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Summer visit  作者: スカフィ
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036⇒あかりが口に『し』たこと。

「…つまり、君はその奈津子さんを突き落とした…と?」


「そういう事になるね…だから…わたし警察に事情を説明しに行こうとしたわ

でも…それも許されなかった。わたし…奈津子さんだけでなく、そのチカンおじさんにも狙われてるの」


「…? 何言ってんだ!?あのオヤジが死んだのは君のせいではないだろ?」


「でも、わたしが狙われてるのは事実よ」


「無茶苦茶だ!そんなの馬鹿げてる!そもそも奈津子という女性は遺書があったんだろ?

自殺するつもりなら何で君を狙うんだ?」


「彼女のお姉さんが言ってた。被害妄想が激しいトコあるって。彼女の歪んだ憎しみがわたしに…」


「ー君の言う事がホントなら、早く見せてもらった方がいい…。力のある人に」


「一人いたわ。でもその人も…ここにはいない。」


「……え?」


「そうやって琴美も…琴美も死んだのよ!わたしのせいで!」


わたしは琴美のあの時の顔を思い出し、体が震えだした。


ナオキくんはただ心配そうにわたしを見つめている。


「ナツキちゃん?」


「あの時琴美が言ったの…“彼女との約束”って…現れたのよ!琴美の前に!」


「ナツキちゃん!落ち着いて…」


「だから!だから聞いて…直樹くん!…わたしには関わらないで!ゆうべの事忘れて!」


わたしは直樹くんの目を真っ直ぐみて訴えた。


いきなりの事に直樹くんはキョトンとしてたが、すぐに口を開いた。


「それは出来ないよ。俺は君が好きなんだ。やっと君とひとつになれたのに…無理だよ。」


そう言ってわたしを抱き締めた。わたしは払いのけようとしたが、腕に力が入らない。


「もう…どうしてわかってくれないの…?」


「わかってないのは君だよ…君こそどうして素直にならない?


確かに君は色んなものを抱えてる…でも俺はそれでも君がいい!君でなきゃ…」


「本気で言ってる?もしかしたら死んじゃうかも知れないんだよ?」


「ああ、本気だ。」


ナオキくんの目は強くわたしを見つめていた。


それはまさしく本気の目だった。


わたしはその目に吸い込まれ、キスをした。


「ナオキくん…」


「好きだよナツキちゃん…俺は君を守りたい…だから、俺を信じて欲しい。」


「…うん。」



わたしはベッドへ押し倒されナオキくんの“体温”に包まれる。


その瞬間、わたしは周りの事がどうでも良くなった。


今ある危機もあかりの事も…。



ただ幸せだった…。




そして、それからまた月日が経ち、3月になった。


学校では3年生が既に学校を卒業し、期末考査も終わった。


授業も短縮に入り、少し自由の時間が増えた。


「ねぇ、ナツキ今日一緒に帰らない?おいしいケーキ屋見つけたんだ…」


あかりが帰りのホームルーム直前に言った。


「あ・ごめん。今日用事があるんだ。」


「ふ〜ん最近、付き合い悪いよね。 そうそう、直樹もね付き合い悪いのよ。

電話しても『忙しい』連発してさ〜」


「え?そうなんだ」


「学校が違うからさ、仕方ないんだけど…はあ〜…」


「ごめんね、あかり。」


「あ・いいのよいいのよ!」


「…じゃっ」


わたしが走り出そうとしたら、あかりがわたしを呼び止める。


「あ・ナツキ!」


「ん?」


「……良かった…あんたが元気になってくれて…」


 「………。」


あかりが優しく微笑んだ。わたしも笑顔で、  



「…ありがと。」



そう言った。




今のわたしの元気はナオキくんがくれたもの。


だからあかりに対する『罪悪感』よりも

ナオキくんに対する『感謝』と『幸せ』しかなかった。


もうわたしは後戻りも出来ない。目の前の現実しか見えない。


わたしは駆け足で家に向かった。


家に帰ればナオキくんがいる。


わたし達はあれ以来、あかりに隠れて定期的に会っていた。


毎日だとバレる危険性があるので週に一回、わたしの家でわたし達は会っていた。


それがどんなに待ち遠しいか、そして何よりも楽しみだった…。


わたしは息が切れても走るのをやめなかった。



「わたし…信じられない…直樹くんと2人でこうやっていられるなんて…」


「俺もだよ…今…すごく幸せだよ。」


「…うん。」


わたし達はベッドでお互い寄り添ってた。



「…ねえ…あかりには感づかれてない?」

「さあ…?ただでさえマイナス思考な所があるからな…。もうそろそろかな?」


「…そろそろ?」


「ああ…学校も落ち着いて来たし…俺達も気持ちがひとつになったし。

もう…あとはあかりに本当の事言うだけだろ?」



「……うん。そうだね…もう隠せないモンね。」


わたしはふと、あかりの泣く姿がよぎり、ナオキくんの腕の中に顔を埋める。


「どうした?恐い?」


「…ん。少し。」


「大丈夫だよ…時間をかければ。あかりだっていつかわかってくれる。」


そういってナオキくんは笑った。


彼の笑顔はわたしを幸せにしてくれる。


その笑顔にわたしは楽になり、そのまま眠りについた。




−翌日−


わたしはあかりに呼ばれ学校の屋上にいた。


「…はあ。」


屋上に着くなり、あかりは深い溜息をした。


「どうしたの?あかり…」


「う〜ん。ナオキの事なんだけどね…」


「ナオキくん?」


「どうやら他に好きな人がいるみたいなの。」


わたしの息が一瞬止まった。


無意識に次の言葉が出た。


「え?ナオキくんの口からそう聞いたの?」


「ううん。昨日ナオキに会う為に学校に行ったんだ。

もう既にナオキは帰ってたんだけど…彼の友達から色々聞いちゃった。」


「色々って…?」


「これからある人に会いに行くって言って昨日は帰ったらしいよ

。学校ではその人の話題ばかり口にするらしいの…。

まあ、そのナオキの友達ってのはあたしの中学ん時の友達だから何でも話してくれるんだけど…。」


「………う…ん」


わたしは心臓が口から出そうなくらいドキドキした。


「わかっちゃった…相手が誰だか…」


「………!」


「…なんでそうなるの?ナツキ…あたし…言ったじゃない!あれほどダメだって…」


あかりは真剣な顔でわたしを見つめていた。


けど、思ったより平然としていた。


「…あかり…」


「…正直…あまりそこまで驚いてない。だって予感してたから。」


「………。」


「だってナツキ…直樹が現れてからずっとおかしかったんだもの

ナオキの事でずっと悩んでたんでしょ?」


「……え?」


「ずっと好きだったんでしょ?夏休みから…」


「………。」


あかりは大きなカン違いをしていた。


わたしが奈津子さんを恐れて苦しんでいるのをナオキくんが好きで苦しんでいると。


「でも!それだけは許さない!直樹を好きになんかならないでよ!

あたしから直樹を盗らないでよ…!」


あかりは今まで我慢してた言葉をわたしにぶつけた。


「…あかり…ごめんねっ」


わたしはただあかりに謝りの言葉しか出て来ない。


その言葉を聞いたあかりが急に静かになった。


「……誰?」


「ーえ!?」


わたしはあかりを見た。

あかりはわたしを見ているようで見てない。

わたしの後ろを見ていた。


「………。」



わたしはゆっくりと後ろを見た。



「………。」



そこには誰もいなかった。

心したわたしは元の場所を振り向いた。


「あかり…?」


すると今度は、目の前にいたあかりの姿は消えていた。


「え?どこ?」


わたしはびっくりしてあかりを探す。

隠れるような場所もないので全部見たがどこにもいなかった。


「…まさか!」


わたしは急いで下を見た。


屋上から見える下を全部。


どこにもあかりの姿は見当たらなかった。


「はっ…良かった…自殺とかじゃない…はっ…はっ…」


安心したわたしは地面に座り込んだ。

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