037⇒あかりが口に『し』ようとしたこと。。
教室に戻るとあかりはいたが、わたしと口を聞いてくれなかった。
仕方なくその日は何も言えないまま家に帰った。
家に帰る道、わたしはナオキくんにあかりにバレた事の報告の電話をすることに。
「もしもしナオキくん?ナツキだけど…」
『……うん』
「あかりに…わたし達の事バレたよ。」
『ああ、俺の友達が全部話したらしいね。時間の問題だからいいんだけど。』
ナオキくんは割りと淡々と話していた。
元々言うつもりだった彼にはちょうど良かったからだろうか?
でもわたしは嫌だった。どんな形でバレたにしろあかりにとって同じかもしれないが、
わたしかナオキくんの口から伝わって欲しかった。
「…こんな形でバレるって…」
『ごめんな。俺がもっと早く言っておけば…とにかく今からあかりと話してみる。』
「うん。優しく話してあげてね」
『わかった。また夜にでも電話する。』
「…うん。」
少しイライラしながらわたしは家に帰った。
「なんでこんな事になっちゃったんだろ」
温かいココアを飲みながらテレビを観ていた。
もちろん、集中など出来ない。
頭はナオキくんとあかりの事で一杯だった。
テレビを観ていても何度も携帯をチェックしてしまう自分がいる。
そこへ、携帯が鳴った。
あかりからである。
わたしはすぐに携帯に出る事が出来ず数秒悩んだが、
いずれは向き合わないといけない事なので、不安ながら電話に出た。
「もしもし…」
『…あかりだけど…さっきまでナオキと話してたんだ。
どうしてもあたしの口から言っておかないといけない事があるの…』
「え?…うん」
『実はね…あたし妊娠してるの』
「え?妊娠!?」
『もちろん、堕ろす気なんてないわ』
「………それ…本当なの?」
『あたしが嘘ついてるとでも?』
「…いや…そういう意味じゃ…」
『さっき直樹にも言ったら何も言い返せなくなってた。
とにかくあたしの子供の事考えてナオキと話し合ってみて…』
「……うん」
『じゃ…また明日ね…』
あかりはそう言って電話を切った。
わたしは目の前が真っ白になる。
まさか、あかりが妊娠なんて…。
ピッ
「………ふぅ。これで直樹やナツキに話したわ。
あの2人はもうくっつく事なんて無理…絶対そうはさせない!」
あかりは携帯を見つめながら独り言を言っていた。
カタッ。
「……誰?」
「…………。」
「誰かいるの?」
「…………。」
「もう…やめてよ!あなたなんか知らない!知らないわよ!」
「……ぅぅ…」
「知らないってば!あたしに付いて来ないで!」
「……ぅぅぅ」
「やめて!」
タッタッタッ…
「付いて来ないでってば…!」
あかりからの電話の後、すぐにナオキくんから電話があった。
「もしもし…」
『ナツキちゃん?あかりから聞いたかい?』
「やっぱり本当の事なの?」
『わからない…でもあかりがあんな嘘をつくとも思えないからな。
悪いけど、もう少し時間がかかるよ』
「それは構わないけど…もしそれが事実なら…わたしナオキくんとは付き合えない」
『え…?…あ…その時になったら…ちゃんと話し合おう。』
「うん…じゃっ…」
わたしは携帯を切り、ソファへ体重をかけた。
「はあ」
わたしはひとつ大きな溜息をした。
翌日、わたしとあかりは学校の屋上にいた。
「もし…あかりの言う事が真実ならわたしは直樹くんとは付き合わない」
「そう!だったら直樹に近づかないで!お願いだから…あたしから盗らないで!」
あかりはゆっくりとそう言った。
だが、変に落ち着きがない…時々周りを気にしている。
「あたしには…ナオキしかいないの…ナツキだってわかってくれるでしょ?」
「…うん…わかってるよ。」
「ほんとに?」
「…うん。」
「本当にわかってるの?ねえ…!わかってるの!」
あかりは目を大きく見開きわたしに向かって言う。
その姿はどこか尋常ではない。
「ねえ!わかってるの?」
「…あかり?」
「………あたし…知ってるんだ………」
「え?何を?」
「………。ううん、いい…教室に戻ろ。」
そう言ってあかりは立ち上がり、下へおりて行く。
わたしはあかりの後ろ姿を見つめていた。