002⇒あかりと琴美とわた『し』。
「あ〜!夏休みなのに何で毎日学校に来て絵を描かないといけないわけぇ!?」
あかりは叫ぶように愚痴を言う。それを見た琴美は冷静に−
「しょーがないでしょ。コンクールが近いんだから少なくとも夏休みの間には仕上げないと…」
「あぁー!もう遊びたいよぉー。ストレスが溜まるだけじゃん!」
「…もう!あかりっていつもそう!集中力が足りないんだから…」
「そ−いうアンタは集中しすぎるのよ…。…ねえ、今日ナツキ遅くない?」
「そういえばそうね。でも、ナツキって時間にルーズだからいつもの事と言えばいつもの事だよ。」
あかりと琴美はわたしの親友である。
あかりは何でもはっきりと自分の気持ちを表すタイプで、
琴美は冷静にゆっくりと自分を出すタイプ。
わたし達三人は特に共通点はなかったが、何故か仲良かった。
ガララ…。
「あ・ナツキ。今アンタの話してたんだよ。遅いなぁーって…」
わたしはゆっくりと腰掛けると二人を見た。
「……え?あ・ごめんね…」
「どうしたの?何か…元気ないけど…顔色わるいよ…」
「……あ、ほら…最近の暑さでマイッてるかも。今日もすごく暑いし…。」
「ホントに暑いよね…異常気象だよ。雨だって降らないし…そういえば近いうち給水制限するらしいよ〜。」
「そうなの?フロもゆっくり入れないね」
「…………。」
反応のないわたしに二人は首をかしげた。
「…ナツキ…大丈夫?」
「え!?あはは…スゴイよね〜!パパイヤ鈴木の動きって…」
「誰もそんな話してないよ…」
「…え?」
「ちょっとアンタ、まじで暑さのせいで頭ヤラレちゃったんじゃないのー?」
「あかり!言いすぎよ…。」
「ううん。そうかも…ごめん…少し独りになりたい。隣の教室に行ってくる…。」
「…ナツキ?」
ガララ…ピシャッ。
「大丈夫よ、琴美。しばらく休んだら元気になるって。さ、早く絵を仕上げなきゃ」
「……うん。」
わたしは誰もいない隣の教室のドアを閉めると
すぐに深呼吸をした。
だが、さっきの出来事が脳裏によぎる。
ドクン…ドクン…
あの人…どうなっちゃっんだろう?
…死んだかな?…
ドクン…ドクン…
死んだよね…生きてるはずがない…
…やだ…なんでこんな事に…あのオヤジが悪いのよ…!チカンなんてするから…
でも、あの女の人だって…白線ギリギリに立ってる私の前で電車待ってたし…。
しかも、あのオヤジにしっかりと見られてたのもヤバイし…
警察とかに話してないかな?私の事……もし…そうなら私は捕まっちゃうのかしら?
ドクン…ドクン…
わたしは窓から外を眺めた。
夏休みだってのに運動場は部活のため賑やかだった。
…………運動場にいる人達楽しそうに部活している…。
はぁ…こんなんじゃ絵も描けないよ…。
わたしはゴチャゴチャしている思考を追い払うように
乱暴に首を横に振った。
…ガララ…。
−あ、琴美達かな?
わたしはドアの方を見た。
だが、誰もいなければドアが開いた形跡さえない。
……?
周りをよく見渡したが本当に誰も居なかった。
あれ!?誰もいない…ドアも開いてない…???
…空耳だったのかな?……ま・いっか…。
そろそろ美術室に戻らないと二人に心配かけるし……。
「あ、もう六時じゃん。あたし帰るー!」
あかりが元気にそう言うと琴美も続いて、
「私も帰る。ナツキは?」
「今日はあまり乗らないから帰ろうかなー?私も…」
「じゃあ急いで戸締まり戸締まり…!」
「また明日ねー!」
「ただいま。」
わたしは家に帰って来た。
いつもなら奥から母が返事をくれるが、今日は反応がなかった。
「………。」
「誰もいないのかな?…めずらしい〜」
暗いや、電気電気…
…ふぅ…喉渇いた…水かジュース…。
ん?何か聞こえる…。あ・テレビがつけっぱなし…もう!ちゃんと消して……
わたしはテレビを消そうとテレビの前に立つと画面にはニュースが流れていた。
『今日○×駅で飛び込み自殺があり電車に影響がありました。
自殺したと思われる女性は妊娠しており、それを苦に自殺をしたと見られています。
警察の調べによりますと交際相手が妊娠を認知しておらず…』
…ほらっ…やっぱり自殺だったんだ…私が殺したんじゃない…
わたしは自分に言い聞かせるように独り言を言った。
「ただいまー」
買物から帰ってくる母にわたしは
「おかえり…ねえ、出掛けるならテレビ消してってよー!」
わたしがそう言うと、母は少し不思議そうに
「ついてた?あれ?今日は一度もつけなかったけど…」
「…え?」
「……………。」
わたしと母は特に気にせず、ご飯を済ませ、あっという間に夜になった。




