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Summer visit  作者: スカフィ
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027⇒『不』気味な琴美

この電話に出れば琴美は生きている。


琴美なら全て知っているはず。


わたしは乾いた喉を潤す為に唾を大きく飲み込んだ。


そして受話器から呼び出し音が鳴り響いた。


プルルル… プルルル…


「お願い…琴美出て…無事でいて…」


「もしもし」


琴美はすぐに応答してくれた。

わたしは携帯を両手で固定しながら声をだす。


「琴美!?無事なの?良かったぁ…。ねぇ!あの後どうなったの?わたし…よく覚えてないの!

わたしに…いっぱい 血 みたいのが付いてた」


「うん。あとでわかる。学校で会って話する…じゃあね」


そう言って琴美はすぐに電話を切った。


わたしはますます嫌な予感がした。


学校は終業式で、明日から冬休みにはいる。


そして今年ももうすぐ終わる。


わたしは色んな事を考えた。


いつもの駅に着けば奈津子さんの事を思い出し後悔する。


電車に乗れば変わる景色にうっすらと自分の顔が映る窓ガラス。


今のわたしの顔は…他の人からどんな風に見えるのだろう。


もうこれ以上の不安はないだろうと思ってたのに。


まだ不安は積もるばかりだ。


そして、あっという間に学校に到着すると、すぐに琴美を探し出した。


「お早う、ナツキ…」


琴美の声だった。


「ねぇ!昨日どうなったの!?村山先生は?…それにあの血は?」


「落ち着いてナツキ…心配ないわ。それに今、私…すごく気持ちいいの。

村山先生がいなくても…ね?」


「…死んだの?」


わたしが小さくそう言うと琴美の顔が心なしか笑った様に見えた。


「おっはぁー!?」


突然、あかりがわたし達の間に入って来た。


正直、今のタイミングで来て欲しくなかった。


琴美から全て聞きだせるチャンスだったのに…。


「今日で2学期終わりだよ〜。長かったぁ!」


「……うん、そうだね。」


わたしは引きつって笑い、琴美は無言だった。


「何よ2人して暗いね。ねぇ聞いて!あたし達冬休みに泊まりがけで旅行するの!

ナオキのお父さんの仕事場があってね、

年末年始は誰もいないから二人で…って言いたいけど…

どう?お二人さん…一緒に行かない?」


わたしと琴美はキョトンとした。


「…場所は?遠いの?」


「うん!電車で1時間くらいらしいけど…」


「私…行けない…」


琴美が即座に断りの返事を言った。


「えぇ?行こうよ〜…ねえ!」


「いや…。」


またもや、はっきりと返事をする琴美。


あかりは首を傾げながら少しムッとした顔をした。


「なんか、最近付き合い悪いんじゃない?どうしたのよ?」


「それはこっちのセリフ。口開いたと思えばナオキくん!ナオキくんって…もうウンザリよ!」


「…琴美…言いすぎよ!」


わたしはすぐに琴美を止めに掛った。


「………。」


あかりはすごく驚いていた。


今まであかりの言う事に反抗した事のない琴美だったから無理もない。


「………とにかく無理っ!」


琴美はその返事を残しさっさと教室に入って行く。


「なによ〜!あんな言い方ないんじゃない!?せっかく誘ってやってんのに!」


「機嫌悪いのよ。今日は…」


わたしは怒り狂うあかりを何とかなだめ落ち着かせた。


それにしても…


なんだろう…


あの琴美の不気味さは…。


朝のホームルーム、突然担任の先生が


「実は昨日から村山先生の姿が見えてないらしい。家にも帰ってないそうだ。

昨日、何時でもいいから村山先生の姿見た人いないか?」


当然、クラスのみんな誰一人見たものはいなかった。


わたしでさえ、今何処にいるのか想像もつかない。


わたしは琴美の方を見た。


琴美はわたしの視線に気付き、少し笑ったように見えた。


場所は変わって村山先生の自宅。



「…私にもわからないんです。何故、主人が帰って来ないのか…

もしかしたら事故とか事件に巻き込まれたんじゃあ…あ・はい…

何かあったらお電話いたしますのでお義母さん…」


電話を置くと、体中のチカラが抜けたのかソファに一気に腰掛けた。


ドサッ。


「…ふぅ…全く何処に行ったのかしら?」



♪ピンポーン♪


「…主人かしら!?」


「ちわー。お届け物です!村山さんのお宅ですね?」


「…はい」


「ここにサインを…」


「………。」


「ありがとうございます!失礼します!」


「お疲れさま。何だ主人じゃないのか。なんだろう?これ…私宛だわ…」


「………。」


「…ん?新聞で包まれてる」


「………!」


「紙があるわ」


「“ただいま”…?意味わかんない…」


「……え?」


「うそよ…」


箱の中には血まみれの塊が入ってた。



「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜っ!!」






「奥さん。これが届いたのはいつですか?」


 「朝の9時過ぎです。コレは…主人の一部なのでしょうか?」


「今調べてます。結果が出ない今はなんとも…」


 「……なんで…主人は…こんな目に…」


「まだ、ご主人と決まったわけじゃないので…」




「ふふふ…」


「なんで笑ったの?琴美!」


「だっておかしいんだモン。」


「−なにが?」


「……あとでわかる…ふふふ…」


今日の琴美は ここ最近の琴美に比べて笑顔が絶えない…というか、

かなり不気味だった。


昨日の事と関係してるのはまちがいない…。


わたしは琴美を屋上に引っ張り出し、問い詰めた。


「ねぇ、いい加減に教えてよ!昨日あれからどーなったの!?琴美…なんか変だよ?」


「ナツキも意外とじっとしてられないタチねぇ……。いいわ、教えてあげる…。」


「………。」


正直、本当は何も聞きたくない。


何も知りたくない。


関わりたくない。


でもそんなワケにいかない…。


わたしはそこから逃げられないのだから。


わたしは琴美が何を言っても驚かないよう覚悟してた。




「奥さん悪い知らせです。」


「アレは…うちの人のモノだったんですか…?」


「…はい。ほぼまちがいないでしょう」


 「………!」


「……今、目撃情報集めてますんで…」


「…どうして…!うちの人が…!!うわぁぁぁぁぁ〜ん…」


「古田警部!」


「…ん?」


「昨日の放課後…一人の女子生徒が被害者を探しに職員室に来てたそうです。」


「…彼女が最後に会った可能性が高い…ってトコか。よし、会ってみよう!」


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