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Summer visit  作者: スカフィ
34/50

033⇒あかりのお『願』い

  ガタン…ガタン…


辺りは真っ暗になって来たのでほとんど景色は見えず、街の明かりが目立ち始めていた。


わたしはサイフからある紙キレを取り出した。


「…大友尚道催眠事務所…」


そう…それは…あかりから送られて来たFAXだった。


わたしはそれを見つめ、場所を確認していた。


なんとか、行けそうだ。



ガタン…ガタン…


わたしの中で何かが変わっていた。

それは恐怖が後押ししてるのか、

琴美が死んだ事が後押ししてるのかわたしにはわからないが、

ただ素直にナオキくんに会いたかった。



「ナオキくん…」






「あ〜あ!結局ナツキ来なかったね…」


「…しょうがないよ。そんな気分になれないだろうし」


「ホントなら皆で楽しむ予定だったのに…なんでこんな事になっちゃったんだろ?」


「ほらぁ〜考えたってしょうがないだろ。俺、喉渇いた…何か買って来るか?」


「あ・お願い。あたしフロに入って来る。先に入ってるからナオキも後から来てね〜」


「ばぁ〜か。とりあえず買って来る…」


バタン…


家と少し離れた所に自動販売機があって、そこへ向かってナオキくんは歩ていた。


「ふぅ〜。やっぱ寒いなここは。早く買お。」



「ナオキくん!」


「ん?」



一瞬、足を止めるナオキくん。


だけどまたすぐに歩き出すので、わたしはまた名前を呼んだ。


「ナオキくんっ!!」



首をキョロキョロさせ、ようやくわたしに気付き、驚いていた。


「ナツキちゃん?」


「ナオキくん!」


わたしは直樹くんに抱きついた。


無意識だった。



ただ会いたくて…気付けば彼に向かって走っていた。


わたしは初めて自分からナオキくんに触れる事が出来た。


触れたかった。


その体温があまりにも気持ちよすぎてわたしは


このまま時間が止まってしまえばいいのに…。


そう心から願った…。




「…ナ…ナツキちゃん…?」


ナオキくんはびっくりして呆然としていた。



「ナツキちゃん…来てくれたんだね?」


ナオキくんの一言に目が覚めた。


「やだ、ごめん!急に抱きついたりして…わたし何やってんだろ」


わたしはゆっくりとナオキくんから離れた。


「ははは…。でも悪い気はしないよ。でもどうしたの?泣いてない?」


「…あ・うん…ちょっと色々考えてたもんだから…何か混乱してるみたい」


「とりあえずさ、俺んトコ行こうよ。あかりもいる事だし…」


ナオキくんはわたしの腕を掴み寝泊まりする場所へと誘導した。



「ごめん…わたしやっぱり駄目。なんか二人の邪魔してるみたいだし」


わたしは足を止め、首を横に振った。


「何言ってんだよ。

元々はみんなで行こうって話から出てるんだから君はいて当然なんだよ

。変な気つかうなよな!」


ナオキくんは笑顔でわたしにそう言ってくれた。


彼のやさしさが痛かった。


彼の笑顔が眩しかった。


それが全部あかりに向けられてると考えると正直、胸が痛い…。


それでもわたしは隠さなければいけないのだろう。この気持ちを…。



「ほらっ!遠慮しないでこっちに来いよ」


ナオキくんは戸惑っているわたしの背中を押すように強く言った。


「わかった。行く…」


「はは…そう来なくちゃ…」


事務所は意外と大きかった。


五階建てのビルで三階に私達が寝泊まりする場所になっていた。


「なんで黙ってたの?」


「え?何が?」


ナオキくんがわたしに聞き返して来た。


「お父さんが有名人だって事…わたしびっくりしたよ。」


「…ああ、あんまり言いたくなかったんだよ。俺と親父あんまり仲良くないし…。

別に有名だからって芸能人じゃないし…ね。

でも細木数子くらい有名になったら言ってたかも。」


「まあ…そう言われればそうね」


エレベーターで3階に上がり、部屋のドアを開けた。


「おーい!あかり!ナツキちゃん来たぞ!」


「え?うそ!?ナツキ…!?」


バスタオルを巻いたあかりがフロ場から出てきた。


わたしはその光景を見て2人がまるで本物の夫婦に見えて…

二人の愛の部屋に入っていくような気がして少し複雑だった。


「わぁ!嬉しい!来てくれたんだね。」


「うん。それと報告したい事もあって…琴美の事なんだけど…」


わたしは今日琴美が病院で亡くなった事を2人に話した。


あかりはバスタオルのまま直樹くんに抱きつきながら泣いていて、

ナオキくんはあかりをそっとやさしく包むように黙ってた。


しばらくすると、あかりは、


「ごめん。ちょっと服を着てくる」


といい、隣の部屋へ行った。


わたしとナオキくんは黙ったまま あかりが戻って来るのを待っていた。


「ナツキちゃん…ツライだろうが、君もがんばるんだよ…

。時々君みてると俺もツラクなる。

君と知り合ったのは何かの縁だし幸せになって欲しい…」


そういってナオキくんはわたしの手を握った。


「ありがとう…」


わたしはナオキくんの手を握り返したかったが、

あかりの横でそんな事できるわけもなく優しく手を離した。


「あ・ごめん。」


ナオキくん少し照れ臭そうに頭を掻いていた。


「ん〜ん…ありがとね。でも嬉しいよ。わたしの事心配してくれてる人がいるなんて…」


「当たり前だよ。君は一人じゃない…」


「…うん。」


わたしは少し笑い、ナオキくんを見た。



ナオキくんはわたしをじっ〜と見つめ小さな声で−


「さっき…何で抱きついて来たんだ?」


「…え?」


「君が抱きついて来なけりゃ…俺は気持ちを整理出来たのに…」


「…え?…」


一瞬、何を言ってるのか分からなかった。


直樹くんはいつもと違う表情でわたしを見ていた。


「…ナオキくん…それって…」


「………。」


ナオキくんはずっと黙ったままだった。


「……あ。」


ナオキくんのその態度をみたら、わたしまで変に緊張してしまった。


ガチャ…


あかりが隣の部屋から出て来た。


「あたし達も明日には帰らなきゃね」


「あ…そうだな…」


ナオキくんは立ち上がり−


「俺…ちょっと外の空気吸ってくる…」


「…? いいけど…。さっきも出たばっかりじゃないの?」


「…あ…いや、ほら2人で琴美ちゃんの事とか話したいだろうし…」


ナオキくんはオロオロした様子であかりと目を合わせようとしなかった。


あかりは首を横に傾げながら、


「…まあね、行ってきたら?」


ナオキくんは軽くわたしに挨拶をして外へ出ていった。


わたしもさっきの事で変な緊張感があり、あかりと2人になるのが少し恐い気がした。


「ねぇ…」


あかりが低い声でわたしに呼びかける。


「…ん?」


「お願いだから、ナオキの事好きにならないでよ?ナオキは誰にでも優しいんだから…」


突然のあかりの言葉にびっくりした。


もしかして…さっきの会話聞こえたのだろうか…?


わたしは更にドキドキしたが平然を装った。


「………わかってる…」


「絶対だよ?あたし…前から気になってたのよ…もしかして…ナオキは−…」


「あかり!もう心配しすぎって!」


「…わかってる…でも何か感じるの…」


「………。やっぱりわたし帰ろうか?」


「あ、ごめん!そういうつもりじゃないの…ただ…気になって…ごめん、忘れて…」


そういってあかりはキッチンへ向かった。


やばっ、凄い寝ぼけてるよ。

感想よろしくぅぅぅ!

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