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Summer visit  作者: スカフィ
26/50

025⇒『嫌』な予感

「琴美…今日も休みか。ホントどうしたんだろうね?」


あかりが琴美の席に座りながら言った。


琴美が学校に来なくなって今日で三日目。


あれ以来、電話をしても家に訪ねてもわたしにさえ会おうとしなかった。


「ねぇー。ナツキ本当にわかんないの!?どうしちゃったの?琴美」


「……うん。わたしだって何とも」


わたしは思わず嘘をついた。本当は全て知ってるクセに。


「今日、ふたりで琴美ン家に行ってみない?」


「昨日も訪ねてみたんだけど会ってくれなかったよ。多分、今日行っても…」


「でも行こうよ!やっぱ心配だし。」


「うん」


しかし放課後になると、あかりは逆の事を言い出した。


「ごめん!ナツキ!あたし急用が出来ちゃった!だから行けない!」


「え〜!?そっちから行こうって言っておいてそりゃないでしょう!」


「実は今日、ナオキとナオキの友達と一緒に会う約束してたの、すっかり忘れてた!

ナオキは今度にしようって言ってたけど、その友達に悪いしね…。

やっぱあっちを優先する事にしたの」


わたしは正直、こんな時までもナオキくんを優先するあかりに少し呆れていた。


だが、あかりは何も知らないのだから仕方ない。


「仕方ないな〜。いいよ、わたし一人で見てくるよ。」


「ごめん!後で琴美の様子おしえて!いつでもいいから…じゃっ!」


「あとで電話するね」


あかりは少しバツの悪そうな顔をしては教室を出て行った。


「…はあ。」


正直、一人で琴美に会うのが嫌だった。



理由を知ってるわたしは琴美に何て言ってあげればいいのだろう?


“元気出してね”


“まだ若いんだから”


なんて、ありがちな事言ったってしょうがない。


そんな事言われなくても本人が一番よくわかってるんだから。


それでも元気が出ないのが現状なんだがら…。



気が付けば、琴美の家は目の前だった。


わたしが家に入るのを少しためらっていたら、いきなり玄関のドアが開いた。


「あ・琴美!」


琴美が家から出て来たのだ。


「………。」


「ねえ!大丈夫なの?」


「………。」


琴美はわたしの顔は見ているのだが、何も言おうとはしない。



しかし、三日会わないだけで人はこんなに変わるのだろうか?

って思うくらい琴美はやつれていた。



「琴美…大丈夫?」


わたしが言葉を発した瞬間、琴美はこちらに歩いて来て、わたしをそのまま通り越した。


「琴美!どこ行くの…!?」


琴美はわたしの言葉に何の反応を示さないまま、そのまま歩き出す。


「ん…?」


後ろで人の気配を感じたので、ふり返ったが誰もいない。


そして前を向くと琴美の姿は既になくなっていた。



「どうしよう…何か嫌な予感する…」



わたしは携帯を取り出し、あかりに琴美を探すのを手伝ってもらおうと電話した。


だが、あかりは携帯を切ってるのか、圏外にいるのか通じなかった。

わたしは歩きながらもう一度かけたたが、通じなかった。


「んもう〜!何がいつでもかけてよ…なのよ!」


わたしひとりでパニックになっていた。

いくら歩いても琴美の姿はない。


わたしは何処へ行っていいのかわからないので、とりあえず学校に向かった。

もしかすると、村山先生に会いに行ったんではないかと思ったからだ。

職員室を覗くと担任の先生がいたので確認をとる事にした。


「…あのぉ〜、村山先生いますか?」


「ん?ナツキ、まだ帰らないのか?村山先生はさっき電話で誰かに呼ばれて出て行ったよ。

何処に行ったかはわからんが…」


「あ、そうですか。」


わたしはまちがいなく、琴美が村山先生を呼んだ事に気がついた。


しかし、場所は何処だろう…。


そんな遠くない所だと思うけど…。


わたしは琴美の言葉を思い返した。


よく村山先生と会った場所などを言ってなかったと


「あ!もしかして…」


わたしは急いでそこへ向かった。


走りながら琴美の言葉を思い出した。


「…私と先生は夏休み直前から親しくなったの。


でもその時はまだ教師と生徒の関係で。夏休み入ってからだったかなぁ。


私がちょうど中央公園に小さな湖があるじゃない?


あそこでボッ〜としてたら、村山先生が歩いていたの。


私、元々 先生がタイプだったから思わず声掛けてね。いろいろ話したんだ。」


わたしは必死に走った。その公園に行けば二人がいるような気がしたから。


「はあ…はあ…」


「先生は根がいい人だから何でも親身になって話を聞いてくれたの。

私もその“優しさ”に余計に魅かれちゃって本気で好きになっちゃったの。

だから私先生に告白しちゃった☆…。」


何とか公園に着いた。


だが、ここの公園は広く湖まで少し距離があった。


そこでわたしはハッとした。琴美に電話する事を忘れてたからだ。


「やだ。何で気づかなかったんだろう。」


わたしはすぐ琴美に電話した。


琴美は出てくれるのだろうか?


“ピッ…”


「もしもし!?琴美?」


「………。」


「今、何処にいるの?ねぇ!」


「………。」


琴美は電話に出てるが何も言おうとしない。


「琴美…!何とか言ってよ!」


「……死んだ…。」


「なに…?誰が?」


「私の…子供…」


「うん。…でも仕方ないじゃない…」


「……。」


「今どこにいるの!?教えてよ!」


わたしは湖に向かいながら必死に走った。


辺りは真っ暗になっていて視界に苦しんだ。


そして琴美の言葉をまた思い出した。


「もちろん、先生は私の告白に困っていたわ。

私の気持ちに応える事もできないとはっきり言っていたし。

でも、わたしが強引に迫ったのが良かったのか悪かったのか。」



琴美は少し顔を赤らめニヤけ顔になっていた。


「はあ…はあ…」


もうすぐ…!もうすぐで湖付近だ。


琴美は電話を切り、かけても出ようとはしなかった。


「もちろん、私は先生の家族から先生を盗る気なんてなかった。

ただそばにさえいてくれれば。先生もそう言ってくれると助かるって。

ナツキの言いたい事わかるわ…そんなのズルイって言いたいんでしょ?

村山先生が一番おいしい思いしてるって…。

でも…私はそれでも……それでもいいって思ったのよ…

それだけ先生の事好きだったからかも知れない…。」


琴美が数日前にわたしに言ったセリフたった。


「はあ…はあ…」


やっと湖に着いた。

視界が暗い為、人の気配に感じるトコへただ歩いた。


「はあ…はあ…」


“絶対、ここにいる…!”


「はあ…はあ…」


わたしは何故か確信していた。


「はあ…はあ…」


奥に人の気配を感じ、ゆっくりとわたしは近づいた。



「私…堕ろしたよ」


琴美の声がする。その奥にはうっすらと村山先生が見える。


「…そうか…君には迷惑かけたな。」


「先生…私達の子供…死んじゃったんだよ?」


「……ああ。本当にすまないと思ってる…」


「正直…私…産みたかった…。先生と一緒になれなくてもいいから。」


「そんな事したら、君は幸せになれないよ。」


二人の間に入れないわたしは身を隠すように立ち聞きしていた。


「…先生……私…もうダメなんです…堕ろした日から私の体の一部が失くなったみたいで…

…もう…生きる気力さえないんです…!もう…!」


そう言って琴美は鞄から小さなナイフを取り出した!

みなさんいつも感想有難うございます!

これからも宜しくお願いします!

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