004⇒震えた『手』
「行ってきまぁす。」
わたしは駆け足で家を出る。
…ああ…やだやだ…また今日も暑いよ…
ミーン…ミーン…
……やだな…あの駅に行くなんて……
ううん、あれは私のせいじゃない…
あの人が勝手にそうしただけ…あの人が勝手に…。
色々考えてるとあっという間に駅についた。
私はビクビクしながらもいつものホームでいつもの電車を待っていた…。
「お嬢ちゃん…」
聞き覚えの声に振り向くとあのスゲベ親父がそこに立っていた…。
「何の用ですか?わたしは昨日イヤと言いましたよね?」
「あ、違うんだ…ちょっと聞きたい事があるんだ…」
何かを言いかけて言えないでいる親父にわたしは気持ちわるくなり、
すぐにでも逃げ出したくなっていた。
ガタン…
ガタン…
「電車が来たんで失礼します。」
ガッ…!
オヤジはわたしの腕を掴んだ…。
プアァァァァァァァァァァァーン
「ちょっと何するんですか!?離してください!離してよ!」
「…聞きたい事があるんだっ…!」
「もうやあぁーっ!」
震えた腕で力強く掴む親父の腕を振り払い電車に乗り込んだ。
ドアが閉まる。
だが、オヤジは今にも泣きそうな顔でドア越しに私の顔を見ていた…。
目の奥から必死に何かを訴えるように…。
な、なんなのオ?キモイよ〜…。
そして電車は動きだした…。
ガタン…ガタン…
学校に着くと、既にあかりと琴美が教室にいて絵を描いていた。
「あ・おはよー」
「おはよ、ナツキ」
「ねえ、ねえ、ナツキ今日ねぇ、見た事ない男の子が校内ウロウロしてるのよ。見た?」
あかりはわたしを見ると妙なハイテンションで聞いて来た。
「ううん、何で?」
「あかりのタイプなんだって!」
「はぁ!?そうなの?」
「見た事ないから学年が違うのかな?」
「…夏休みだから違う学校の子が来たとか?」
「何しに?」
「うう〜ん!ミステリアスなトコが魅力的!」
「もう…あかりってば…!」
「琴美はつまらない平凡な男が好きだっけ?」
「つまらないって言わないで!別に普通でいいじゃない!普通で…ねえ、ナツキ!」
「………。」
「ナツキ…?」
「え?ああパンチョはヅラじゃなくて植毛かもね」
「何言ってんの?ナツキ…」
「もうー!あんた昨日からおかしいよ!どうかしたの?」
「あ・ごめん。えっと何の話だっけ?」
「もう、いいよ。」
「ねえ…あたしお腹すいた…」
「もうー?でも私もすいたかも?」
「…わたしは食欲ないから二人で弁当買ってきてもいいよ。」
あかりと琴美は二人して顔を合わせた。いつものわたしならついて行くからだ。
「…じゃあ、そうしよっか。琴美行こう!」
「うん、大丈夫?ナツキ…」
「大丈夫よ。買ってきて。」
2人はさっさと教室から出る。
ガララ…。
バタン…。
…ふぅ。しかし、さっきのオヤジ何が言いたかったんだろう…。
何かに怯えてるみたいだったけど…。
カタッ。
……!?
…物音が…
…うぅぅ……
…え?…
…ガララ…。
ドアがゆっくりと開く。
…ぅぅぅ…うぅぅ…
「だっ、だれ?……ひっ…!」
ドアには髪の長い女の人がうらめしそううにこっちを見て立っていた。