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Summer visit  作者: スカフィ
33/50

032⇒力強い『手』

「可哀相…あなたの友達や家族、あなたに関わる全てのものは不幸になるのよ」


ムクリと起き上がった琴美の鼻や口からは血が滴っていた。


そしてゆっくりとわたしを見つめ口を開いた。


「あなたはそれだけの事をしたのよ。あたしは絶対許さない。」


声が琴美の声ではなかった。


「…奈津子…さん…?」


「許さない!許さないからぁ…」


「……奈津子さんなのね?」


「許さないぃぃぃ」


「そんなに許せないならさっさとわたしを殺せばいいじゃない!」


「………。」


バタッ。


琴美はそのまま倒れピクリとも動かなかった。


「…こ…琴美…ぅぅぅ」


わたしはすぐに携帯を取り出し救急車を呼んだ。




全ての作業を終え、ボロボロになりながらも無事に家に着いた。


そして考える。


琴美にも奈津子さんが絡んで来た事を。


このままじゃ あかりやナオキくんにも危害が及ぶ…


更に恐怖を感じたわたしは、押し潰されそうになった。



だが、今のわたしには琴美が意識不明の重体で命が助かった事だけが救いだった。

そしてふと、FAXが来ていた事に気がついた。

あかりから例の旅行の地図が送られて来たのだ。


「…大友尚道催眠事務所…?」


泊まる予定の建物の名前なのだが、その名前にびっくりした。

『大友尚道』というのが最近テレビでよくみる催眠博士の名前だったからだ。

−つまりナオキくんはその人の息子だったというわけだ。



−翌日−



あかり達は出発を一日ズラし琴美のそばにいた。


「なんでこんな事になっちゃったんだろね」


「……うん。」


あかりはそっと琴美の手を握り琴美を見つめる。


「どうして黙ってたの?」


「…え!?」


「琴美が妊娠してた事…正直ショックだよ。」


「ごめん。きっとあかりに心配かけたくなかったんだよ」


「でもナツキには話すのね。」


少し刺のある言い方をして、あかりは握っていた手をそっと戻す。


わたしは何て言えばいいのかわからないので少し黙っていたら


「…まあ…それはいいとして…明日やっぱり一緒にいこ!ナツキも気分転換が必要だよ!」


「…うん…でも…」


「とにかく、よく考えてから返事ちょうだい。」


「…うん。」




そして翌日。


やっぱりわたしはあかり達とは行く事はできなかった。

ナオキくんの事もあるし、琴美の事がかなり気になったから。


「わかった。でも気が向いたら来て…一日でもいいから…ね?」


「ありがと。琴美の事はわたしがみとくから安心して楽しんで…」


あかりとの電話を終え、わたしは朝ごはんを作る。


ただでさえ最近食欲がないので消化に良い物を食材にし、テレビを観ながら食べた。

そして家の掃除をし、天気が良いので洗濯もした。

少しでも体を動かしていれば何も考えないで済む。


「…ふぅ。とりあえず終わったぁ…」


わたしは家事を終え、ベットで横になっていた。


その時、以前道端で偶然会った不思議な力をもってる女の人の事を思い出した。


「…そういや…あの人『な』のつく人って言ってたなぁ…

それってナツコさんの事だったのかな?

ちょっと連絡取ってみようかな?」


わたしはその人からもらったメモを大事に机にしまってたので、それを取り出し電話をかけてみた。


するとワンコールもしない内に相手が出てくれた。


「もしもし…」


「あ・あの…わたし以前あなたに道で見てもらった人なんですが…」


「はい」


「ナツキと言います。」


「あなたがナツキちゃん?」


その人はわたしが名前を言うと過剰に反応したのでびっくりした。


「あ・はい…」


「…実は…あの子から遺言が…」


「遺言?」


「はい…あの子は1ヵ月前に交通事故で亡くなりました。」


「…亡くなったんですか?」


「はい。病院に運ばれたんですけど出血が多くてね。その時うわ言を言ってまして…」


「なんて?」


「“女性の住んでたアパートに行け…”と…」


「アパート?」


確か、わたしは奈津子さんの実家には行ったが、

亡くなる直前まで住んでたアパートには行っていなかった。


「ただそれだけです。

あの子は人とちょっと違うけど言ってる事はまちがった事ございません。

だから言われた事守って下さい。そうすればあの子も喜びます。」


そして電話を切った。


やはりこれも奈津子さんの“怨念”のせいなのだろうか?


たった一回しか会ってない人でさえも巻き添えにするなんて。


「偶然にしちゃ…おかしいもの…わたしと会った人が次々と死ぬ」


言葉にすると現実味が増してきて怖くなる。その時電話が鳴った。


「ナツキちゃん?琴美の母です。」



「…あ・どうも…」



「たった今、琴美は天国に逝きました。」



「−え?」



「今まで友達でいてくれてありがとうございました。琴美も…楽しかったと…うぅ…思い…ま…す…」


「…うそ…」


「…うぅぅぅっ」



この後、受話器からは母親の泣き声しか聞こえなかった。



「…琴美…」



わたしも一緒に泣いた。


こんな事で…こんな事でこの世を去るなんて…。


電話を切ったあと、部屋のベットに倒れ込んだ。


「…みんな…死ぬ…」


ただその言葉が浮かんで来た。


「…恐い…恐い!」



枕に顔を埋め、何も考えないようにした。


はっ…!



わたしは視線を感じ、顔を上げた。

横にはクローゼットがあり少し隙間が開いていた。


もちろん、ただの暗闇しか存在しないのだが、そこからはっきりと視線を感じた。


「そこにいるなら出て来なさいよ!」


わたしはそこへめがけ枕を投げた。


バフッ…!


その衝動でドアがゆっくり開く。


ギィィィィ…


「ひっ…」


そこには首を吊っている母親がいた。



「いやぁぁぁぁ」


叫びながら部屋を出た。


リビングに逃げたわたしはコートを着てサイフと携帯を持ち、家を飛び出た。


「…はっ…はっ…」



外は夕方になり、かなり冷えていた。


「もう…いや…」



そして、ただひたすら歩いた。


じっとしてられなかった。


家から離れたかった。


気付けば何故かあの駅にいた。



駅は夕方のラッシュでかなり人が多く、騒がしい。

そこはいつもと同じ時間でいつもと同じ空気が流れていた。


…もうあれから半年は経ってる…。


誰があの事件の事を記憶してるのだろうか?


誰がわたしのせいだと知ってるだろうか?


本当にわたしのせいだろうか…?


遠くから電車がやって来る音がした。



…もうこのまま死んでしまおうか?


…このまま線路へ飛び込もう…



考える事に疲れたわたしはそう考え、足を一歩前に踏み出した。



…これ以上誰かを巻き込むのは嫌だ…



さらに一歩前へ踏み出した。



プアァァァァァァーン



ガシッ!


誰かに腕を掴まれた。


「駄目だよ、ナツキちゃん…。死んじゃいけない。いけないよ。」



力強くわたしの腕を掴んだのはナオキくんだった。


「ナオキくん…?」


だが、それは幻だった。


わたしの心の中で死にたくない気持ちがわたしを止めたのだろう。



…………。



わたしは少し考え電車に乗る事にした。


そしてあかりとナオキくんのいるトコへ行こうと思いついた。



理由はただひとつ。



…彼に会いたくて…。


次回からまた新たな展開が!?

お楽しみに♪

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