、誰かに腕を捕まれた。
「乗ってはいけない。」
「え…?」
そこにはさっきの男の子が私の腕を捕まえていた。
そして先ほどと違い、顔をはっきりと確認する事ができた。
それなりに整っていて芯が強そうな雰囲気を持っている…。
そんな顔で目を離す事無くわたしをずっと見つめているので、
わたしはだんだんと恥ずかしくなった。
「あ・あの…」
「バスを見てごらん」
「え?」
わたしは言われるままバスを見た。
…すると……窓側にいる長い髪の女性が目に入りわたしと目が合った。
「………!」
そう…彼女がバスに乗っていたのだ。
わたしは恐怖で声が出なかった。
これからどんどん恐怖が増殖して行きます(笑)