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Summer visit  作者: スカフィ
43/50

042⇒ナオ『キ』の言いたい事

「いい加減にしてくれないか…!」


ナオキくんは言葉を吐き捨てるように怒鳴った。


「…だって…奈津子さんは確かに現れるわ!でも直接的な被害はないのよ!

彼女はわたしを殺そうとしてた様に見えたけど…でも何もない!」


「……ナツキちゃん……」


ナオキくんはそっとわたしの肩に手を置こうとした。


「触らないでっ!」


「え!?」


「…もう誰も信じない!」


そう言ってわたしはその場から急いで去った。



ナオキくんはわたしをずっと見つめながら、


「…ちっ。」


と舌打ちをした事にわたしは気付かなかった。




とにかく…わたしは開き直った。


今まで奈津子さんに対する罪悪感があったから自分を抑えて来た部分もあったが、

わたしは刑事さんに全てを話す事にした。

そうすれば何か前に進むはず。

わたしが法的に何らかの罰を受けるならそれでも構わない!

わたしは刑事さんに自宅へ来る様に連絡をし、家で待機した。




そしてまた雨が降り出した。



ザアァァァァァァ〜ッ



「また雨か…最近まで全然降らなかったのに…」



♪ピンポーン♪



わたしは刑事さんが来たと思い、すぐにドアを開けた。


「…あ…。」


「話がしたいんだ…家に上がってもいい?」


そこには雨に濡れたナオキくんが寂しそうに立っていた。


「…ごめん…帰って…今は誰も信じられない…」


「…そう…。」


一言返事したナオキくんはゆっくりと後ろに向き歩き出した。


わたしは何も言わずドアをゆっくり閉めようとしたその瞬間、

ナオキくんがこっちに振り向き隠し持っていたナイフをわたしに突き出した。


「いいから、俺を家に入れろ。」


「…ひっ」


わたしは言われるままにナオキくんを家に入れた。


バタン。


「いいか、大声を出したらお前の喉を切り裂くからな。」


「………うん」


「ほらっ、さっさと歩け…!」


グイグイと前へ歩くようにナイフをわたしの腰に押し当てた。


「わたしをどうする気…?」


「どうもしないよ。話をするだけだ、そこに座れよ。」


わたしは言われるまま指摘されたソファに座った。


「君は色々誤解してるから真実を教えようと思って…ね?」


「真実?」


ナオキくんはゆっくりと頷いた。



「いいか…確かに俺は奈津子と付き合っていた。

彼女は年下の男の子に興味を持ってたから、

街を歩いてた俺に声を掛けたのが始まりだったんだ。

彼女は俺の為に何でもしてくれたよ。もちろん俺だって彼女を好きだった。」


ナオキくんは冷蔵庫から勝手にジュースを取り出し


「俺には子供の頃からの夢があったんだ。」


そう言って一口飲んだ。


「君だって知ってるだろ?俺の親父は有名な催眠博士だってこと。

俺はよく親父に練習台にされてた。

知ってるかなー?催眠療法で自分の前世がわかるっていうやつ…」


「聞いた事はある」


「俺の前世ってね。昔どこかで大量に人を殺してた人物なんだって。

その療法ってのは目が覚めると普通は記憶はないんだ。半分以上は寝てるからね。

でも…俺の場合は断片的だが記憶に残ってた。当時8歳だったけどね。」


「前世ってホントにあるの?」


「…さあ。

俺もね身に覚えがない記憶がいくつかあるから親父の事務所から俺のファイルを探し出したら、やっぱり殺人鬼だった。

しかも未解決の事件だらけの。信じられる?有り得ないよね?」


わたしの向かいのソファに体重をかけ、話を続ける。


「…その日からかな?何故だが無性に人を殺したくなったんだ。俺の中の何かに火がついた。

でもまだ子供だし、そんな度胸はない。そしたらある日気が付いたんだ。

完璧な催眠術を使えたら簡単に人を殺せるんじゃないかってね…。」


「………。」


「幸いそれを使える親父がいたし…俺は必死に練習をして自分のものにしたよ。

ほとんど独学でね。たしか…中学生の時だったかな…試しにクラスメイトの一人に催眠をかけたんだ。

そしたらいきなり屋上に上がって一気に身を投げたよ…」


「死んだの?」


「その時俺は感動を覚えたね。俺の力でそんな事ができるなんて。これこそ完全犯罪だって…」


「ひどい!」


「でもね…まだ力は完璧じゃなかった。あとに何人かにもかけたがうまく行かなかった。

…だから…猛特訓してる最中に」


「奈津子さんと出会った?」


「…そう…俺は実験台になるなら誰でも良かった。何でも言うことを聞く彼女は俺にとって最高な存在だった…」


「好きではなかった?」


「好きだったよ。実験台として。でも飽きちゃった。…そう…確かに俺は彼女を殺した…。」


「………−!」


ナオキくんはそんな馬鹿馬鹿しいことを真剣に言っていた。


催眠術で人を殺すなんて…そんな非現実な事…。


「でね、何かをするにはテーマを決めなきゃと思ってね。題して−『印』とでも言おうかな?」


「しるし…?」


「ほら…よくあるじゃん、殺人鬼とかでもさー

右手の指の爪を剥がすとか体にナイフでマークみたいなものを殺した後につけるみたいな。

俺も何か俺がやった証みたいなものが欲しくて…

さぁて問題です。全員は無理だけど一部の人には成功しました。それは何でしょう…?」


「待ってよ…まだ奈津子さんの話しか出て来てないわ…他には?」


「いや、奈津子にもりっぱな印があるけど。」


「…赤ちゃん?」


「おっ!鋭いねぇ…その通り。俺はわざと奈津子に種付けしたんだ!」


「…じゃあ…子供が邪魔とかじゃなくてわざと?」


「そっ。それでね俺はあるシナリオを作ったんだ。


ただ人を殺すよりはドラマな方がいいだろ? 何も関係ない女の子を巻き込む悲惨な話をね…」

「それがわたしだっていうの…?」


「そう!君は見事に主役の座をゲットしたんだ!」


指をパチンと鳴らし、そう言い放った。


「…でも奈津子さんは遺書を遺してる。あれは?」


「そう!これは計算外だったんだ。

まさか奈津子自らも死ぬ事を考えてたなんて…

シナリオでは君が殺した事になる予定だったのに。

遺書はマズかったなぁ…あと、あかりもいたんだってね?

それも計算外。

やっぱ俺には計画性がないからね〜ミスだらけだ。」


頭をポリポリ掻くナオキくん。

いつもの彼で…平然と普通にしていた。

わたしの体は次第に怒りと恐怖が混じった感情のせいで震えだした。


「………どうしてわたしを選んだの?」


「わからない。でもおれ好みだよ。

俺はあの日君を見つけ…あの親父に催眠をかけたんだ。君をチカンするように…」


「…え!?あのチカンおじさんって…」


「そう…俺がそうさせたんだ…あの人はただのホームレスだよ。

君があの親父から逃げようと振り払った手が奈津子に当たったのも計算なんだ。

君は俺に利用されただけなんだよ…くくく…」


「…ひどい…」


「ひどい男だよなー?

俺は…。そして数日後俺は君の家に忍び込んだ…」


「…あの雨の日ね…」


「うん。大変だったぜ。なんせ女装してたし、その日に俺は君に暗示をかけた。

君の母親への暴力を…ただし君には記憶はない。」


「母さんの顔のアザはその為だったの?」


「ああ…君に奈津子が取り憑いた感覚を味わせる為に…ね。」


「……くっ…」


わたしは溢れてくる涙を必死に堪えた。

「おいおい、まだ話は途中なんだぜ。泣くのは早いよ。」


立ち上がりながらナオキくんはに言う。

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