048⇒『血』
「はぁーっ…はぁーっ…はぁーっ…」
ズブブブ…
「うぅぅぅぅっ」
ナオキくんは更にわたしに刺さっているかけらを奥に突き刺す。
「くくく…こんなに出血しちゃって…もう時間の問題だな。」
「はぅぅぅっ…」
「動くなっ!」
突然、背後から声がする。わたしとナオキくんは声のする方を見た。
「なんだ…またあんたか…」
そこには銃を構えた刑事さんが立っていた。
「動くなっ!動いたら撃つぞ!」
刑事さんは震える体で銃を固定していた。それを見たナオキくんは眉をひそませながら笑う
「大丈夫ー?あんたも血流してるよ。無理しない方がいいんじゃない?それとさー…俺あんたにとっくに暗示掛けてんだよね。」
「なにっ!?」
「俺を本気で撃とうとしたら自殺するって…」
ナオキくんは指をパチンと鳴らした。
すると、彼に向けていた銃口が次第に刑事さんの頭に向けられる。
「ひいっ!」
「くくく…だから言ったろ?俺をなめるなよなー!みんな馬鹿だよなぁ!」
カタッ!
突然の物音にナオキくんはわたしを見た。
ポタッポタッポタッポタッ
「ナツキ…?」
わたしは突っ立っていた。
「まだ何かする気かい?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛〜あ゛あ゛あ゛〜っ」
わたしは訳の分からない叫び声を上げ、ナオキくんを目掛け走っていた。
「…−!」
そして思いっ切りナオキくんの腹にガラスを刺したのだ。
ズブリッ
「うっ…!」
「あんたなんかに…やられてたまるかぁ…!」
そして、もう一度刺す。
ズフリッ
「うわあぁぁっ」
ガラスを持っているわたしの手も切れ、たくさんの血が溢れ出していく。
そしてナオキくんのお腹からもたくさんの血が溢れて来た。
「うわぁぁぁっ!」
ポタッポタッポタッポタッポタッ
「はあっ…はあっ…はあっ…」
「でめ゛え゛…よくも……よくも…」
ドサッ
倒れ込むナオキくん。
「はあっ…はあっ…わたしだけ…死んでたまるか!あんたも…一緒よ…」
「うぅぅぅ…うぅっ…くそっ… 」
刺された体を引きずりながらナオキくんは歩き出す。わたしは彼の足を掴み動けないようにする。
「逃がさない!一緒に死ぬのよナオキくん!」
「離せっ!!離さないかっ!!俺はこんなところで死ぬ訳には行かないんだっ!ごほっ!ごほっ!」
わたしは必死に彼にしがみついていた。
『カシャッ』
「 ! 」
「これで大丈夫だ…ナツキさん!」
刑事さんがナオキくんに手錠をかけた。
「ちくしょう!離せ!これを外せっ!ごほっ!ごほっ!」
「はあっ… はあっ…良かった…はあっ…はあっ…」
わたしは安心したせいか、その場に倒れ込んだ。刑事さんは慌ててわたしの元へ駆け寄った。
「大丈夫ですか?今、救急車を呼びますから!」
「はあ…はあ…はあ…はあ…」
「ひっ!」
刑事さんの声が聞こえる。わたしは出血がひどい為、意識がもうろうとし始めていた。
「…え?」
刑事さんの方を見ると刑事さんの後ろにナオキくんが手錠をかけられた手で銃を持って立っていた。
「銃を手元から離すとこうなるんだよ…はぁ…はぁ…お前達を殺して…俺は助かるんだ……。くくく…」
わたしと刑事さんはどうする事も出来ずただその銃を見つめていた…。
「…ナ…オ…キ…」
突然、ナオキくんの背後から声が聞こえて来た。
「…!」
「なんだ?今…俺の名前を呼んだか?」
わたしと刑事さんはゆっくりと首を横に振った。
「何恐い顔してんだ?そんなに銃がこわいのか?」
ナオキくんは口から血を流しながら小さく笑う。
「…ナオキ…」
「…え?」
はわたしと刑事さんの声じゃないと気付きハッとする。
その瞬間、彼の背後から白い手が現れた。
「………!」
その手は彼の首を掴んだ。
ガシッ!
「…う!?」
彼はびっくりして振り返ろうとしたが腕の力が強すぎて身動きがとれないみたいだ。
「誰…だ…」
ぐぎぎぎ…
「う゛う゛っ」
首を締めている指が次第に彼の首にめり込んでいく。
グギギギギギ
たし達はただ茫然としていた。
「ぐぞぉ゛!」
銃を後ろに向け発砲する。
パァーン!
メキメキメキ…
「あ゛あ゛あ゛!」
ブシュゥゥゥ
彼の首から大量の血が吹き出した。
「きゃああー!」
叫ぶわたし。
ブシュゥゥゥゥ
「ぅぅぅぅあぅあぅ」
彼は口をパクパクさせ、体を痙攣させていた。そして彼の持っていた銃が地面に落ちる。
ガヂャン!
刑事さんはそれをすかさず拾うとすぐに彼に向けた。
「ああああっ!」
ドサッ
彼は地面に叩きつけられるように倒れた。
「…ぅぅぅ…うう」
ナオキくんは体をピクピクさせ、うめき声をあげていた。
「…はぁ…はぁ…」
わたしと刑事さんはナオキくんから彼女へと視線を移した。
そう…そこには奈津子さんが立っていた。
次回、いよいよ最終回!