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Summer visit  作者: スカフィ
39/50

038⇒あかりが口に『し』た真実。

「ただいま…」


わたしは家に帰って来た。


最近はナオキくんが傍にいてくれて、あまり寂しさを感じなかったが、

今日はすごく孤独感を感じた。


「ふぅ」


わたしは部屋に入るなりベッドに倒れ込んだ。


『あたし…知ってるんだ…。』


突然、あかりのセリフが脳裏によぎる。


あれは何を意味してるのだろうか?

わたしと直樹くんとの事は知ってるだろうし…。


「う〜ん…」


いくら考えても思い当たるふしがない。


わたしは色々考えてるうちにそのまま眠ってしまった。


♪ピンポーン♪


突然の呼び出し音にわたしは目を覚ました。


「あれ…?わたし…寝てたんだ…」


♪ピンポーン♪


二度目の音がなる。



「…あ・はいはい…」


わたしは眠い身体を起こし、玄関のドアを開けた。


「どうも」


そこにいたのは、琴美の事件を調査していた刑事だった。


「あ・何か用ですか?」


「聞きたい事があるんですが、少し時間頂いてもいいですか?」


「あ…はい。」


わたしはコーヒーを入れテーブルに置いた。


「…あ・どうも。」


「それで用と言うのは?」


「実はですね」


刑事はポケットから一枚の写真をわたしに見せた。


その写真の人物にわたしは驚いた。


「…山田奈津子…という女性なんですが…見た事ありますか?」


「いいえ、ないです。」


わたしは思わず嘘をついた。


「その女性が何か?」


「…彼女は半年ほど前、そこの近くの駅で自殺を図りました。

私が担当だったんですが…電車が来る瞬間、投身したんです。

その拍子にはねられ亡くなったんですが…目撃者によると不自然だったらしいんです。

落ち方が…ね。」


「…はあ…」


わたしは微かに襲う震えをごまかそうとソファに掛けた。


「ホーム側を見てたらしいんです。

普通自殺する人はたいがい、遠くを見る様にして死ぬんですがね。

誰かに押され、びっくりして振り返ったまま落ちたらしいんです…。」


「…はあ…」


確かにあの時、わたしと奈津子さんは目が合った。


「まあ、私もおかしいとは思ったんですが、

自宅から遺書が発見され 結局は自殺で片付いたんですよ。

ところがですね、今日の朝一通の手紙が届いたんです。」


今度はポケットから封筒らしきものを取り出し、中の手紙をわたしに見せた。


「たった一言しか、この手紙には書かれていませんでした。

“カギを握るのはこの女だ”…と。

そして一緒に…奈津子という女性の写真と、これ」


刑事はそう言うと、もう一枚の写真をテーブルの上に置いた。


「……うそ… これってわたし?」


「そうです。」


「……あ…。」


確かにこの写真はわたしだった。


写真から見てもあの日だろう。


わたしは恐る恐る顔を上げ、刑事さんに質問した。


「一体誰が?」


「…さあ…差出人はわかりません。無記名で届けられました。

…本当にご存知ないんですね…?」


「……はい…」


「そうですか…用件はただそれだけです。まだ仕事が残ってるんで。」


「はい」


「…それから…最近、あなたの周りで色々起き過ぎじゃありませんか?」


「…それって?」


「いやいや、深い意味はないですよ…何かあったら連絡下さい。」


「わかりました。」


刑事さんはお辞儀してそのまま帰って行った。


わたしはゆっくりと居間へと向かう。


「…あの日…わたしを見た人物がいる?」


わたしは警察に送りつけた人物が誰かをコーヒーを飲みながら考えていた。


だが、思いあたる人がいない。


「そもそも何で今頃になってわたしの事を?」


その時、わたしの頭の中である言葉が聞こえた。


『あたし…知ってるんだ…。』


−そう、あかりの一言だ。



「…まさか…ね」


だとしたら…一体何の為に今まで黙ってたんだろう…と疑問が出てくる。


それこそさっぱり…やはり、わたしの知らない人なのだろうか?



♪ピンポーン♪


「また?…誰だろ」


♪ピンポーン♪


「…はいはい。」


ガチャッ


ドアを開けるとあかりだった。


「あかり…どうしたの?」


「ナオキ…あたしと別れるって!」


「え!?」


「…子供もいらない…って!」


あかりはボロボロに涙を流し、嗚咽しながらわたしを見てた。


わたしはどうして良いか分からず、


「とにかく…上がって…」


「アンタのせいよ!ナツキ!アンタがいるからぁ〜!」


「きゃっ…」


あかりは私の腕を掴み、中へ入って来た。


「…はっ!!」


あかりはわたしの後ろにゆっくりと視線を向ける。


そして大きく目を開いた。


「あかり…?」


「…あぁ…あ」


不審に思ったわたしも後ろを向く−…


その瞬間、大きな音が聞こえた。



ゴロゴロゴロ



カミナリである。



「きゃっ!!」



わたしが振り向いたその先には何もなかった。



いや、誰もいない。


だが、あかりはある一点から視線をそらさない。


「あかり…何を見てるの?」


「…やっぱり…ナツキには見えないんだ?」


「だから…何が…」


「女の人よ!!」


「………!!」


「髪の長い女の人がずっとこっちを見てるのよぉ!!

声は聞こえないけど…口が動いてる…!!」


「…うそ…」


わたしはまた後ろを見た。やはり誰もいない。


それはどういう事なのだろう?


今、あかりが見ている人物が奈津子さんなら何故わたしには見えないのか。


「…もう…やめてよ…もう…」


あかりは耳を塞ぎ、何も見えないよう、目を閉じた。


「…あかり…」


何かにおびえるあかり。


まるで奈津子さんに怯えてるわたしそのものだ。


ザアァァァァァァーッ



いつの間に外は大雨になっていた。



「…ナツキ…あたしは…みんな知ってるの…」



あかりが突然話し出した。


「なにを?」



ザアァァァァァァーッ



「去年の夏の出来事よ…。あの駅の事件の日…あたしそこにいたの。」



「…いたって?」


「…夏休みだったでしょ?あたし…友達の家に泊まってて、そこから学校に行ったの。

そしたらその駅でナツキを見て…あんな事になるなんて…」


ザアァァァァァァーッ



わたしは突然のあかりの言葉に何も言えず、ただひたすらに雨の音だけが響き渡っていた。

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